第9話 カイバル4

 俺たちは椅子に触る。長い机でカイバルと向き合う形になった。周りには兵士が立つ。


「ちょっと落ち着きませんね。お二人も話しにくいでしょう。申し訳ないですが護衛の皆さんは部屋の外に」カイバルが言う。


「しかし、カイバル様おひとりでは・・・」兵士が言う。


「大丈夫ですよ、どうかお願いします。」


「・・・わかりました」


兵士たちは心配そうに部屋から出ていった。キハラはお茶を持ってくる。紫色のお茶だ。


「この世界で客人を持て為す際に出すものです。マルガルといいます。すっきりとした味ですよ」


「はあ・・・。どうも」


気の抜けた返事をしてしまう。マオは何も発さずに、出された茶を飲む。まさか毒とか入れてないよな・・・。俺も思い切って飲む。うまい。


「なかなかいい茶だな。淹れるにはだいぶ手間がかかりそうだが」


「キハラは優秀な執事ですよ。公私ともに私にはなくてはならない存在です」


どういう意味だろう。


「さて、本題に入りましょう」


カイバルはカップを机に置き、こちらを真剣なまなざしで見て来た。


「まずは非礼をお詫びします。私としては丁重にお出迎えするはずだったのですが、このような形に…。私たちの出会いは不幸なものでした。ですが聡明なあなた方ならば、きっと・・・」


「御託はいい。お前は私たちを殺そうとした。そして私たちはお前の仲間を殺した。これは事実だ。どのような綺麗ごとでもこれは誤魔化せない。」


マオが割って入る。


奴は気に入らないことにすぐに割って入る癖があるようだ。


「・・・そうですな、残念ながら。ならば私がこの世界、『ハコニハ』で何をしようとしているのか、それをお話しします。それを踏まえてあなた方にどちらが正しいのか判断していただく。それでよろしいでしょうか」


マオはフンと足を組む。明らかにカイバルに敵意を向けている。「そら」で管理者様と話していた時とは違う。ピリピリとしてヒリついている。


 一方の俺はまだお茶をのんでいた。猫舌なので冷ましながら飲んでいて時間がかかってしまっていたのだ。カイバルには失礼な感じだった。奴は真面目顔で話しているというのに。


そしてカイバルはこの世界について、「ハコニハ」について話し始めた。


つづく

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