第6話 激闘!第六駐屯地!(2) 空からの襲撃を迎え撃て!
一方、こちらは第六の門外フィールド。
駐屯地の前には魔物の群れが大きく広がっていた。
そんな群れの後方から、ひときわ大きな叫び声がいくつも上がりはじめたのである。
「コカコッコォォーーー!」
その叫び声は魔鳥コカコッコーのもの。
それはまさしくタカトが作ったスカートまくりま扇に融合加工されたコカコッコーの羽の持ち主である。
その姿は一見、オオハシを巨大にしたようなモノだが、そのスピードは驚くほど速い。
決してオオハシの巨泉さんではないので注意してほしい。
ちなみに巨泉さんは「ボイン」という言葉の生みの親なのだ!
そう! この小説のテーマのオッパイとは切っても切り離せない存在なのである!
って、ボインって単語……さすがに古いなぁ……まぁ、いいや……
そんなコカコッコーの群れが無数に空へと高く舞い上がっていく。
空に浮かぶ太陽に向かって飛んでいくと次第に一つにまとまって、まるで蚊柱でも立てるかのように黒い筋を作りだしていた。
だが、その柱のトン先がいきなり向きを変えたのだ。
そう、今まさに、はるか上空から駐屯地めがけて無数の大きなくちばしが鋭く降下し始めたのである。
慌てふためく一般兵たち。
すでにそんな彼らの目が死んだ魚のように生気を失っている。
ここしばらく大規模な戦闘など門外のフィールドでは起こっていなかった。
そのため、一般兵の練度は著しく低下していたのである。
なかには実戦経験のない者もいる始末。
目の前に迫り来るコカコッコーの群れが夢ではなく現実だと認識されたとき、初めて死の恐怖が沸き起こってくるのは仕方のないことだったのかもしれない。
鼠色の城壁の上で上空を見上げるカルロスは苦虫をつぶしたような表情を浮かべていた。
「あわてるな!」
叫ぶカルロスは慌てる兵たちの統制を保とうとする。
その低く落ち着いた声に従う熟練の一般兵たちは、腹の奥から込み上げてくる恐怖をぐっと飲み込んだ。
おそらく、それは日頃の鍛錬のたまものなのかもしれない。
そんな熟練兵たちの毅然とした姿は、当然に若い新兵たちを勇気づけるには十分であった。
だが、そうは言っても熟練兵たちは悩んでいた。
――しかし、このままでは、なんちゅうか……本中華!
相手は魔物、矢の一本や二本が命中したところで、簡単に死んでくれないのである。
って、ココで巨泉さんのモノマネですか……
熟練兵さんたち、意外と余裕っすね⁉
――はっぱふみふみ! きゃぷりてぃとれば! すぎちょびれ!
と見えても、やっぱり……実は焦っていたのだ。
――仕方あるまい……
そんな兵たちの焦りを感じ取ったのかカルロスは大きな声で命令する。
「毒の使用を許可する!」
突然発せられたその声に熟練兵たちが慌てて城壁の隅に立てられた倉庫へと毒の入った壷を取りに走った。
毒は体格で劣る人間たちにとって切り札なのだ。
だがしかし、通常の魔物討伐では毒は使用されない。
というのも、毒が回った魔物組織は融合加工の素材に使用できなくなってしまうのである。
そして当然に、毒に汚染された魔血を使用した魔装騎兵も開血解放をすれば、その瞬間に「はっぱふみふみ! きゃぷりてぃとれば!」の錯乱状態になってしまうのである。まぁ、まだ錯乱で済めばいい……最悪、死が待っているのだ。
しかし、今は、生きるか死ぬかという時。
その後の魔血や融合加工の素材のことなどを気にしている余裕は全く無かった。
城壁の上では、大きな箱状の兵器の横に毒の壺が次々と並べられていく。
そう、この大きな箱は無数の矢を放つことができる連弩。
箱の中に詰められた矢を、ガラポンのようなハンドルをまわすことによってマシンガンのように打ち出すことができる大型の連弩なのである。
確かにタカトのイメージした『
『
ちなみに、この世界ではこの連弩の事を連撃弩と呼んでいる。
その連撃弩の隊列の先頭でカルロスは檄を飛ばしていた。
「焦るな! よくよく引き付けよ!」
そして、ここぞとばかりに右手を振るのだ。
「今だ! 放て!」
その手に呼応するかのように一般兵たちは連撃弩のハンドルをおもいっきりぶん回す。
空に向けられた連撃弩の射出口から無数の矢が嵐の如く放たれた。
新兵たちは弾き出される空の弾倉に新しい矢を詰めていく。
息のあった掛け声と共に弾倉は連撃弩に装填され、また、ハンドルがグルリと回った。
そして、再び無数の矢が放たれ続けていくのであった。
空から次々と落ちていくコカコッコー。
それはまるで、蚊取り線香にあたった蚊のようでもある。
ハイ! ここで豆知識!
蚊取り線香にはピレスロイドという神経毒が含まれており、それが高温で揮発しガス状となって蚊を退治するんですよ。知ってましたぁ?
念のために言っておきますが、哺乳動物にとってこのピレスロイドは安全性が高い薬剤なんです。
まあ、確かに大量に吸うと嘔吐などが起こるようですが、まずは死にません。たぶん。
だって、ラット吸入実験の概略致死量から換算すると、約60kgの体重の人ならピレスロイドを60gを吸い込まないと死なない計算になるんです。どんだけやねん!
ちなみに「金鳥の渦巻」1巻は、長さ75cm、重さ13gですので……
あれを一巻き食っても大丈夫ってことに!
ま……まぁ、食ったら食ったで確実に別の意味でヤバいことになるとは思いますが……だから、本当に食べないように!
そして、現在繰り広げられております第六駐屯地攻防戦!
こちらの矢じりも神経毒にたっぷりと浸されております。
さすがにこの毒、蚊取り線香のように毒ガスにして散布することはできません……
だって、ここで使っている神経毒……当然、人間にも有効なので、魔物よりも先に死んじゃいます。テヘ♡
いまや城壁から打ち出される矢が、焼け焦げた煙たつ青い空に無数の波打つ線を描いていた。
その様子は、まるで太平洋戦争末期における神風特攻隊。
コカコッコーの体が右や左にとひね狂い、さながら零戦のようにを矢の嵐の中をかいくぐる。
そして、ついに血しぶきを吹き出すその体が激しい対空砲火を突き抜けると、まるで空母へ特攻するかのごとく、城壁上の一般兵めがけて次々と突っ込んでくるのであった。
降り注ぐコカコッコーの群れを忌々しそうに見つめるカルロス。
――やはり……こいつら……いつもの野良ではないか……
知能の低い魔物の群れは目の前に死の恐怖が訪れれば当然に生存本能に従って逃げ始めるのである。
そう、いくら数が多くとも、すぐに統制を失って逃げ帰るのが常なのだ。
それがどうだ……
これだけの毒矢を放ち次々と撃ち落としているのにもかかわらず、まるで死の恐怖を忘れたかのようにいまだ無数の矢の雨の中を突き進み、ひっきりなしに突っ込んでくるのである。
それは、もはや自分の命などいらぬ……
いや、生きて帰ることなど望んでいないかのように……
もうこれは、魔物の生存本能を凌駕する恐怖!
すなわち、逃げ帰ることが即、死であることを意味しているほかあり得ない。
「第二波が来るぞ!」
コカコッコーの群れに続くのはワイワイバーン!
その容姿はまさにトカゲの背に翼が生えた空魔である。
だが間違ってもワイバーンではない! ワイワイバーンである。
だから、その口から吐くのは炎ではなく雑音!
だが、ぞの雑音を甘く見てはいけない!
奴らがひとたび騒ぎ出せば鼓膜も破けるほどの超音波を発するのである。
「「「アギャァァァァァァ!」」」
「ちっ! やはり、指揮官クラスの神民魔人が来ているのか!」
そうこれは群れの中に自らが抱く恐怖すらもコントロールできる、すなわち知性を持った魔人がいることを意味していた。
魔人は魔物を指揮する。いや、指揮すると言うよりも恐怖で支配するのである。
魔人国において強いものこそが正義。
弱いものは強いものに食われるか、従うかのどちらかしかないのである。
城壁の上の守備兵たちは、打てども打てども突っ込んでくるコカコッコーとワイワイバーンたちにたじろいだ。
飛来してくる死の恐怖が次第に彼らの体を硬直させハンドルを回す手を冷たくしていく。
そしていつしか、矢嵐の勢いは落ちていた。
対空射撃が緩んだ間隙!
ここぞとばかりにコカコッコーとワイワイバーンが突っ込んでくる。
「ぎゃぁぁぁぁ」
「助けてくれぇぇぇ」
守備兵たちの悲鳴が重なり合う。
そう、城壁の上にたどり着いたコカコッコーの爪が守備兵たちを切り裂いていたのだ。
ワイワイバーンの衝撃波が守備兵たちの鎧を貫通し、その体を打ちくだく。
いまや鼠色だった城壁の石畳が兵士たちの悲鳴と共に赤く染まっていた。
だがそれでも、熟練の兵士たちは投石車の弦を引き絞り続けていた。
ここで投石を止めれば、草原にとどまっている巨大なガンタルトの足枷が外れてしまう。
しかし、そんな一人の熟練兵士の前に一つの影が舞い降りた。
「何⁉」
顔を上げた瞬間、熟練兵士の視界は赤く染まり左右テレコにずれていく。
そう、コカコッコーの鋭い爪が熟練兵の顔面ともども投石車を砕いていたのだ。
そして次の瞬間、引き絞られていた弦が大きな音を立てて弾けると、跳ね返った投石車がコカコッコーを巻き込みながら横に並ぶ投石車を次々となぎ倒していったのであった。
「開血解放!」
城壁の上に並んでいた神民兵が大きな声をあげる。
その姿が次々と黒き魔装騎兵となっていく。
そして、城壁の上にたどり着いたコカコッコーやワイワイバーンを次から次へと切り伏せ始めていた。
その剣速は鳥の羽ばたきよりも素早い。
コカコッコーやワイワイバーンは所詮は中型の魔物。
限界突破をした魔装騎兵の敵ではなかった。
そんな魔装騎兵が剣を振るたび魔血が辺り一面に飛び散っていくのであった。
だがしかし、数が多い……
飛来してくるコカコッコーやワイワイバーンの数に対して城壁を守る魔装騎兵の数は圧倒的に少なかったのである。
剣を振れども降れども次が来る!
魔物を切れども切れども埒があかない……
そう、矢嵐が収まった今、次から次へとコカコッコーとワイワイバーンが城壁の上に降りてくるのだ。
そんな物量戦に魔装騎兵の後方に位置していた一般兵たちの被害が大きくなっていた。
「グハッ!」
「アベシ!」
「ヒデブ!」
「おかぁちゃぁぁぁぁん! 会いたいよぉぉ!」
「アイナちゃぁぁぁぁん! 会いたいよぉぉ!」
「イレブンピーエムぅぅ! 見たいよぉぉぉ!」
悲鳴とも叫び声とも分からぬ声が城壁の上に広がっていく。
そんな叫び声の中で魔装騎兵たちが振る剣撃が、城壁の上でいくつもの赤い円を描いていた。
飛び散る魔血!
砕ける骨!
あたり一面には、切り落とされた肉片が無数に散らばっていた。
その中には、人の手や足らしきものも混ざっている。
どうやら守備兵たちも魔装騎兵の斬撃に巻き込まれていたようなのだ。
もしかして、魔装騎兵たちはコカコッコーもろとも守備兵たちをも切り刻んでいたのだろうか。
確かに今や城壁の上は混戦状態。
敵や味方を判断している余裕などありはしない。
いやいやいや……ここは第六駐屯地。
タカトたちが以前に訪れた第一駐屯地とは違うのだ。
第六の神民兵たちは騎士エメラルダに統率され、それなりに人命というものを尊重していた。
人を殺すことを何とも思わないジャックたち第一の神民兵とは性質を異にする。
だが、死肉となった
大きなくちばしに咥えられ、既に微動だにしないその頭。
鋭い爪に貫かれ、臓物をこぼすその体。
もう、そんなものにいちいち構っている余裕はさすがに無いのである。
そんな骸と共にコカコッコーの体を一刀両断!
すまぬ……と、心の中で謝りながら次々と切り伏せる。
ただただ心を殺し目の前の敵に向かって剣を振る……振り続ける。
それだけで彼らは精一杯だったのである。
それほどまでに凄惨な光景。
もうすでに言葉すらも出ない。
こんな状況に新兵たちの顔面はすでに崩壊していた。
泣いているのかおびえているのか分からない。
先ほどから穴という穴から鼻水と涙を飛び散らせながら叫び声をあげて懸命に走っているのである。
「はっぱふみふみ!」
まぁ、彼らが踏んでいるのは葉っぱではなく、ただの肉。
そんな新兵たちが魔装騎兵の刃をかいくぐり、負傷した兵士たちを後方へと引きずって下げていた。
だが、すでに引きずられていく体の中には下半身のみとなっているものも。
「きゃ!ぷりてぃとれた!」
そんな下半身から男の股間についたプリティーがちぎれて落ちていく……
だが、もはや落ちたプリティーを取りに戻る余裕すらないのである。
プリティーがなければプリプリプリちィーでいいじゃない!
そう、仮に生き残れればイッポンハゲ太が勤めるオカマバーで雇ってもらえばいいだけなのだ!
まぁ……仮に生き残れれば……の話であるが……
って、すでに上半身ありませんでした! テヘ♥
ということで、門外フィールドとりあえず終了!
やったぁぁぁぁ!
さっさとタカトのところに戻ろうっと♪
「ははは、お前も道具コンテストに出るのか!」
突然の声に、タカトは勢いよく背後を振り向いた。
そこにはいつの間にかコウスケが並んでいた。
だが、そのいで立ちは少々おかしい。
長い襟を立てた赤いマントで全身を包みこみ、頭にはなぜか卵のような白い着ぐるみをかぶっている……
しかも、その卵の真ん中に一つ目のように開いた空間がパクリと大きく口を広げているのだ。
そんな空間から、まるで目玉のようにコウスケのマヌケが顔が覗いていた。
これは! ま・さ・か! 水木しゲルショカつ亮公明? のコスプレ?
いやいや……これではどこぞの悪の組織の首領そのものである。
「なんで、お前がいるんだよ」
だが、タカトはそんなことにお構いなし。
明らかにうっとうしそうな目でコウスケを追い払おうと手を振った。
「も・もしかして!」
しかし、そんなタカトはようやくコウスケのコスプレを見て気づいたのだ。
「お前も、アイナちゃん狙いか!」
って、そっちか~い!
いやいや……タカトとしては、これはまさに屈辱的なシチュエーションだったのだ。
そう、今回のアイナちゃんの写真集はワンワンのコスプレをしている。
そんな写真集をお迎えするのに、こいつはコスプレまでしているのだ。
――で! できる! 奴はできる男だ!
こんな状況において、アイナちゃんの写真集はどちらの男のもとに行きたいと思うであろうか?
そんなことは自明の理!
――クソ! 俺としたことが……
というか、アイナちゃんの4等の当選口数は1万本。
コウスケが仮に当たったとしても、タカト君も十分に当たるだろう。
なんか……もうすでに4等は外れのような気がしてきたぞ。
「そんなもんいらん! 俺が狙うは一等! 『6名同室! 医療の国ボインのお宿 ビジョビジョ大宴会!ツアー』のペアチケットだ!」
6名同室なのに……なぜにペアチケット?
というか、このエロエロタイトルはなんですか!
まるでピンク映画界の巨匠、加藤義●さんの作品のようではないですか!
そう……この数日まえ……
コウスケはこのガラポンの福引券を手に入れようと、第六の門前にあるケーキ屋さん「ムッシュウ・ムラムラ」でスグル先生と二人、女性客に混じってケーキをムシャムシャと貪り食っていたのであった。
「コウスケ……お前、何個食った?」
「今……5個目です……スグル先生は?」
「ゲプっ……俺は、何とか6個クリアーだ……」
「先生……10個食べないと福引券もらえないらしいですよ……」
「そうか……ならば奥の手だ!」
わずかに腰を浮かすスグルのケツから音がした。
プスゥ~
「よし! これで1個分は隙間ができたぞ!」
「クサぁぁァァ! ちょ! 先生! 何食べたんですか! めっちゃ臭いですよ!」
「いやぁ、昨日、ちょっとニューヨークのお宿で熟女とビジョビジョ大宴会、もといオットセイの洗身サービスを受けちゃってさ」
「洗身サービスって……ヨークさんと行くんじゃなかったんですか?」
「馬鹿か! なんで筋肉ビキビキ男なんかと一緒に」
「ところで先生! その熟女ってボインんなんですか?」
「ボイン? まぁ、確かにでかい……というか、長い……そうだな、首に巻けるぐらい長いかな」
「なんですか……それは? もしかして……妖怪ですか?」
「ああ! ある意味、妖怪だな! そのテクニック、特にお尻コチョコチョは絶品だぞ。しかもそのあと一緒に踊ったトリプル・ルッツルツル! 何度も精魂を抜かれてしまったよwww」
「いいなぁ……先生……」
「そんな抜かれた毛根を回復しようと思ってな、ニンニクの塊を10個ほど丸かじりしたんだわ。ワハハハハ」
「ニンニク10個って……」
「ニンニクなら10個は余裕で食えたんだけど、ケーキは結構きついな……」
「もう、先生の屁のせいで、このチ●コケーキが別のモノに見えてきましたよ……」
「しかし、女たちはどうして平気でこんなチ●コクリームをいくらでも食えるんだろうな? もう俺なんか変な匂いが鼻について……無理……」
「先生、知らないんですか? 女性には別腹ってのがあるんですよ」
「あいつらはウシか! 確かに牛なら胃は4つあるもんな!」
「先生……今、世の女性たちを確実に敵に回しましたよ……」
パステル色のお店の中にうんこ色の暑苦しいのが二人……完全に場違いで浮いていた。
――なんだ……アイナちゃんの写真集ねらいじゃないのか。
ほっと胸をなでおろすタカトをよそに、コウスケはビン子の手を強く握りしめていた。
「ビン子さん! 1等が当たったあかつきには、是非ご一緒に医療の国へ参りませんか!」
だが、ビン子はうっとうしそう。
よほど汗ばむコウスケの手を放したいのだろうか、なにか気をそらす話題はないかと懸命に頭をひねり始めていた。
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