第17話 遺跡の目覚め

遺跡の奥深く、探査チームと人魚たちが進む先には、青緑の光で満たされた広大な空間が広がっていた。その中心には、これまでとは比べ物にならないほど巨大で複雑な球体が浮かんでいる。その表面は無数の幾何学模様に覆われ、それが脈打つように光り輝いていた。


アヤが息を呑むようにして呟いた。


「これが……遺跡の中枢?」


「これまで見てきた球体とは明らかに違う。おそらく、遺跡全体を制御する核だろう。」


村上がモニターを睨みながら分析を進める。


「だが、警戒は怠るな。」


高橋が周囲を見渡しながら、探査艇の動きを慎重に指示した。


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カイたち人魚も遺跡の異変を感じ取り、光を放ちながら空間の中で静かに動き回っていた。セイラが低い音を響かせ、カイに語りかける。


「遺跡は目覚めつつある。この核が全ての鍵を握っている。」


カイは探査艇を見つめながら頷いた。


「だが、その鍵をどう使うかは我々次第だ。」


その時、遺跡全体が低い振動音を響かせ、球体の輝きがさらに増した。それに反応するように、探査艇の通信装置に不明な音波が伝わり、村上が慌てて解析を始める。


「音波に規則性があります……これ、翻訳プログラムが反応しています!」


画面に次々と文字が浮かび上がる。


「『生命の調和は試される。選択せよ。』」


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その言葉に、船内は静まり返った。アヤが口を開く。


「遺跡は何かを選ばせようとしている……私たちに?」


高橋が鋭い目つきで球体を見つめる。


「だが、選択とは一体何を意味する?」


通信が安定し、篠原教授の声が届いた。


「選択とは、おそらく遺跡が未来の運命を定めるための試験のようなものだ。人間と人魚、それぞれが力を合わせ、調和を示すことが求められているのだろう。」


アヤは教授の言葉を聞き、真剣な表情で頷いた。


「遺跡が求めているのは、単なる技術や知識じゃない。私たちが共に未来を築く覚悟を示すことだと思います。」


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その時、球体が一際強い光を放ち、遺跡全体が共鳴するように震えた。そして、空間の壁面に映像が現れた。それはかつて遺跡が建造された時代の記録だった。人間と人魚が共にこの遺跡を建造し、未来の危機を回避するために協力した様子が映し出されている。


だが、次の瞬間、映像は一変する。人間と人魚が対立し、遺跡の力を奪い合おうとする姿が映し出された。その結果、遺跡は眠りにつき、両者の共存は途絶えたことが示される。


村上が声を潜めて呟く。


「これは……過去の失敗を繰り返すなっていう警告か。」


---


カイは映像をじっと見つめ、アヤの方へ視線を向けた。低い音で静かに言葉を紡ぐ。


「過去を知ることは未来を選ぶ第一歩だ。」


アヤもカイを見つめ返し、力強く頷いた。


「その未来を選ぶために、遺跡が私たちをここまで導いたんですね。」


遺跡の光が再び強まり、球体が次の指示を示すように光と音を繰り返した。探査艇と人魚たちは、共にその先に進む覚悟を固めた。

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