02 アーヴラ半島要塞化計画 ~始動編~
* * * * *
「ふぅむ……これは一度戻ってきちんと設計せねばなるまい」
前回の砦の時よりも時間をかけて要塞建設予定地を調べていた親っさんがそう結論を出す。
ま、もっともだ。
……頭の中では大体の設計図は出来ているんだろうけど、今回の要塞の規模を考えたらしっかりと図面におこさないと後が大変になる――主に俺の作る部品の精度にも関わるし、これがダメになるとほとんどやり直しになってしまう。
どっちにしても材料集めをジークに指示するのも必要だし、戻る必要はあるんだけどな。
「小僧、お主にも『あいであ』を出してもらうぞ」
「! 了解っす!!」
意外。
建物の設計自体はいつも親っさんが一人でやっていたので、俺に声がかかるとは思わなかった。
まぁ俺は親っさんの手伝いはしているものの、設計そのものに関しては素人だ。
素人目線からの突飛なアイデアとか、『
……ただなぁ……スマホがあれば色々と調べられるんだけど、俺自身が持ってる知識なんて大したことないからなぁ……。
何にしても、実際にスキルを使って材料を作りだすまでは俺一人でやれることはないのだから、親っさんの手伝い兼勉強ということで頑張るか。
「……ノン。そう言えば、
「はい。
――が、我々がアーヴラ半島に踏み入っていることは気付かれていると思って良いでしょう。
遠方から監視魔法を使っている気配があります」
「むぅ……やはりか」
……今回の建設に関しては、モルニック砦と違って大きな不安要素がある。
そのことについての話だろう。
今日は
「次回からはジークに常に来てもらうしかないかのぅ……規模を考えると、あやつには常に素材集めをしておいてもらいたいところじゃが……」
親っさんが渋い声でそう言う。
何せ『要塞』だからな……設計をいくら固めても、途中でもう少し素材を足したりしたくなることは多いだろう。
後は俺のスキルで組み立て部品を作ったとして、それが膨大な量になってしまうことを考えると……要塞の組み立てをしながら並行して部品を作っていくとでもしなければ、時間がかかりすぎてしまう。
今回は一ヶ月という無茶な期間ではないが、『魔王軍』の事情としては出来る限り早く建設してもらいたいというのが本音だろうし、俺たちとしてもその期待には応えたい――応えた結果、信頼を勝ち取って新しい仕事が増えるかもしれないし。
「ゲオルグ様にも
それでは、事務所へと戻りましょう」
「うむ。逃げる分には良いが、建設中に邪魔されると面倒じゃからな……」
今回の仕事の最大の不安要素。
それは、
* * * * *
「新しい仕事じゃ」
……ジジィとノンさんの二人で『冥主』の元へと赴き、モルニック砦建設の代金を取りに行ってきていたのだが、帰ってくるなりこれだ。
多分だが、その場で『冥主』と次の仕事について話していたのだろう――モルニック砦も、マスティフ隊長からの依頼だったが実質的には『冥主』からだったようだし。
それはともかくとして。
「ノン、レオナルドとジークを呼んでこい」
「かしこまりました。リザ様はいかがいたしましょう?」
「……そうじゃなぁ。あやつの都合が大丈夫なようなら呼べばよい」
『リザ』さんは、我が社の専属デザイナーである。
モルニック砦とかだとあんまり出番はないんだけど、もうちょっと装飾に拘りたい建物なんかだと、親っさんの設計にプラスしてリザさんが細かい意匠とかをデザインしてくれたりするのだ。
……デザイナーを必要とする仕事がそんなにないっていうのと、リザさん自身が結構な自由人であちこちフラフラしていることが多いので、あんまり事務所にはいない。
ちなみに、我が社は他の仕事との兼業はオーケーとなっている。ま、営業部長のジジィがマギウス教のお偉いさんやってるくらいだしな。
「小僧。レオナルドたちが揃うまで、貴様に説明しておくぞ」
「え、俺に細かいこと話されても困るが?」
「案件については当然レオナルド待ちじゃ、阿呆が。
貴様には、今回行く場所についての説明をしておくということじゃ――モルニックとは比較的近い距離ではあるが、ちと複雑な場所なんでな」
…………嫌な予感がするなぁ……。
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