23月 面影
吹き抜けの部屋から誰も居ない雑居ビルのファミレスへとテレポートしたツクオミ達。
チリンチリン!
「…おかえり、大丈夫だった?」
「はい、ローウィン様が禁忌狩りの縋らを見える様にして頂いたおかげで。周囲の禁忌狩り40人全身片付きました!」
「あっ! アリス姉ちゃん! おかえり~!」
ツクオミはそう言ってウォーターサーバーの水が入ったコップをアリスに差し出した。アリスは服の汚れをポンポンと叩き落とすと「ありがとうございます」と笑顔で水を受け取った。
「……」
タナカは水を飲むアリスの血に染まった破れてる裾から覗く腕を見つめていた。
───アリスの腕を斬られた後、それはタナカにとって本当に刹那の出来事で。頭上からツクオミを狙っていた禁忌狩りに気付くどころか、顔に掛かったそれが血だと理解する間も無く終わっていた…。
攻撃を無力化する
目で追うどころが、反応すら間に合わない程に目まぐるしい戦場に、自分にとっては最後の切り札と思っていた未来視が持ち腐れとなってしまう現状。
「ごめんなさい…。わたし、なんの力になれなくて…」
タナカの言葉にピクッとアリスが固まりコップを近くのテーブルに置いて歩きだした。
(隙なんて無いだろうけど、なんとか…気絶覚悟で未来視で気を引く…? いや
「なにができるかな…?」
頭を抱える様にテーブルに突っ伏してポツリと溢すタナカの言葉にアリスは「それでは、まずは元気になりましょう!」と、微笑みながらタナカの向かいに腰を下ろした。
「初めの奇襲の時。禁忌ですら気付けない攻撃を受けても、タナカ様がツクオミ様を護って下さったおかげで反撃が出来たのですよ。ローウィン様も感謝してると仰ってましたし、自信をもって下さい!」
確かにそうだ…とありすの言葉に恥ずかしさを感じつつ少し自信を取り戻したタナカが「うん…ありがと」と顔を上げたその時。ゴン!と、アリスはテーブルに頭を打ち付けながら項垂れた。
「……え、どうしたの、アリス?」
反応が遅れつつタナカはアリスの肩を軽く揺らす。すると、アリスの体は傾き、ズルズルと滑る様に床へと崩れ落ちた。
「わっ! アリス姉ちゃん!?」
驚き仰け反るツクオミの足元に倒れるアリス。サングラスが外れ、生気の無い目がツクオミを見つめていた。
「アリス、姉ちゃん…? ねぇ、どうしたの? 疲れたの? ねぇー起きてよぉ!」
「み、見ちゃダメ!」
タナカは、慌ててツクオミの目を隠しながら、アリスから引き剥がす。(何が起ったの…なんで急に!?)そう思考を巡らせていると、アリスと目が合ってしまった。
その瞬間、銃で撃たれたかの様な鼓動が全身を打ち「カヒュッ…」と息が漏れ。体が凍り付いた様に動かなくなる。
アリスの目。それはその昔に殺した妹と同じ目だったからだ。
───例え数千、何百年経とうと忘れる事は無い。この
息も出来なくなり思考も停止。あまりのショックに半ば意識を失いそうになっていた。
「タナカぁ!!」
ツクオミの叫ぶ声に我に返るタナカは、息を整えながら「うん…うん、分かってる…!」と自分に言い聞かせる様に言ってアリスの服を
アリスに何が起きたのかは、一切分からない。しかし、確信的にタナカは自分の勘を信じていた。 普通なら死亡扱いだが、特級となれば話は別だ。
(“アウラウネの水”は電気分解で解毒、体内で分かれた毒を吐くまで感電させる事!)
基本。特級は寿命以外では、滅多な事では死ぬ事は無い。このまま、アリスを置いて逃げたとしても、しばらくすれば自力で復活する事は分かり切っていた。
だが、タナカはアリスを見捨てる事など出来なかった。
「あの子に目が似てるからって
バヂバヂィ!!
タナカは過去の行いを正す思いでアリスの腹部に電撃を放った。入口に背を向け不安そうに見届けるツクオミの背後。ドアの傍の観葉植物がウネウネと動き始め。
「あらあらぁ? 間違ってお飲みになられたのですか?」
「っ!?」
突然聞こえてきたその声にツクオミとタナカは同時に振り返る。そこには、入口のドアを塞ぐ様に立つ植物の女性、アウラウネが生えていたのだった。
(禁忌狩り!? ウソ…こんな近くにいたの!? もしかして、私達が来る事始めから知ってた!?)
「うふふ、わたくしツェンシーと申します。外のお花の皆様から貴方達が来ると聞きまして、待っていたのございます。まぁ…狙いは外れてしまいましたが…」
前髪の蔦を耳に掛けてお淑やかな笑みを浮かべるツェンシーは、触手の様な根の脚を一本上げて、ポタッと分泌した水と床に垂らして見せた。
「でもまぁ…お飲みになられたのがそこの特級のエルフさんで、本当に良かったですわ…。無益な殺生は避けなくてはいけませんですからね」
安心した様に溜め息を吐くツェンシー。タナカはアリスを背負い上げて、手の電撃を全身からの放電に変えて、背を向けた。
(よりによって、質の悪いアウラウネが相手だなんて…! 禁忌狩りにはこんな
とにかく今は逃げるしかない…!
「ツクオミ! 今は護ってあげれないけど、死んだりしちゃダメよ!?」
一目散に走り出すタナカ、ツェンシーを警戒しながら追い駆けるツクオミは「お前に掴まるもんかー!」と手を突き出す。その瞬間、床が山なりに盛り上がりあっという間にツェンシーを包み込んだ。
その隙に、ツクオミは厨房の裏口へと向かうタナカを連れて外へとテレポートするのだった。
しばらくして、ツェンシーが閉じ込められてる床にヒビが入り、そこから生えた花々が急成長。ガゴッ…ガラガラ!と床を崩しながら
「ウッフフフ。閉じ込めるだけで何もしないなんて…優しい禁忌ちゃんね。かわいらしいですこと…」
焦らしそうにツェンシーはクスクスと笑っていた。その時───バゴォオオン!!
突如、厨房が壁ごと吹き飛ぶ。そして、不意を突かれ反応すら出来なかったツェンシーの胸に白い毛玉が飛び込んで来た。
「っ!?」
声にならない呻きを上げ、咄嗟に庇う様に胸を抱きながら
「ってかなんや? このスゴい柔ら…うげっ!?」
ローウィンは自分が胸に抱かれてる事に気付くと嫌な顔をしながらバッ!と見上げ。目を丸くするアウラウネと目が合う。
「あっ…あぁ、なんや。ひ、人違いかいな…。はぁ……まぁ受け止めてくれたから、見逃してやったるわ」
少し安心した様子で胸を撫で下ろすローウィン。何が起きたかを理解したツェンシーは「これはこれは、ローウィン様ではございませんか~」と微笑みながら言い。
ローウィンを椅子に優しく座らせると、目線を合わせる様に根を引っ込めた。
「わたくし、ツェンシーと申します。ローウィン様? …今、狼男って言ったよな?」
突然、張り付いた笑顔のままツェンシーの声色が変わり、ローウィンは少し戸惑い気味に「せ、せやで…?」と答えた。だが、すぐに何か思いついた様に手をポンと鳴らした。
「あ、そう言う事か! あの狼男だったりお前だったり。なんでバラバラなのかって、ボクとツクオミとでブンダンして戦ってた感じやな!? それが狼男の所為でボクがここに来てもーたから切れてる訳やな!?」
笑うローウィンの言葉に、笑顔が消え、代わりに青筋を浮かべるツェンシーは「ああ、全くその通りだよ…っ!」と怒りに声と体を震わせながら背を向ける。
「あの…あんのクソ駄犬がぁあ! 息子を斬って自棄になってっからって…作戦違反でアタイにローウィンまで押し付けるったぁ良い度胸じゃねぇかよぉ!? シャーディイ…ッ!次見掛けたらブッ殺して苗床にしてやらぁあ!! はっ…! いけません!わ、わたくしったら! 見苦しい所を…失礼しましたわ! あ、あのぉ、ローウィン様? そろそろお戻りになられては───?」
「……ぇ? ま、まぁそ、そうさせてもらうわ。ほ、ほなね! あ、狼男とアホオミ倒せるとエエな!」
ドン引きするローウィンはそう言うと、逃げる様にヤナセの元へとテレポートするのだった。
ゴロゴロ…!
雷の音が聞こえ、ツェンシーは既に街中に張り巡らせた自身の根から、タナカ達の居場所と空に雷雲がある事を知った。
「禁忌ちゃんの魔法で光合成を防がれたようね。あのエルフ、やけにわたくしの毒に詳しいじゃない…。でも、この程度対策済み…アンタ等行くぞ!!」
苛立ちを滲ませながらツェンシーは、根に吸収される様に体を
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