ナースの習性 4

 母は足を骨折もしたし、心臓と肺にも持病があったので、介護認定を受けて、デイケアに行っていた。


『ナースの習性 2』でも書いた通り、母はスタッフさんたちの仕事ぶりが気になってしまう。

 それはデイケア中も同じで、介護ヘルパーさんやリハビリの先生をよく見ていて、あの人はよく動くとか、あの人は優しいとか、相変わらずの観察眼だった。


 そんな中、肺の持病が悪化し入院。退院しても、在宅酸素が必要だと言われた。

 そんな状態で自宅に帰ると父に迷惑をかけるからと、母自ら老健施設への入所を希望した。


 運良く入所はできたが、またナースの習性が顔を出す。

 「ここの人たちは、みんなよく働く、忙しくて大変そうだ」と言っていた。


 ある夜、足元も覚束ないのに、寒いから上着を取ろうと起き出して、尻もちをついてベッドで頭を打った。

 小さなたんこぶができて、数時間おきに様子を見てもらう羽目になったが、幸い何事もなかった。


 こんなことぐらいで声はかけられないと、勝手に動いてしまうから、スタッフの詰所から終始ベッドが見える部屋に移された。

 自分の状態はわかっているはずなのに、スタッフに気を遣って、かえって手間をかけさせる元ナース。やっかいな習性だ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る