FAKER DREAM

プロローグ

温かい日差しが降り注ぎ、いつもの日常が幕を開けている。

人間たちが、同じような行動をし、日々を創り上げている。


僕も例に漏れず、同じような毎日を繰り返している。


そんな退屈な毎日を、

平和な日々を、

同じような日常を、


僕は望んでいた。


そんな淡い幻想は、とっくの昔に無くなっていたんだ。


いつものような夜がやってくる。


僕は、夜食を買いに行こうと、夜道に出ていた。


いつもと変わらない道。

いつもと変わらない時間。


「みつけた」



…失礼

いつもとは違う夜道のようだ。


振り返ってみると、何も変わらない道。

飽きるほど見てきた、不変の道。


そう、気のせいだ。

きっと疲れているだけだろう。


「見つけた、みつけた、ミツケタ。」



はっきりと聞こえる。

何も変わらない道なのに、

目をつぶっても歩けるほどの道なのに、


何かがチガウ。


「ああ、やっとミツケタ。

 ワレラノ…」


耳をふさいでも、聞こえてくるその声に

足早に移動する。


無我夢中で移動して、

いつものコンビニを視界に入れ、少しだけ安堵する。



コンビニの中は、深夜帯にふさわしい静かさで、

客の老人と店員がけだるそうに立っている。

いつもならすぐ夜食を買って帰路に着くが、今の僕にはそんな余裕はなかった。



どのくらい経ったのだろか、心も落ち着いて余裕が出てきた。

よくよく考えると、声がしてきただけで何もおかしなことはない。

そうだ、思いもよらぬことで、気が動転していただけだ。


少しだけ非日常なだけだった。

きっと、何も変わらない。


いつも通りの夜食を買おうと、商品を手に取る


その時だった、


轟音が響き、体に衝撃が駆け走る。

意識外からの急な出来事により、何が起こったか理解できないまま倒れ込む。



視界の端には車が衝突していた。




ああ、今日は不思議な事がよく起こる。



遠くから聞こえるサイレンの音を聞きながら、

僕は意識を失った。



「ああ、やっとミツケタ。ワレラの王。

私たちの主、キュウセイシュサマ!」


声が頭に響きながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る