死に戻りスキル貰ったけど転生先がラブコメ世界だった
カラスバ
第1話
死に戻り。
それは言葉の通りの効果を持っている力であり、大抵は代償があるチート能力として紹介される場合が多いと思っている。
発動条件は細部の違いこそあれど「死ぬ事によって発動する」という共通点があり。
そうする事によって時間を巻き戻す事の出来る能力が、それだった。
……転生する事によって得る事になったこの力、死に戻り。
俺は転生者としてこの現代社会――のように一見見える世界に生きている訳だったが。
竜胆はじめという男は今のところ「死に戻り」を経験した事は一度もない。
それは俺が極めて小心者であり、だからこそ今まで細心の注意を払って生きて来たからである。
いや、現代社会、しかも日本なんだからそこまで危険な事は起きないでしょと思われるかもしれないが、しかしその考えをする事が出来るほど俺は甘くはなかった。
なにせ、死に戻り。
転生する際に与えられたこの力。
逆に言うと、この力が必要になるような事態が将来的に訪れるであろう事はほぼ確定しているようなものなのである。
それは一体何なのかは分からない。
現状、例えば裏社会で謎の能力バトルが行われていると言った情報は耳にした事がない。
もしかすると死に戻りを活用すれば新しい情報を得る事が出来るかもだが、しかし自ら率先して死にに行けるほど俺は意思が強い方ではなかった。
……とりあえず、この世界には能力バトルがないのだとしよう。
では、他に死に戻りが必要になってくる事態は一体なんなのか。
宇宙人が襲来するとか、もっと規模を大きくするならば異世界人が襲来する、とか?
それも人間タイプではなくモンスターのような危険生物かもしれないし、創作物にありがちな「人類を滅ぼす意思」みたいなやつなのかもしれない。
どちらにせよ、このままではいけない。
この世界にどのような危険が潜んでいるかは分からない、ただ危険が潜んでいるのは間違いないのだ。
俺は、一般人である。
死に戻りという能力がなければだが、しかし死に戻りなんていうのは言ってしまえばやり直しが出来るだけであり俺の実際の能力を引き延ばしてくれる訳ではない。
で、ある以上。
俺は、いつ訪れるかも分からないその危険に備えなくてはならないのだろう。
そして、その危険を打破して死に戻りを経験せずとも最期の時まで生きていく為に。
そんな訳で、俺がまず最初にした事と言えば――筋トレである。
いきなり現実的な話になったなと思われるかもだが、しかしただの一般人であり特殊な能力なんてい一つも持っていない俺が出来る事と言えばそれくらいなのである。
毎日運動し、プロテインを飲み、ちゃんと睡眠する事も忘れない。
そして、それと並行して知識を付ける事も忘れてはいなかった。
知識は力だ。
創作物でもありがちだが、知識がある事によって危険を打破するための発想が産まれ、転機が産まれるというのは儘ある事だった。
そして、お金も必要だろう。
一応表面的には現代社会である以上、金銭で解決出来るのならばそれに越した事はない。
……死に戻りを使い時間をループさせる事が出来るのならば宝くじの当たりくじを購入するとかそういったズルも出来る訳だが、例によって死に戻りをしたくない俺はそういう事は出来ない。
だから、コツコツとアルバイトしてお金を稼ぐほかない。
そして、いざ来るときの為に備えて、万全の状態で危険と戦うのだ。
そんな訳で、現在17歳。
高校二年生。
学生としての本分なので今日も今日とて学校に通う。
俺が入学するのは決まって朝早く。
万が一朝一に危険がやって来たとしても、朝の人が少ないタイミングならば巻き込まれる人数も少なくて済むだろう。
俺はリラックスしつつも注意を張り巡らせつつ教室に向かい、そして机に荷物を置く。
そして、違和感。
一般人なら気づかないかもだが、生憎と俺は転生者である。
机の位置が、微妙にずれている。
い、一体何が起きている……?
まさか、遂に俺の目の前に危険が現れるとでもいうのか?
俺はドキドキと高鳴る胸を抑えつつ、念のため机にある引き出しスペースに手を差し込んでみる。
……!
な、何かあるぞ!!
そしてそれは、一通の手紙のようだった。
まさか爆発はしないだろうと思いつつ最大限警戒しながら中身を確認してみる事にした。
『竜胆はじめ様、突然ですが放課後校舎裏でお話する事は可能でしょうか?』
……こっ、
こ、この世界の秘密が遂に明かされるんですかっっっっ!!!!!!!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます