ナース、動じる

 これは姉から聞いた話。


 私はハイハイ期間が短く、すぐにつかまり立ちをして、生後11か月で歩きだした。1歳の誕生日には、初誕生日を祝う風習で、約1.8kgの一升餅を背負って走っていたらしい。


 歩けるようになった私は、何にでも興味津々。

 タンスの引き出しを下から順番に開けて、階段のように上がっていくやんちゃな赤ん坊だった。


 ある日、カセットデッキに興味をもった私。

 当時のカセットデッキは、黒々と大きくどっしりした物だった。棚の上に置いていたそれに、何を思ったか、かぶりついた私。

 赤ん坊は、何でも口に入れる習性があるとはいえ、よりによって高い場所にある硬くて重いカセットデッキ。

 案の定、かぶりついたはいいが、滑って背中から床に落ちた。

 火がついたように泣き出した私は、乳歯が折れて口中血だらけ。


 母は私を抱きかかえ「どうしよう、どうしようと言いながら、部屋をぐるぐる2周半回ってた。お母ちゃんがあんなに慌ててるの、初めて見た!」と話してくれた姉は、明らかにおもしろがっていた。


 これももちろん自分の記憶にはないが、前歯がない写真は、しっかり残っている。


 もしや、これがあったから、その後の事件『ナースは動じない 2』につながったのか。

 ナースは順応性が高い。

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