第7話 カイバル 2

「・・・私は敗走した残敵の掃討をする。君の任務はカイバル様に召喚者殿を送り届けることだろう。直ちに隊列を立て直して行軍を再開させるんだ。わが隊からも護衛に何機か回そう」 


 マグラムが言う。

 

 会話はその後もちょっと続いたが、了解ですと大佐が答えると、マグラムは機械巨人に乗り込み飛び立って行った。


「おお、これは。お怪我もなさそうで何よりです。」


 大佐がこっちを見つけて、話しかけてきた。


「おかけ様で、この世界がどんな感じなのかが分かりましたよ」


 ちょっとばかし皮肉を言ってみる。マオは無反応。大佐も無視して


「お乗りになっていた装甲車は被弾して走行できないようです。いささか防御力は落ちますが、トラックにお移り下さい。兵たちに案内させます」


 と言ってきた。

 

 大人の対応だ。   


 結局ごちゃごちゃやって車列は2時間後ぐらいに動き出した。トラックはやはりぎちぎちだったが、さっきよりはましだった。開放感が段違い。ホロについた透明な部分から外も見えた。


 日が暮れ始めたころ、遠方に城のような建物があった。多分あれがカイバルの居城だろう。近づくにつれ、森が消え、周りに施設が増え始めた。検問所に、トーチカ。防空用のSAMやパトリオットみたいなのもあった。だいぶ防護は厳重なようだ・・・。


 その時、ブォーン、ブォーンと低い音が鳴った。するといきなり今まで全く見えなかった馬鹿でかい塔が現れた。さっきまでは何もなかったというのに。


「なんだあれは!」マオも反応した。


「あれが「エレベーター」なのか・・・」


 兵士たちはにやにやとしている。まるで俺たちの反応を予想してたみたいだ。そして運転席の方に座っていた大佐が得意げに話し始めた。


「さすが召喚者、お察しの通りです。あれがカイバル様自ら設計なされた「超空間高速移動装置」通称、「エレベーター」です。いまから約30年前に建設を開始し、とうとう完成まであとわずかというところまで来ました。これさえ完成すれば、我々はいよいよ「宇宙のそら」に「進出」することが出来ます。そうすれば・・・」


「進出?侵略だろう」マオが返す。強烈だった。


「これは手厳しい。カイバル様は管理者たちによって支配される世界に疑問を投げかけました。彼らは世界に住む命に対して管理者という立場にありながらきわめて無責任でした。戦争、差別、貧困。苦しむ人々に対して彼らは何の手立ても打たなかった。カイバル様はそれに耐えられなかったのです。ですから・・・」


「詭弁だな。そんな事何とでも言える。自分たちに都合の良いように事実を捻じ曲げていないとなぜ言える。カイバルが私利私欲のために・・・」


「カイバル様はそのようなお方ではない!」


兵士たちが一斉に怒鳴る。物凄い気迫だ。表情もかなりいかつい。マオもさすがにたじろぐ。だが引き下がる気はなさそうだ。物凄い険悪な雰囲気になる。


なんでマオはこうも棘が多いのだ・・・。


つづく

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