第3話 今

「今のは冗談だよ。残念ながら彼らのことは僕にも分からない。だけど、物語について彼が言っていた言葉は覚えている。さっきも言った通り、彼はずっと僕に面白い話をしてくれていたんだ。

彼が言うにはね、


――『今』っていうのは、過去と未来をつなぐ物語なんだ。だから、どんな人でもその物語の、『今』の主人公だ。


この世界には物語がたくさんある。それらすべてが希望にあふれているとは言わないけれど、希望が全く、ひとかけらも見つからない物語は一つとして存在しない。


そして、そのことを人はだれでも知っている。少なくとも、理解はできるはずだ。物語の数だけ希望はあるんだから、自分が生きる今という物語にも、きっと希望はあるはずだとね。だから人は、そうやって生きていくんだ……」


「じゃあ、僕も物語の中を生きているっていうこと?」


「その通り。君が『今』を生きている限りはね。だから彼らがやっていることにも、意味はあるんだよ」


ノアはそれを聞いてさらに俯いた。


「でも僕は、この先良いことがある気がしないんです。僕は嫌われているし、ヨセフスはどうなったか分からないし、それに、この先どうしたらいいか分からないんだ」

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