ギルドからの依頼1
「なかなか上手いじゃないか」
「ホント?」
「ああ、筋がいい」
ショックシープの攻撃がミツナに効いてしまうことが分かった。
痺れることを織り込み済みで攻撃してもいいとミツナは思っていたが、エイルはそうした戦い方を頑なに許さなかった。
帯電しているのはショックシープの毛の部分であるので毛を避けて攻撃すれば痺れることがない。
ただ毛がない部分というのはかなり限られていてほとんど顔周りのみが痺れず攻撃できるところになる。
現れるショックシープが一体だけなら問題ないだろう。
しかし二体、三体と複数で現れた時に顔のみを狙うというのはなかなか難しい。
痺れている間にショックシープの突進を食らえばダメージは避けられない。
もっと簡単で安全な方法として遠距離から攻撃してしまうという方法がある。
エイルがやった投げナイフを始めとして弓矢や魔法といったもので直接触れることなく倒してしまうのだ。
ただエイルもミツナも魔法は使えない。
そこでエイルはミツナに投げナイフを教えることにした。
投げナイフは練習やセンスは必要であるけれどお手軽な遠距離攻撃である。
ナイフなら大概どこでも売っているし矢に比べてナイフは壊れにくい。
持っていられる数が矢より少ないとか素手での投擲なので距離が短いとか弓矢と比べた時のデメリットはある。
ただエイルは弓矢を教えられないので投げナイフぐらいしか選択肢がないのだ。
ダメなら別の方法を考えようと思っていたが、ミツナは投げナイフのセンスがあった。
「俺よりも上手くなりそうだ」
神迷の獣人は身体能力が高い。
ミツナは戦闘におけるセンスも高くて能力を十分に活かすことができる。
教え始めるとあっという間にナイフをまっすぐ投げられるようになった。
「へへっ……役に立てるなら嬉しいな」
ナイフを持ってミツナは笑顔を浮かべる。
「もっと上手くなれそうだけど……今回これぐらいで実戦にいってみようか」
練習すればするほどミツナは上手くなりそうであったが護衛依頼までの時間もない。
エイルの能力を発揮するためには少しの傷でもあればいい。
基本的にはナイフさえ当てられれば構わない。
今のミツナなら百発百中ではなくとも高い確率で当てられる。
ショックシープには毛に含まれる電撃と突進の他に攻撃の方法はない。
しっかりと距離をとって突進をかわせば何度でも投げナイフで攻撃する機会がある。
エイルは自分のナイフを数本ミツナに渡す。
町から近いところにある木立で投げナイフを練習していたエイルとミツナは再びショックシープを探し始めた。
「二体いるぞ! 俺が引きつけるからミツナは右のやつを頼む!」
「わ、分かった!」
ショックシープを見つけた。
二体で地面の草を食べていて視界を遮るものがない平原なのですぐにエイルとミツナも見つかってしまった。
グッと睨みつけるような目をしてツノを前に出すように頭を下げる。
エイルが前に出るとショックシープは二体ともエイルの方を向いた。
完全に近づかずに自分に注意が向いたところでエイルは止まる。
その間にミツナは投擲用の小さめのナイフを取り出して構えて隙をうかがう。
「いいか、狙うのは突撃のタイミングだ」
「う、うん!」
理想としては攻撃される前に倒してしまえればリスクもなくいいのだけどエイルは突撃、つまり攻撃中にナイフを投げるようにミツナに指示を出した。
ショックシープもバカではない。
何もない時にナイフを投げたってかわされてしまう。
投げナイフの技量が高いならともかくミツナはまだまだ動かない的に当てるぐらいのことしかできない。
だが都合よく相手が動かない時なんてものも寝ている時ぐらいだ。
夜になって寝るのを待ってなんてことはやっていられない。
そうなると次に良いのは狙いやすいタイミングで狙うのである。
「今だ!」
ショックシープが突撃を始めて、ミツナはそれに合わせてナイフを投げる。
狙いやすいタイミングとは相手の動きが予想できることや簡単に動きをコントロールできるようなタイミングのことをいう。
突撃にも色々と種類はある。
早いもの遅いもの、よく追いかけてくるものただまっすぐに突っ込むもの、ツノを使うもの爪や牙を使うものと一口に突撃といってもどんな突撃なのかモンスターによってさまざまである。
ショックシープの突撃は非常にシンプルで、ツノでまっすぐに向かってくる。
回避しやすい突撃であるが当たるとダメージは大きい上に毛に触れると二回目、三回目をかわすことすら難しくなる。
厄介さはあるものの、軌道は直線的で追いかけて曲がってくることも少ないのでかなり読みやすい攻撃といっていいのだ。
エイルに向かって突撃している。
エイルの斜め後ろにいるミツナから見てもショックシープがどう突撃するのか予想するのは容易かった。
「やっ!」
軌道を先読みしてナイフを投げる。
何もない時に投げればかわされてしまうだろうけど突撃をしている最中ショックシープはエイルに集中しているし気づいても急には止まれない。
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