第88話 協力プレイ

まずは前提を整理しよう。


ココンドラ、それはダチョウのような姿に龍の首を持つ魔獣。


果たして鳥なのか竜なのか、それとも竜自体が鳥種なのかはわからない。


ただ一つ共通点は、卵を産むということ。


「まあ、奴が鳥なのか竜はこれから分かる」


「何をぶつぶつ言ってるのよ? というか……あの、手が」


「おっと、すまない。さあ、ここがゲートだな」


セシリアの手を離し、ゲートの前に立つ。

ここからは油断は出来ない。

飼育員の話では、ココンドラは凶暴な魔獣らしい。

普段は部隊を組んで卵を取りに行くとか。


「別に離さなくても……」


「セシリア、気合い入れろよ」


「わ、わかってるわ。というか、私達だけでいくの?」


「奴らは警戒心も強いらしく、集団でいくと敵対心を持たれやすいとか。今回は戦いに行くわけではないのでな」


「そ、そう……」


「安心しろ、セシリアは俺が守る」


セシリアに何かあったら、俺が親父さんに殺される。

まさしく、破滅ルート一直線ってやつだ。

そもそも、パトロンになる家の娘だし……大事な幼馴染だしな。


「……へぁ?」


「ん? どうした?」


「べ、別に! それに、私は守られるような弱い女じゃないわ!」


「……ククク、そうだったな。では、頼りにさせてもらおう」


「ええ、任せなさい」


そして準備ができたのか、ゲートがゆっくりと開く。

後ろでレバー操作をするゴルバに見送られ、俺達は放牧場の中に入る。

そこは見渡す限りの草原で、遮蔽物などが見当たらない。


「これは隠れる場所が少ないな」


「確かココンドラって、めちゃくちゃ走り回るのよね? それこそ、走り出したら止まらないって聞いたことあるわ」


「なるほど、怪我をしないように遮蔽物を取り除いているのか。とりあえず、こちらからも見つけやすそうなのは助かる」


そして二人で草原を歩くこと数分で、ココンドラらしきシルエットを発見する。

大きさはおそらく、三メートル近くあるだろう。

俺たちは慌てて、その場にしゃがみこむ。


「しまった、そういえば奴らは目も良いのか。まずは近づいて、群れの様子や卵の確認などをしたかったが」


「多分、これ以上近づいたらバレるわね」


「うむ、どうしたものか」


「ふふふ、私を誰だと思ってるのよ?」


「ふっ、そうだったな。では、セシリアの手腕を見せてもらおう」


「ええ——土よ」


数メートル手前に、土の壁が音もなく現れる。

一メートルほどで、屈めば人が隠れるくらいの幅と大きさだ。


「素晴らしい魔力コントロールだ」


「ふふ、当たり前じゃない」


「よし、ここからは臨機応変に行くぞ」


俺達は地を這うように土壁に移動する。

そこから再びセシリアが土壁を作り、慎重に壁から壁へ移動していく。

そしてようやく、遠目からココンドラの姿を確認する。


「……思ったよりでかいな」


「三メートルを軽く超えてるわね」


「群れの数は10頭くらいか。ならば、巣があるはず」


ダチョウの視力や耳は人よりも優れているが、ここはファンタジーの世界。

俺は魔力を目に集中して、瞬間的に奴らの視力を上回る。


「……見えた、藁の上に卵がある」


「それでどうするの? 単純に取りに行ったんじゃ、集団に襲われるわ」


「ふっ、ここからは俺の仕事だな。セシリアはここで待っててくれ」


用意するのは特製の氷魔法。

決して奴らを傷つけないように……効かなかったらどうしよう?


「すごい汗だけど?」


「き、気のせいだ」


ええい! 今更引けるか!

俺は覚悟を決めて、土壁から飛び出して一気に距離を詰める。

当然、奴らはすぐに気づいて臨戦態勢に入った。


「クルルー!」


「クルァ!」


そして物凄いスピードで、こちらに向かってくる。

だが、時すでに遅し……最早、この距離は俺の射程圏内だ。


「降り注げ氷の粒——スノーホワイト」


「キュア!?」


「クルルー!?」


降り注ぐ雪に、ココンドラ達が戸惑いを見せる。


そして、ゆっくりと動きが鈍くなっていく。


俺のもとに来る頃には、静かに草むらに横たわるのだった。

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