第26話 地下道を抜けて
あれから数日が経過し、いよいよ要塞街ファレス脱出の日が迫った。
魔王軍との接触地点は地下道内を含め一日で到達出来るかどうか程の距離だとというので、決行までの数日で用意をし、いよいよその日を迎えるのであった。
「じゃあ、行ってきます。いろいろとありがとう御座いました」
「あぁ。あんたらがこの街を攻めるまでは情報屋としても活動してるから、何かあったら頼りなよ」
「はい! ……っとそう言えば」
そこで、とある事を思い出す。
彼女とならば、『念話』の契約をしておいて損が無いと思ったのだ。
それどころか、情報屋ならばしないだけ損である。
「自分のスキル、覚えてますよね?」
「あぁ。『念話』だっけ? ……あぁ、そういう事かい」
「はい。では……」
カルラは頷き、カルラと『念話』の契約をするのであった。
「……結構ちゃんとした作りだな」
「あぁ。それにかなりの距離だ。相当な時間をかけて作ったんだろうな」
娼館の地下を降りて暫く歩いたが、一向に出口が見えない。
撹乱のためか、掘るのに硬い所を避けたのかは不明だが、地下道は曲がりくねっていた。
所々休憩所も設けられており、体力の無いフィアナとレナを休ませつつ、順調に進んで行く。
「……お」
すると、外の灯りが見えてくる。
既に辺りは暗くなっており、月明かりが差し込んできていた。
「……念の為、俺とサナンで出口を確認する。サナン。灯りを消してついてきてくれ」
「了解だ」
夜は灯りは非常に目立つ。
自衛隊上がりの父が『真夜中はどんな小さな灯りでも数百メートル先から見える。死にたくなければ、暗闇でタバコは吸わない事だ』と、良く言っていた。
タバコを吸うことは無いが、恐らく演習での体験談なのだろう。
ゆっくりと出口に近付き、顔を出す。
「……」
「……大丈夫そうだな」
出口は森林で、灯りも見えない。
つまり、人はいないということだ。
「……いや、待て」
「ん? どうしたサナン。何か……」
すると、サナンは二刀を抜き、構えた。
「な……」
「下がっていろ」
言われた通りに下がる。
すると、何かがサナンに飛びかかる。
それをサナンは切り、一刀で息の根を止めた。
「な、何だそれは!?」
「魔物だ! ウェアウルフ、数は三! いや、残り二だ!」
ウェアウルフ。
元の世界では狼人間を指したが、目の前のそれは、通常の狼よりも一回り大きい位であった。
しかし、確かに人間の面影のような物は感じる。
「た、倒せるのか?」
「勿論。スキル持ち相手に比べれば安いもんだ。ま、ここは任せて、仲間を呼んできてくれ」
「……分かった」
その場はサナンに任せ、後方の仲間を呼びに行く。
しかし、気になる点が増えてくる。
(……この世界に来てから所々違和感は感じていた……この世界は色々な所がおかしい。恐らく、ザルノール国がその真実の鍵を握ってるが……今はそれどころじゃ無いな。何はともあれ、魔王派の仲間は武力面でも非常に頼りになる事も分かった。スキルを持ってない一般兵三人……いや、五人分位にはなりそうだ……本当、仲間に恵まれたな)
この世界の違和感を感じつつも、仲間の実力を再確認するのであった。
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