亜美は新妻☆二代目姐も兼業です!
いすみ 静江
一皿目 オードブル
「
「は、はい!」
私の返事は上ずっていた。
「うさちゃん
料亭の庭園で差し出された
「私はお付き合いとか初めてなのよ。ずっと女子大学の附属できたから中学校や高等学校も生徒は女子しかいない環境で育ったわ。父の
絆さんの手は、まるで小鳥が羽を休めるように止まり木として待っていた。私は振り切る程の冷たさがない。
「私と一緒になると、父の資本で始めたうさカフェ
頬に手を当てて後ろを向き、羽の重さ程に指の先をあるべき絆さんの手の上に重ねた。とくっとなって跳ね返りたくなる。
「どうされたの? 絆さん」
ちいさな震えが繋がれた手から伝わってきた。こらえきれない絆さんの表情が一秒とて同じではない。
「いやあ、緊張するものですね。感極まってしまって」
絆さんは高い空へ向かって一呼吸した。
「日曜日ではなく水曜日のお見合いは、野々川さんのお仕事関係と白神の父に聞いたわ」
「料亭・
確かに東屋から出て、降り注ぐ天気が素晴らしく美しくて手で掬う仕草に自然となる。都会の作り物の自然風景の中、あまりにも空が青くて素敵だった。風に似た実直で朴訥とした絆さんの熱い手へと腕を伸ばしたのが、正しかったのか。ことの次第は一つの出逢いから始まった。
「絆さんの水曜日の天使は、もしかしたら新しい命かしら。人は文明を重ねてゆく中で神秘的で素晴らしい偶然と出会い過ぎるわね」
「奇跡は愛することと愛されることがお互いにないといけないと思う。僕は亜美さんを守っていきます」
「まあ、うさちゃん八羽もお暮しなんですね。来週の水曜日にうさちゃんハウスにお邪魔したいわ」
「あ――。恥ずかしいですが、僕もちいさな動物さん達が好きでして」
釣書にあった「ちいさなパートナーはうさちゃん」は本当らしい。
「どうしようもなくキュンになるわよね」
「そうっすよね」
お部屋に戻るときには、お互いのうさちゃんの話ばかりしていた。友達とも恋人とも違う、
「あらまあ、絆もまんざらでもないね」
背筋をしゃんとした
「どうした、
絆さんに耳打ちをしていた。こくっと頷くと「承知した」と返す。
「亜美さん、うちの会社にもライバル会社がありまして。不法就労者を多く雇って水増し人海戦術が得意な
「私一人なら逃げられるけれど、うさちゃんは勘弁してほしいわ」
まあまあと割って入ったのは父だった。
「めでたい席です。お仕事の話はまた今度」
✿
ホテル・
一皿目【前菜】
<あん肝のポワレ・フォワグラ風>
高級食材の名を連ねれば、さも美味しいだろうと思い込むだろう。しかし、煮ても焼いても寧ろ食べるのがあん肝たる所以は変わらない。結婚にブランドは必要ないのだ。
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