第41話 裏路地の邂逅

「あいつらのんきに飯なんか食ってやがる……」

「好きにさせとけ、どうせ最後の晩餐だ。」


 手下からの報告を聞き一瞬殺意を覚えたが……なに、もうすぐ離れ離れになるんだから問題ないだろう。

 それにしてもお頭も面倒を押し付けてくれる。

 あの獣人が気に入ったからって言って奴隷にしたいとか。

 まあ何するかは大体想像は付くが、あの獣人も災難だな。

 

 ん?動き出したか……


「おい、絶対に目を離すな。それから他の奴らにも声をかけろ。もうすぐ日が暮れる。その時で決行だ。」


 俺の指示を受け、てしたの一人が伝令役でこの場から走り去った。

 ほんと面倒だな。

 俺だってこんな仕事はしたくはなかったが……お頭に逆らったらこの世界じゃ生きていけないからな。

 悪く思うなよ……



——————


「まだついてくるわね。」

「暇人は何をしてても暇人だってことだろ?」


 リリーは気配が増えたことを感じて、不快感をマックスにしていた。

 リルも同様で、一瞬身震いしている。

 と言っても、リルはただの獣人じゃないからな。

 むしろ襲おうとしている奴らがかわいそうでならない。

 街中でトマト祭りは勘弁願いたいな。


「リル、間違っても潰すなよ?」

「主殿……我だってさすがにそこまではせん。まあ、ちょっと力加減を間違って腕の一本や二本再起不能になっても自業自得だろうて。」


 うわぁ~、完全に潰す気満々じゃないか。

 なんでこうも好戦的なんだろうな。


 それからそいつらの気配を感じつつ、俺たちは街を探索して歩いた。

 リリーは装飾品が気になったのか、小物屋だったり見て回っていた。

 懐もだいぶ温かいから、それなりに買ってあげても問題ないだろう。

 それから厳選に厳選を重ねて、3つほどアクセサリーを見繕っていた。

 と言っても人間サイズではなく、人形用の装飾品なのだが。

 さすがに庶民が買える人形用の小物だけあり、宝石関連は取り付けてなかった。

 ガラス細工で宝石を真似ている感じだった。

 それにしてもこのガラスの透明度……シンプルにすごいな。

 よくよく考えたら、この世界にきてほとんどの家々にガラス窓が取り付けられていた。

 しかも曇りガラスではなく、普通に透明な奴。

 ポーション類も耐衝撃性のガラス瓶だし、何気に技術力が高いな。


「リル~これ見て~似合うぅ~」

「うむ、我にはそう言うのはよくわからんが……腹の足しにはならないことは分かるぞ?」


 リリー、絶対聞く相手間違っていると思うぞ?

 せめてソニアに聞くべきだろうな。


 リリーはリルの返答にブスクレていたが、俺から見たらお人形さんみたいで似合っている。

 まあ、言うと調子に乗るから絶対言わないが。


「そう言えば主殿、我のガントレットのメンテナンスをしたいのだが、武器屋などは何処だろうか。」

「そうだな、清掃なんかは丁寧にしてきたけど、そろそろ本格的なメンテナンスが必要そうだな。うん、ごみ掃除が終わったら武器屋に行ってい見るか。」


 そう、ごみ掃除が終わってからね。

 そうしないとせっかくメンテナンスしたのに、無駄な汚れがついてしまうからな。


「ということでリリー、そろそろ日も暮れてきたし人気のないところに移動しよう。案内を頼めるか?」

「OK……うん、こっちよ。」


 さてさて阿知良さんはどう動くかな。




——————


「兄貴、奴らが裏路地に移動しましたぜ。」 

「みてりゃ分かるっての。よし、この先は袋小路だ。そこまで行ったら実行するぞ!!」


 手下たちはニヤリと下品な表情を浮かべる。

 さすがに俺も若干引いてしまったが、この仕事を終えればゆっくりできるんだ、がんばって終わらせねぇ~とな。




「おう、そこの嬢ちゃん。俺たちとちょっとあそばねぇ~か?」

「そうそう、そんなヒョロっこい奴よりも、俺らの方が頼りがいがあるぜ?」


 ついに手下たちがあの3人に接触を図った。

 それにしてもその言葉の選択よ……どう見ても悪者ですって言ってるようなもんだろうが。

 どうして俺の周りにはバカばっかり集まるんだ?

 まぁいい、仕事さえ完璧にこなしてくれたら問題は無いからな。


「なぁ、兄ちゃん。その嬢ちゃんをこっちによこしてくんねぇ~か?頭がその嬢ちゃんを気に入ってな、ぜひ会いたいって言うんだよ。ちゃんと金も渡すからよ。」


 地面にジャラリと銅貨がバラまかれる……っておい!!俺は金貨の入った袋渡したはずだぞ⁈あいつら……ちょろまかそうとしたな!!

 まあいい、それは全部終わってから問い詰めればいいだけだ。

 まずはあいつらに動きがあったら出番だからな。


「だとさリル。どうする?お前の価値が銅貨数十枚くらいだって。」

「我の価値か……銅貨数十枚とはどのくらいなのだ主殿。」

「そうだな、ロックバード以上ワイルドバッファロー未満?」


 何だ!?今一瞬ぞわっとしたぞ……

 これまで感じたことのない殺気があたり一面に充満していく。

 俺の背中に嫌な汗が流れていくのが分かる。

 こいつは絶対手を出してはいけないやつだ!!

 そう俺の勘が告げている。

 逃げ出したい!!今すぐここから逃げ出したい!!

 だが俺の足はその意に反して動くことは無かった。

 手下たちも同様で、隠れている奴ら含めて全員腰を抜かしていた。

 辛うじて立っている奴もいるが、声をかけた二人は泡吹いて倒れてやがる。

 終わった……

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