第4話 委譲とタイムリミット
「やっぱりそうなるわよね……」
B子は勘がゲームに理解が無いことは半ば予想していたようであまり驚いてはいなかった。
「この世界はゲームのような仕組みやルールが採用されてるのよ。本来はゲームに親しんだ若者の転生者を受け入れているの」
「ゲームってぇと、親父の孫がよぉやっとったピコピコか」
「そうね……勇者カン……提案があるのだけど、聞いてもらえる?」
「おう、言うてみい」
「私にステータス画面の操作権限を委譲してもらいたいの、1から説明するより多分そっちのほうが早いわ」
「どういうことじゃ?」
「私が貴方の代わりにこの画面を操作するの。スキルの取得や実績報酬の取得とか」
「すきる?」
「スキルっていうのは……何て言えばいいかしら? 戦いを補助する力かしら」
「うーむ。よぉわからんが、お前さんが武器やらなんやら用意して俺が使うっちゅうことかいな
」
「そう、なるかしら」
「なら構わん、親父にもやってもらっとったことじゃけぇ。好きにせえ」
「よかったわ……じゃあシステムさん、お願いします!」
『両者の意思を確認。勇者カンより女神B子へステータス操作権限を委譲します』
ステータスウィンドウから無機質な女性のシステムボイスが聞こえてくると、勘とB子の体が光を発した。
『権限委譲、完了』
「これで私が操作ができるようになったはずだわ」
「なにやらハイテクじゃのう」
「よし、よし、大丈夫そう。えーと武器だったわね……たしか……あった!」
『実績報酬:ハローワールドを取得しました』
B子が画面を操作するとシステムボイスと共に、ポンっと太い木の棒が宙に顕れた。
「はい、“ひのきのぼう”よ」
「舐めとんのかぁ! こんなもんでどうしろっちゅうんじゃあ!」
「これしか今出せないんだから仕方ないじゃない! 普通はハジメノムラで装備を整えるのよ!」
「チッ……せめて形は何とかならんのか」
「形?」
「こんな丸ぼったいんじゃ武器にもならんわ。せめて角材にせえ」
「それくらいならたぶん……あ、できそうね」
B子が手をかざすとひのきのぼうは立派な角材へとその形を変えた。軽くブンブンと振り回すと勘は肩に角材を担ぎあげた。
「あー、ところでそのどんどん減っていっとるタイマーは何の時間じゃ?」
「ギクゥ!」
「あ? おい、なんじゃ! その顔はぁ!」
勘がステータスウィンドウでやたら目立っていた時間表示を指摘するとB子はあからさまに動揺して目を反らした。勘が鬼の形相で詰め寄ると「説明する! 説明するから!」と涙声で訴えた。
「怒らないで聞いてほしいんだけど……」
「言うてみい」
「ふ、ふつうは若くして死んでしまった人なんかの魂を引き上げて召喚するんだけど貴方の場合はまだ死んでしまう前に召喚したの。だから元の寿命がそのままというかその~……いつもなら女神ポイントを使って魂を補強したりするんだけどそれもできないくらいカツカツで~……あ、貴方の寿命はこっちでもあと7日なの!」
「時間がないって……俺の寿命のことかいなぁ!? どちくしょおおおお!」
タイマーは残り167:20:12から減っていく。どうやら召喚された瞬間から寿命は削れていたらしい。
勘の叫びはそよ風に混じり、むなしく草葉を揺らして吹き抜けていった。
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