第7話
祖父の診療所で見つけたノートと鍵の事件から数週間が経った。僕たちは平穏な日常を取り戻しつつも、どこか胸の中に新しい感情を抱えていた。玲奈は時折、「おじいちゃんは、もっと何かを残している気がする」と言い出すことがあった。
そんなある日のこと。僕たちがリビングでお茶を飲みながらのんびりしていると、郵便受けから一通の手紙が届いた。それは古い文字で宛名が書かれており、差出人は不明だった。
「何これ?映画みたい!」玲奈は嬉しそうに封を開け、中身を取り出した。
手紙の内容は、こうだった。
「鍵を手にしたあなたへ。
全ての謎を解き明かしたわけではありません。
私が隠した本当の遺産は、もっと遠い場所にあります。」
手紙には、見覚えのない地名と座標が記されていた。そして、最後にこう書かれていた。
「もしあなたが真実を求めるなら、この地へ来てください。」
新たな冒険の始まり
玲奈は手紙を読んで目を輝かせた。「ねえ、行こうよ! これ絶対におじいちゃんからの最後の挑戦状だよ!」
「いや、でも誰が書いたかも分からないし、本当に祖父が残したものかどうか…」
「だから行くんじゃない!それに、危険だったら帰ればいいでしょ?」
その言葉に押され、僕たちは手紙に記されていた地名と座標を調べ始めた。それは、日本のとある離島だった。
「島か…遠いな。」
「冒険ってそういうものでしょ!」玲奈は目を輝かせながら言った。「おじいちゃんが何を隠したのか、絶対に確かめなきゃ!」
不思議な島への旅
数日後、僕たちはその島へ向かうことになった。手紙に記されていた地名は「星ヶ浜」という、小さな漁村がある場所だった。島に到着すると、古い伝説が語り継がれている場所らしく、村人たちは好奇心旺盛な玲奈を面白がって歓迎してくれた。
「星ヶ浜に何か隠されているんですか?」玲奈が村の年配者に尋ねると、彼は少し考えた後、こう答えた。
「昔、この島にやってきた医者が何か大事なものを埋めたって話はあるが、それ以上は分からんね。」
医者という言葉に、僕たちはピンときた。「おじいちゃんだ!」
村人からさらに話を聞き、島の奥にある「星の洞窟」がその医者にまつわる場所だという情報を得た。
星の洞窟で見つけたもの
洞窟は昼間でも薄暗く、少し不気味な雰囲気だった。手紙に記されていた座標を頼りに進むと、洞窟の奥に古い木箱が埋められているのを発見した。
「これだ!」玲奈が叫び、興奮しながら木箱を掘り起こした。
中には、古びた地図ともう一通の手紙、そして小さな金属製の紋章が入っていた。
手紙にはこう書かれていた。
「ここまでたどり着いたあなたへ。
この地図に記された場所には、私が生涯をかけて守り続けた人々の記憶があります。
それをどうするかは、あなたたちに託します。」
真実の遺産
地図に記されていた場所は、島の反対側にある森の中だった。僕たちは急いでその場所へ向かい、古い祠を見つけた。祠の中には、祖父が支援していた人々の記録や写真が収められていた。
玲奈は写真を一枚一枚手に取りながら、「おじいちゃんは、この人たちを守りたかったんだね」とつぶやいた。
「そうだね。そして、僕たちにこの記憶を守ってほしいってことなんだ。」
僕たちは祠をそっと閉じ、島の村人たちに事情を説明し、記録を大切に保存するようお願いした。村人たちも祖父の活動を知り、祠を守ることを約束してくれた。
帰り道
冒険を終え、島を後にした僕たちは、どこか心が軽くなったような気がした。
「おじいちゃん、すごい人だったね。」
「うん。でも、玲奈もすごいよ。おじいちゃんの遺産を見つけるなんて。」
「私たち、きっと名探偵夫婦だよね!」
玲奈は満面の笑みでそう言い、僕も思わず笑ってしまった。
こうして、新たな謎を解き明かした僕たち。これからもきっと、たくさんの「事件」が僕たちを待っている気がしてならない。
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