居場所
@nodoamekinkan
第1話 機械の夢
僕は周りの目を気にして生きていた。その目がなければどこか不安を感じてさえいた。だけどある日、そんな自分に対して、絶望して、憤慨して、そして――僕を取り囲むその目たちを見た。
僕は手当たり次第にその目を引きちぎった。引きちぎって、地面にたたきつけた。それでもまだ僕の衝動は止まるところを知らず、その目たちを踏みつけ、踏みにじっていく。
その目たちは、踏みつけられた瞬間、破裂して、無数の小さな目になって散らばった。息を切らして顔を上げると、今度はその無数の小さな目たちが自分を隙間なく取り囲んでいるのに気づいた。
僕は目を塞いだ。耳を塞いだ。それでもその無数の小さな目たちは、わずかな隙間から僕の中へ侵入してくる。僕は自分の目を失ったのに気づいた。耳を失ったのに気づいた。いつしか僕は、その無数の目の一つとして、眼下でうごめく肉の塊を眺めていた。
肉の塊は絶え間なく動き、絡み合い、何かを訴えようとしているようだった。しかし、僕にはその声も、意味も、全く理解できなかった。ただ、冷たく、無感情に見下ろすだけ。
だが、ある瞬間、肉の塊の中に、微かな光のようなものを見た。その光は塊の奥底から漏れ出し、ゆっくりと形を帯びていった。それは人間の形をしていた。いや、正確には「かつての僕」の形だった。
その光の存在に気づくと同時に、僕の中で何かがざわめいた。それはかすかな痛みだった。目を失い、耳を失い、何も感じなかったはずの僕の中に、まるで自分自身を取り戻すような感覚が蘇ってくる。
その光をじっと見つめると、光の「僕」はこちらを見上げ、無数の目の一つひとつに向かって静かに語りかけてきた。
「どうしてそんなに怯えているんだ?」
僕は答えようとしたが、声が出なかった。無数の目の一つである僕には、言葉を発する術がなかった。それでも、その光は続けて言った。
「僕は君だ。君は僕だ。そして、僕たちはこの世界そのものだ。」
その言葉が僕の中に響くと、無数の目の視界が一斉に歪んだ。目のひとつひとつが破裂し、眩しい閃光を放ちながら消えていく。そして最後に残ったのは、ただひとつの目。それは、僕自身の目だった。
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