第23話 スマッシャー参上!!

「少しだまっとけガキが!!」


 そう言って人族狩猟者ハンターは俺に殴り掛かってくる。

 俺はそれを軽く躱すと、カウンターで様子を伺っていた受付嬢と目が合う。

 受付嬢は俺の視線に気が付き、小さく頷き返した。

 これはあれだ、俺が黙らせて良いってことだな。


 俺は人族の狩猟者ハンターの攻撃をゆっくりとかわすと、そのがら空きの腹部にやさし~くパンチを打ち込む。

 一応〝手加減〟は0.01%以下に抑えてあるから大丈夫なはずだ。

 がしかし、俺には〝丈夫な身体〟が存在している。

 これはある意味でカウンターとなるスキルでもある。

 確かに俺は拳を出し相手の腹部に拳を突き出した。

 その為、〝丈夫な身体〟スキルは相手のぶつかってきた衝撃をそのまま返してしまった。

 俺の拳の一撃を含めて。

 その拳は鳩尾を捉え、そのまま人族の狩猟者ハンターはくの字に折れ曲がる。

 ほんと、人ってあれだけ曲がるんだなって思った。


 そしてその勢いのままギルド会館の壁に激突して、吐血しながら地面に倒れて……動かない。

 やり過ぎたなこれは。


「お、おい……しっかりしろ……だ、だめだ……のびてる……」


 また別な人族の狩猟者ハンターがその倒れた男に近づくと、その状況に唖然としていた。

 

「はいそこまでです。これ以上は問題になりますからね?それとあなたたち、因縁をつけるのは構いませんが、狩猟者ハンターとしての品格を持ちなさい!!」

 

 この状況に流石に見かねたギルド職員が諍いに割って入ってきた。

 もちろん注意を受けたのは人族の狩猟者ハンター

 それを面白くないと思ったのか、もう一人の狩猟者ハンターがギルド職員に食って掛かっていた。


「うるさいんだよ!!俺たち人族にたてつこうってのか⁈あぁ⁈この敗戦国の屑どもが!!」


 あぁ~あ、それはダメだろ?ここでそれを言ったらどうなるかくらいわかるもんじゃないのか?


 そこらじゅうで飲んでいるこの国の狩猟者ハンターたちが一斉に立ち上がる。

 中立の立場を貫く狩猟者ハンターたちとて、この国の住人であり、ここは彼らにとって祖国。

 そんな彼らに対して放っていい言葉ではない。

 どうしたらそこまで驕ることが出来るのだろうか。


「リリー、ちょっとだけ黙らせられる?この部屋全部。」

「オッケー、【サイレントスリープ】」


 さすがに面倒ごとになりそうだったんで、丸ごと眠ってもらった。

 まあ、後でなんだかんだ理由つけて誤魔化せばいいよな。


 それから俺は面倒だからと、ぶっ飛ばした狩猟者ハンターたちを縛り上げ、リリーにけがの治療を依頼。

 リリーもめんどくさいと言いつつも対応してくれる当たり、優しさを持っているな。

 一応はこの世界の神様だし、心配は心配なんだろうな。

 って思った俺が間違いだった。

 人族の狩猟者ハンターを縛り上げて回復を終えると、事もあろうかその額に悪戯を始めた。

 しかも消えない塗料で。


 何を描いているかは割愛するが、おそらくあれで外を歩くことになると思うと、俺は人としてやっていける自信がないとだけ言っておく。


 そんなこんなで狩猟者ハンターたちが徐々に目を覚ます。

 自分たちがなんで意識を失ったかが分からない以上、緊張感が漂っていた。


 それをぶち壊したのが、やはり人族の狩猟者ハンターたちだった。


「おい!!何だこれ!!誰がこんなことを!!」

「おい獣ども!!さっさとこの縄をはずせ!!お前たちは俺の言うことを聞いてれば員だよ!!」

 

 よくもこの状況でそんな暴言が吐けるものだ……

 さすがにこれ以上は俺がここで活動し辛くなってしまうな。


 俺はゆっくりとさっき吹っ飛ばした男の前に移動する。

 俺の姿を確認した男は一瞬身体を強張らせていた。

 おそらくさっきの出来事を思い出したのだろうな。


「おいお前!!さっさとこいつをほどけ!!」


 俺はその男の股間を……〝手加減〟OFFで踏み抜いた。


 男の言葉にならない絶叫がギルド会館に木霊した。

 ずっと騒がれても面倒なのでリリーに回復を頼む。

 リリーも俺の考えを理解したのか、二マリとして回復魔法を施す。

 一瞬にして回復したのか、男は痛みが消えるとまたすぐに騒ぎ出した。

 そのたびに俺は男の股間を踏み抜く。

 正直足から伝わる感触は気持ちが悪すぎる。

 しかも踏みつけるたびに俺の足に血がべったりとつくものだから、余計に気持ちが悪い。


 それを数回繰り返すと、隣で縛られている狩猟者ハンターたちも声を上げることはなかった。

 最初は同じ人族だろうと、さっさと援けろと騒いでいたが、今ではおとなしいものだ。

 痛みと屈辱にもだえ苦しむ仲間に視線すら合わせなくなった。

 最初からそうしていればいいんだがな……


「で?どうする……?」

「た、たすげでぐだざい……もうじまぜんがら……」


 息も絶え絶えの股間がつぶれた狩猟者ハンターは、懇願するように頭を下げた。

 正直此処で許しても良いんだが、おそらくこいつらはここに来る前にも似たようなことをしてきたに違いなかった。


 案の定ギルド職員に確認したところ、他のギルド会館でも似たようなことを繰り返していたらしい。


「お前に懇願した人たちを、お前たちは助けたのか?」


 俺の問いに押し黙る人族の狩猟者ハンターたち。

 それが答えなんだろうな。

 俺は再度股間を踏みつぶそうとした時だった。


「そこまでだ!!」


 この街の憲兵隊が姿を現した。

 人族の狩猟者ハンターたちはこれ幸いに助けを求め、さらには俺に暴力を振るわれていたと話し始めた。

 こいつらを助ける理由なんてとうに存在しなかった。


「そうか、では話を詰め所で聞くとしよう。こいつらをひっとらえろ!!」


 憲兵隊はすぐに行動に移す。

 もちろん捕まったのは人族の狩猟者ハンターたち。

 自分たちの思惑と違うことに困惑するが、そのまま引きずられるように連行されていった。


 憲兵隊の隊長は俺に一礼するとそのままギルド会館を後にしたのだった。

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