第93話 秘密の会談
……一体、何故こうなった?
俺は直ちに新たなスイーツを作りたいというのに。
「どうですかな? リオン殿下?」
「うむ、流石は我が国に二つしかない公爵家の家だ。快適で広々としたお風呂場を持っているな」
「お褒めに預かり光栄ですな」
そう言い、ダンディなおじさんが微笑む。
……だから! 何がどうなってるんだァァァァ!?
どうして、俺がゼノス殿と風呂に入ってる!
「頭を抱えて……どうかなさいましたか?」
「い、いや、少し状況が読み込めなくてな」
恐る恐る屋敷に案内され、何をされるのかと思ったらいきなり風呂である。
なんのフラグかもわからないから、対処のしようがない。
「これは失礼いたしました。殿下とは一度、じっくり話をしたいと思っていたのです」
「ほ、ほう?」
「まずは改めて……私の罪を不問になさったこと感謝いたします」
「ふんっ、何のことだか知らんが……」
「おっと、そうでしたな……話は、貴方様の偽りの姿についてです。多少不敬に値すると思いますが、お許しください」
どうやら俺を罰するために設けたわけではなさそうだ。
おそらく、余人に聞かせにくい内容か。
しかし状況……もしや、ゼノス殿は何かに気づいている?
「何のことかわからんな」
「あくまでも、そのスタンスを取ると……ではここからは独り言を……まずはリオン殿下はあえて嫌われることで王位争いを避けてきたのはないかと」
「ふっ、俺がそんな殊勝な人間に見えるか? 単純に王位などに興味がないだけだ」
「いや、以前の貴方は王位を目指していたはず……まあ、いいでしょう」
「………」
やはり、元リオンからの変わり様は違和感を覚えるか。
しかし、これに関しては説明しても無駄だろう。
現時点で王位に興味はないし、争いを避けたいのは事実ではあるが。
「では本題に入ります。貴方が敢えて皆に嫌われるように立ち回っていたとしても……あまりに広範囲に悪感情を抱かれておりませんか?」
「なるほど……何故、そう思ったのだ?」
「まず疑問に思ったのが自分自身について。以前の私は何故か、必要以上に貴方様を警戒しておりました。しかし、今はそういう気持ちが無いのです。無論、リオン殿下の真意やセシリアの話を聞いたからということもありますが」
「ふむ……それで?」
「最初は自分が目が曇っていたことに対する言い訳だと思っておりました。ですが、気になったので色々と調べてみたのです……すると、リオン殿下と関わりのない人々がリオン殿下を悪く言っていたのです」
流石は我が国切っての剣客にして宰相でもある男だ。
俺という存在の違和感に気づいたらしい。
というより、俺が予測していたことと同じ考えに至ったか。
「そうか……罰していないだろうな?」
「ええ、リオン殿下が望まれてるとは思わなかったので。しかし、その時に思ったことがございます。私は不敬だなと思ったのですが……私の周りにいる者達は『リオン殿下だし仕方ない』と言ったのです」
「なら良い。話を続けるが、それでお主は違和感を覚えたと」
「そうなります。そのことに皆が疑問を持っておりませんでした……何より以前の私も。故に、何か恐ろしい魔術にでもかかっていたのではないかと」
さて、どうする?
何せ、俺自身もよくわかっていない。
ただ魔王になる俺が、世界に嫌われるようになっているという予測は立ってる。
問題は、それをゼノス殿に伝えて良いかだ。
いや、そんなことを伝えても意味がわかるまい……ならば話に合わせるか。
「実はそうなのだ。何者かが古の魔術を使い、認識をずらしているらしい」
「なっ……!? やはりそうだったのですか!」
「静かにしてくれ——何処で誰が聞いてるかもわからない」
「はっ……これは失礼いたしました。して、その犯人は? まさか、王太子派閥の者が?」
確かに王太子派閥の中には俺を邪魔だと思ってる者達はいるだろう。
しかし、そことは関わり合う気はない。
そんなことしたら、また色々疑われるし。
そもそも、そんな暇があったらスイーツ作るわ。
「いや、それはないと言っておこう。厳密に言えば犯人を捕まえるのは難しいし、お主も探すのはやめておけ。俺は国を乱すことを望んでいない」
「王太子派閥ではないが、国を割ることになるということですか……しかし」
「お主が俺に恩を感じてるというなら頼む」
俺が一番恐れてるのは周りが勝手に動くことだ。
そうなると状況が自分でコントロール出来なくなる。
何より、クソめんどくさい。
「……わかりました」
「助かる。その代わり、俺は俺で考えがある……悪評を上回る好評を得られれば良い」
「それによって対抗すると……もしやスイーツとは?」
「察しが良くて助かる。そう、そのためにはスイーツ革命を起こすのだ」
「なるほど、そうすれば平和的に解決できると……」
「そういうことだ。セシリアから聞いたが、お主には引き続き資金面や流通面を頼みたい。俺はいずれは店を持って、それを国中に広げて行くのだ」
「ええ、それくらいはお安い御用です」
よし、セシリアから話には聞いていたが確約をもらった。
これで俺の破滅回避とスイーツ革命に一歩近づいた。
出来るだけ政治に関わることはしなければ、どうにかなるだろう。
「くくく、言質はとったぞ」
「ええ、構いません……それより」
「ん? なんだ?」
「セシリアと手を繋いでいたことについてお聞きしたいですな」
その目は笑ってなく、先程までの敬うような態度はない。
どうやら見られていたらしい。
……やはり、俺はここで死ぬかもしれない。
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