第2話 スキル授与

「ここは……」

 

 目が覚めると、そこは異様な広間であった。

 明らかに日本ではない。

 そもそも、先程までいた教室ではなかった。

 

「……皆……いるのか」

 

 辺りを見渡し、クラスメイト全員がいることを確認する。

 皆、状況が読み込めていないようであった。

 そして、足元には異様な紋様の魔法陣のようなものが描かれている。

 

「良くぞ来ました。選ばれし勇者よ」

 

 その声の方を見る。

 そこには、西洋人の見た目をした姫と呼ぶにふさわしい見た目の女性が立っていた。

 流暢な日本語を話しており、長年使っていたように感じられた。

 気が付けば、周りにも多くの人がおり、完全に囲まれていた。

 

「な、何だよお前ら!」

「ここはどこなの!?」

 

 クラスメイトは口々に文句を口にする。

 しかし、誰もそれに対応する者は居ない。

 姫が口を開く。

 

「さて、皆様にはこの世界を救ってもらいます。その為に……」

「ふざけるな!」

 

 すると、一人のクラスメイトが口を開いた。

 それは、クラスの中でも目立つのが好きな鈴木悟であった。

 

「何で俺達がお前らの言う事に従わなくちゃいけないんだ! 俺達が簡単に……」

「……『炎陣』」

 

 姫のような格好をした女性が手をかざしそう言うと、鈴木の足元に魔法陣のような物が広がる。

 

「……は?」

 

 そして、鈴木がそれを認識した次の瞬間、鈴木は全身が火に包まれる。

 

「ひっ……」

 

 鈴木は悲鳴すら上げる間もなく跡形もなく消え去った。

 その光景を見た鈴木に一番近かったクラスメイトが小さな悲鳴を上げていた。

 

「このように、皆様にはスキルが与えられます。このスキルを使って魔王軍と戦って貰いたいのです。因みに私のスキルは『炎陣』と『水陣』。任意の範囲を炎、もしくは水で包む事が出来るスキルです範囲に限りはありません」

 

 笑顔で姫はそう言った。


「……」


 しかし、誰も口を開かない。

 もはや逆らえないと分かった以上、今度は誰もが見返りを気にしていたが、口を開いた鈴木が灰となったのを見て誰も口を開かなかった。

 

「あぁ、そうそう。通常、一人につき与えられるスキルは一つです。偶に二つのスキルを与えられる人もいますが、それは極稀ですね。つまり、私は特別なのです」

 

 皆、恐怖に心を支配されつつも姫の言葉に耳を傾ける。

 聞き逃しただけでも殺されるかもしれない。

 その考えが皆の心のなかにあった。

 

「見事魔王軍を倒した暁には何でも臨む褒美を与えます。そして、スキルもそのままで元の世界に返します。こちらの世界に残るのを望むのであればそれも良いでしょう。あぁ、あと不自由の無いようにこの世界の言葉は分かるように細工してありますのでご安心を」

 

 王女は手を差し伸べ、続けた。

 

「さぁ、皆様。スキルを授けましょう。人類を救う為、力をお貸し下さい」

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