転生したらのびのび牧場生活できちゃいました

Veroki-Kika

第1話

「あ…れ…?私…」

私・星川かれんは,辺りを見渡した。

塾の帰り,トラックに轢かれてしまったのに,ここはとある1室。

「かれんさま。おはようございます」

扉が開いて,複数人の女性が入ってきた。

「どういうこと…ここは…」

「寝ぼけておられるのですか?ここは夜空城では無いですか。姫さま。本日のお召し物をご用意しました」

姫?私が?

目の前の女性は私を立たせた。

「私って,星川かれんですよね」

「はい。なにを言っておられるんですか。星川家のただ1人の女の子。星川かれんさまです」

そうなの?もしかしてコレ,いわゆる異世界転生ってヤツ。

思いっきり楽しまなきゃ!

と,思ったら,

「ひゃっ!」

女性の手が私の胸にあたる。

「失礼します。姫さま。それでは着替えをさせていただきます」

それっきり,私の言葉に反応しなくなってしまった。

女性は私の上から下まで。下着までも着替えさせていく。

着替えくらい,自分でもできるのに…

そう思いながら,ただひたすらに待つ。

「終わりました。それでは姫さま。食堂へどうぞ」

「はい」

動きにくい…

白いドレスは裾が長いし重いし。

コルセットのせいで少し苦しい。

のそのそと歩いていると,向こうのほうから数人の男子がやってきた。

かれん!おはようっ!今日も美しいねっ!」

「かれん!さっ!一緒に食堂へ行こうっ!」

思い出した。この人達,私の12人のお兄さん。

「お,おはようございます。お兄様…」

静かに頭を下げる。

そうしてまた食堂の方まで歩き出した。

「おや。かれん,君は歩かなくていいよ。ほら」

「ひゃぁっ!」

おおおお兄様の1人,里組さまにお姫様抱っこされて,私の顔は真っ赤っかだ。

やっと着いた食堂でもみんなの目線が痛々しい。

「かれんちゃん。今日も俺と遊ぼうね〜」

「わ,私,部屋へ帰るから」

「かれん。今日は10時から英語なので遅れないようにね」

はぁ。これは家庭教師のマリネーね。

「はぁい…」

うかない返事をして部屋に戻った。

プリンセスって,こんなに大変なのね…

私は,もっと生き生きとした生活をしにきたのに!

「そうだ。これじゃダメ。私,もっともっと!そうだ!逃げる。私は,牧場生活をしに行こう!あっちの草原,使っていいって言ってたな…よし!」

そうと決まれば,私は行動に移すしか無い!

そう思って自分のドレスを脱ぎ捨てる。

苦しかったドレスが取れて,やっと息を吸えた。

私は白い長袖に茶色のサロペットワンピース。髪をハーフアップにまとめた。

「お兄様。お父様。さようなら」

置き手紙をして窓からそっと部屋を抜け出す。

新生活,ワックワックだよ!

絶対,前の世界より楽しむから!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る