イマク様を呼ぶ方法(59)

路地表

第1話 喫茶店にて

「俺さ、天国に行く方法を、遂に見つけたんだ」


 藤森は話の拍子を無視して、いつも唐突に関係の無い話題を提供して来る。僕たちは今、喫茶店に居て、飯を頼むかどうかの話をしていたはずだった。

「いや、店員さんも来てるし、一旦メニューを決め──」

「本当に突然のことだったんだけど、昨日の夜、分かっちゃったんだ」

 こうなってしまうと、もう彼は止まらない。店員さんに詫びを入れて、一旦捌けてもらう。

「あのさ、友達として言っとくけど、さすがに店に迷惑掛かることは止めようぜ。皆働いてるんだしさ、呼んどいてあれは無いよ」

「……ごめん、でも、さ……」

 彼のこの悪癖は今に始まったものでは無いが、今回は少し様子が違った。何かを恐れているのか、小刻みに震えながら、慎重に言葉を選んでいた。

「お前、大丈夫か? 少し様子が変だよ」

「大丈夫、大丈夫……ほんと悪いんだけど、一旦、俺の話を聞いてくれ。誰かに言わないと、気が狂いそうで……」

 私は呆れながらも、明らかに焦点の合わないその目を見て、少し心配になった為、話を聞いてやることにした。


 二日後、藤森は、自室で首を吊って死んだ。

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