最低評価の鬼執事!!
吉川
プロローグ 学園始まって以来の最低評価
ここは日本有数の名門校である『天宮学園』。
この学園では、"貴族科"と"奉仕科"で学科が分かれており、メイド服姿の女性や執事服を纏った男性もいれば、気品溢れるお嬢様や誰もが見惚れる御曹司まで、この学園に通う生徒は千差万別である。
世間からの評価も圧倒的に高い『天宮学園』だが、ここに学園始まって以来の"最低評価"を下された"鬼執事"と呼ばれる存在が通っていた。
「あぁん?何見てんだぁ?」
「きゃ〜!!"鬼"が来ましたわぁぁ!!」
「み、みんなぁ!!ここから離れるんだぁ!!」
「馬鹿どもが……"執事"を忘れんなっ!!」
周囲の生徒たちは、彼が"執事"であるということを忘れ、完全に"鬼"呼ばわりをしている。
そして"鬼"に目をつけられたくない生徒たちは、彼の姿を見るや否や、両手を大きく上げ、この場から逃げ去って行く。
「相変わらずうるせぇ奴らだ……」
そう吐き捨てるように呟いたのは"最低評価の鬼執事"改め、高校2年の
こう見えても一尊は、成績優秀・スポーツ万能・コミュ力強者・の三拍子揃った文句の付けようない男子生徒であるが、この学園では最低評価が下されている。
「はぁ……もっと普通の学校に行きてぇ」
一尊は完璧優等生な反面、気性の荒い性格の持ち主であった。そんな彼を見かねた両親が、無理やりこの学園の"奉仕科"に配属させ、性格の矯正を計ったのだ。
入学したての一尊は、意外にも、ここでの学園生活を楽しいものだと感じていた。
しかし……仲の良い友人ができることもなければ、日頃から"貴族科"の生徒に見下されるばかり。
挙げ句の果てに"奉仕科"の生徒は、在学期間中に我儘すぎるお嬢様や傲慢な御曹司の"従者"となることが規則となっていた。
普段の学園生活も相まって、一尊にとってそれは、まるで"拷問"を受けているかのような、最悪の仕打ちであった。
「おいっ!見せもんじゃねぇぞ!!」
「す、すみませぇぇんっ!」
「ったく……」
このようにして一尊は、周囲の人と威圧的に接することで、いつしか"鬼"と呼ばれるようになり、運動も勉学も手を抜くことで、気づけば"最低評価の鬼執事"という地位を手に入れたのだ。
"奉仕科"の生徒は、"貴族科"の生徒に指名されることによって、初めて主従関係が結ばれるという規則もあるため、誰も"最低評価の鬼執事"なんて選ばないのである。
「ここはハズレだったな……まあ、もう少しの辛抱か」
自主退学が認められていない以上。この学園を卒業することでしか、地獄のような学園生活を抜け出すことはできない。
気づけば残り2年となった学園生活。一尊は大きく深呼吸をすると、新しく配属される"奉仕科"の教室へと、足を踏み入れるのであった。
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