第6話 エルグリド公爵パーティー
さて私の家、エルグリド公爵家もパーティーを開催しなければならない。
あっちの公爵家だけパーティー開いて、こっちは開かないとか、それはそれで失礼なので、持ち回りなのだ。
お家は王都から少し南に広大な肥沃な大地を貰っているので、お金自体はある。
王都に近いので目立った名産はなく、麦畑が延々広がっているそんな土地だ。
そんなエルグリド公爵家は私の存在により、美食家として名が上がるようになった。
「エルグリド公爵家のパーティーだぜ、何食う?」
「お前は、まるでティエラ様のようだぞ」
「あんなには食べないよ、あはは」
とまあ、陰口なんかはあちこちで聞こえてくるが、この暴食が実質的に「王都の最終防衛ライン」であることを知っている上位貴族はこういう冗談も言わないのだった。
私の大魔法でドラゴンが出てきたら戦おうとか、本気で考えているのだ。我が国の上層部は。
私もさすがに攻撃魔法でやったことがないが、普通の魔法を巨大化して使うという手法は、王都全体に祝福を降らした「暴食姫の奇跡」と呼ばれている行為をしたことがあって、知れ渡っているので、本気も本気である。
あの時は、あんまりにも美味しいワインをパカパカ開けて、酔ってはいないけれど、いい気分だったので、ベランダから「祝福よ~」って両手を広げたら、アラ大変。手から王都の隅々まで祝福の粒子が飛び回って、あっちこちで目撃されてしまい、大混乱に陥ったという……。
ただ上層部は結界を張るか、攻撃に打って出るかで揉めているらしい。
どちらも捨てがたいので、その場に出席した私は、二回パーティーを開いてもらおうとか冗談を言ったら、全員黙ってしまった。
解せぬ。
さて、エルグリド公爵家のパーティーになった。
先日、ちょっとご飯をモリモリ食べて翌日、山の方へ行ってワイバーンを一匹狩ってきた。
食べやすいサイズの若いメスの個体をちゃんと狙ったよ、偉いでしょ。
もちろん、お肉にするためです。
エクシード・カウのお肉はAランクで美味しいけれど、美食家とか言われているのに、Sランクのワイバーン肉すら出せないとか、公爵家の威厳に関わるので、しょうがない。
エクシード・カウとの合い挽きハンバーグそれからハンバーガー。
ワイバーンの贅沢ステーキ。
それから四種のタレのワイバーンのモモ肉の唐揚げ。
塩胡椒、タルタル、チリソース、レモンハーブ。
もちろん、食べ放題のサラダセット、焼き立ての白パン、それからエビの香草焼き、キノコとトマトのパスタなどなど、いろいろ準備した。
料理のメニューを決めるのは別に領主一家の仕事ではないが、ワイバーンを狩ってくるのは他の人ではできないので、スケジュールに入れさせてもらった。
治療院を二日ばかり休んでしまったのは心残りだったけど、なんとか回せていたので、よかった。
留守の補充にミーラ様を呼んでもらったのが、けっこう人気だったそうだ。
彼女の四属性は大変便利であったと報告を貰っている。
特にアクアヒールの評判がいい。
ミッケンハイム公爵のパーティーは婚活パーティーで若い人向けだった。
今回のパーティーは中上位貴族のいわゆる舌の肥えた人たちばかりなので、美食家とか言われていても、気合が入るのはしょうがない。
壮年の白髪交じりの男女が多い。さらにその下の若い世代も連れてくる人もいるので、上位貴族中心でも結構な人数になった。
「ダブンドルデ侯爵令嬢、ルミナリア様、入ります」
おお、敵のど真ん中だけれど、堂々とした表情に仕草。
こういうところはプライドが高い分、実に優雅に見える。
腹の中が何色かは分からないが、見てはいけないのだろう、そういうところは。
私は誰かと違ってマッドサイエンティストではないしね。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう、ルミナリア様」
「おほほ」
笑顔だ笑顔。笑顔が一番怖いって言うよね。まったくよ。
彼女のお家も、国で六番目くらいにエラい家なので呼ばないわけにはいかないのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます