ナースの観察眼

 私は20代の頃、肺結核で入院した。

 入院中の検査で、鎖骨のあたりに肺以上に悪いところ、濃い影があると言われた。

 思わず「癌ですか?」と聞いた私に、主治医は少し苦笑いを浮かべながら、「それはないと思うけど、調べてみないと……」と言った。


 同室の人にその話をすると、「そんなこと聞いたの?私なら怖くて聞けない」と言われた。

 え、聞かないの?

 やっぱりナースの子も、感覚が違うようだ。


 その鎖骨のあたりは、以前から母が、少し腫れてるような気がすると言っていた場所だった。

 ナースの観察眼、恐るべし。


 それは頸部嚢胞けいぶのうほうと診断された。嚢胞とは、袋の中に粘液がたまった柔らかいかたまり。

 その粘液を注射器で抜いて検査をしたが、結核菌も何も出ず、悪性か良性か判断がつかなかった。


 痛みもなく、見た目はゆるやかな腫れだったが、放っておいて万一嚢胞が破れたら大変だから、取った方がいいと言われた。

 だがまずは肺結核を治してからということで、退院後、別の病院で手術をした。


 全身麻酔から目が覚めて、まだぼんやりしていた私に、無事に手術が終わって、嚢胞は全部きれいに取ってくれたと母が教えてくれた。

「取ったの見せてもらったけど、これぐらいの大きさ」と言って、両手で楕円形を作った。

「キウイぐらいの。結構大きかったわー」と感心していた。

 さすがの観察眼。詳しいご報告ありがとう。

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