16.プニュプニュ……

 俺はユシアのオムライスを食べてから宿の部屋に戻る。


「おー、兄貴、戻ったのか」


「あ、うん」


 部屋に戻るとハルがすでに戻っていた。


「兄貴、どこ行ってたんだ?」


「あー、実は、どうしてもオムライスが食べたくて、市場で卵を入手して、ユシアに作ってもらってたんだ」


「な、なんだと!?」


「お……?」


 ハルは想像以上に驚いた顔をしている。


「あ、兄貴がそ、そんなことを……」


 そんなことってどんなことや。


「ま、今日はちと疲れたので、風呂でも入って寝るね」


 俺はそう言って、部屋に備えつけのバスルームへ向かう。


 ◇


 ちゃぷん


「はー……オムライスうまかったなー」


 湯船にて、そんなことをぼんやりと考えていると……、


 カチャ……


「ん……?」


 風呂場の扉が開く。


「ひっ!?」


 俺は思わず小さく悲鳴を上げる。


「よぉ、兄貴」


 ハルが風呂場に入ってきたのである。


「ちょ、ど、どうした!? ハル」


「え? どうしたって、俺もまだ風呂入ってなかったからさ」


 そ、そういう問題ではないと思うのですが……。


 ハルは身体にタオルを巻いてはいたが、逆に言うと、それだけだ。


 普段はボディラインが目立たないように、着痩せするような服を着ている。

 しかし、今はそれがなく、女性の胸の膨らみや身体のラインがはっきりとわかってしまう。


「それじゃ、身体洗うわー」


 動揺する俺を大して気にする様子もなく、ハルは身体を洗い始めてしまう。


 俺はなるべくハルの方を見ないようにする。


「なぁー、兄貴」


「は、はい?」


「ふと思ったんだが、このサバイバルゲーム、何人くらい参加してて、残り何人くらいなんだろうな」


「あ、おう……」


「ユナイトのルールを踏襲とうしゅうしているなら参加者は50人かなぁ」


「確かにそうだな……」


 ユナイトの本来の基本ルールはタッグを組んだ上での、バトル・ロワイヤルだ。


 25ペア50人を基本としており、味方はパートナーだけ。

 最後に生き残っていたペアだけが勝者であり、生き残っていなければ、どんなに敵を撃墜したとしても敗北者というわけだ。


 その上で、現在、提示されているルールはこれだけ。


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βベータ版テストプレイのルール】

 パートナーとタッグを組んでのサバイバルゲームです。


 ■報酬

 ①ゲーム参加者を一人、キルするごとに10万円プレゼントします。

 ②最後まで残ったペアには願い事を何でも一つ叶えます。


 ■注意事項

 この世界でキルされると現実に戻ります。

 その際、特別ボーナス特典は消滅します。

 ただし、自殺は禁止。自殺すると本当に死にます。


 以上。

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 そういえば、ペアのうちの一人を失った時の扱いはどうなるのだろうか。

 ユナイトは一応、残った一人が最後まで残れば、そのペアが勝利という扱いになるが、そこは同じだろうか。


 そんなことを考えていると、ハルが再び話し掛けてくる。


「ってか、兄貴は、最後まで残った時の願い事とか考えてるの?」


「あ、いや全く……」


「あはは、無欲な兄だなぁ」


「そうか? そう言うってことはハルは考えてるのか?」


「え、まぁ、一応な」


「え、そうなの? ちなみに何?」


「そ、それは教えられんなー」


「は? 自分から振っておいて……」


「わりいわりい」


 ハルは笑ってごまかしている。


 ……と、ふともう一つ気になることが想起する。


 ひとつ聞いていないことがあった。


 ハルは最初のルーレットの特典で何を引いたのだろうか。


「ところでさ、兄貴……」


「なに?」


「可愛いな、お前」


「はっ!? なにが……!?」


「だってよ、さっきから一切こっちを見ないからよ?」


「そ、そりゃあお前……」


「あ、やっとこっち見た。なーにを恥ずかしがっているんだよ? 男同士だろ?」


 ハルは悪戯な笑みを浮かべている。


「んー? 兄貴、ひょっとして、俺のこと、女として見てるのか?」


「は!? そんなわけ……」


「ふーん、じゃあ、出てこいよ」


「あ……!」


 ハルは俺の腕を掴み、湯船からずいっと出そうとする。


 が、その時であった。


「「あっ……!」」


 急にひっぱられた俺はバランスを崩す。


 そして……、


「っっっ……!」


 俺は洗い場に尻餅をつく。


「あぁああああ、兄貴ぃいいい!!」


 ハルがその上に落下してくる。


「「~~……」」


 ハルの胸が思いっ切り顔にぶつかり、更にハルは俺の上に、正面から馬乗りしたような状態になってしまう。


 要するに対面 the E。。。


 ありとあらゆる感触が触覚受容器を通して、中枢神経に伝わってくる。


 つまり……


 プニュプニュ……プニュプニュ……


 生プニュプニュ……


 一瞬、時が止まったように二人とも放心する。


 俺は1mmたりとも動いてはいけないような気がして、身体を硬直させる。


 すると、懸命に身体を硬直させようと奮闘する一方で唯一、硬直させるつもりのなかった部位も硬直してしまう。


「ひぁっ……!」


 それに気が付いたハルは慌てて、俺から降りる。


「そ、その……ごめん…………兄貴……」


 そう言ったハルの顔は見たことないくらい真っ赤だった。


 多分、ハルから見たら俺も同じくらい真っ赤であっただろう。

 最低だ。

 弟に劣情をもよおしてしまうなんて、なんと情けない兄でしょう……。


「で、でも……兄貴…………俺ってさ、今はだから……その……」


 ハルは謎のフォローを入れてくれる。


 しかし、それ、あんまりフォローになってないよ?


========

【あとがき】

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