第6話 未来の私
今、テロ組織の建物の前にいる。
警備が手薄な時間がわからないかな。
私がそう言うと、屈子がフィルムを取り出した。
「これを鏡に何枚も貼れば、ちょっとだけ先の未来も見られるんじゃ。」
一瞬、私はできるんじゃって思ったが、よく考えてみると、できるかどうか疑問があった。
私から見て、この未来の世界のさらに先を知ることはできるのだろうか。」
それを聞いた、未来の屈子がこう言った。
「本来、ここからさらに未来を見ると鏡は壊れてしまうけど、ちょっと先の未来ぐらいなら見られるかもしれない。」
屈子はフィルム、正確には低反射フィルムを鏡に何枚か貼った。
「どうやって進んでいる時間を調べようか。」
屈子が迷っていると、ちょうどギリギリ目視できる場所に、時計の看板がある建物があった。
「あれを見ればいいんじゃ。」
鏡で反射させて、その時計を見てみると、1時間進んだ世界だということが分かった。
そして、テロ組織の建物を見てみると、ちょうど警備が手薄な時間であった。
「じゃあ。1時間待とう。」
1時間。
1時間あれば、未来の屈子にこの世界の情勢の事や、未来の私の事ももっとたくさん聞くことができるだろう。
しかし、それを聞くのは怖かった。
3人は何もしゃべらずに、周りを警戒しながら、建物を様子をうかがっていた。
1時間経ったであろうか、門の前の警備が手薄になった。
周りを気にしながら、門の前に行くと何やら番号の付いたパネルのあるドアがあった。
当然ながら、簡単に入れるわけではないことは知っていた。
「こういうのは得意なのよ。」
未来の屈子がスマホを取り出し、パネルと通信のようなものをしながら、操作する。
「カチッ」
1分ほどで、ドアのロックが外れた。
私は、屈子が知恵の輪が得意だったことを思い出した。まさか未来ではこんなことができるようになるとは。
そして、私たちは建物内部へ入っていった。
未来の屈子はセキュリティーのスペシャリストだったようで、
建物の防犯セキュリティーをかいくぐって、建物深部まで入っていった。
「誰だ!」
後ろから、おそらく敵であろうと思われる人物が叫んできた。
「きゃっ」
そして、複数の敵が集まってきて、捕らえられてしまった。
……
……
気がついたら、私たちは牢にいた。
よく考えれば、いかにセキュリティーのスペシャリストだとしても、
さらに2人を連れていては、潜入も難しかろうと思った。
初めから計画に無理があったのだ。
「だれ?」
牢の奥から誰か話しかけてきた。
近づいてみると、それは私が鏡で見たときの顔、つまり未来の私だった。
まあ、私が見たのは5年後のだけど。
「あなたが過去の私? それと過去の屈子。」
「来てくれたのね。」
「でも、ここには何も無さそうよ。」
本当に何もないのかと周りをキョロキョロと窺ってみたが、薄暗くてあまり細かく見ることができなかった。
周囲はよくは見えないけど、おおよそ10年後の未来の牢とは思えず、周りは石壁に覆われ、
鉄格子のようなものが付いていた。
その様子を屈子が見て、鏡を見せてきた。
どうやら鏡は取られなかったようだ。
私も服の中に隠したままだった。
「こういうときにも使えるでしょう。外の月明かりを壁に反射させていろいろと調べてみよう。」
私たちは鏡を反射させて、念入りに壁や床を調べてみた。
「う~ん、なにもないなぁ。」
私は諦めかけていた。
その時、屈子が叫んだ。
「なんだこれ……」
壁に細長く出っ張った箇所があった。
縦1cm、横90cmぐらいだろうか。
「なにかのボタンかな。」
そういうと、未来の屈子のそれを押してみた。
ぐい。ぐい。
……
しかし何も起こらなかった。
「長いし、均一に押さないとダメなのかも。」
「じゃあ。押そう。」
未来の私と未来の屈子が真ん中を押し、両端を私と屈子が押した。
「よいしょ。」
……
しかし、何も起きなかった。
「ふぅ。ダメかぁ。」
そう諦めかけていた瞬間。
ぼろっと、ボタンらしきものが落ちた。
「ボタンじゃなくて、ただの棒だったか。」
私たちは落胆して、再び周りを調べ始めた。
鉄格子の外を見ると、牢の中と違って、もっと未来的であった。
いや、未来的と言うか、無機質と言うべきか。
目をもう少し奥にやると、なにやらパネルのようなものが見えた。
テンキーのように数値が表示されており、見た感じタッチパネルじゃないかと
連想できた。
私は無意識に手を伸ばして、パネルを触ろうとしたけど、届かなかった。
当たり前である。普通に考えれば届くわけない。
未来の屈子が、さっき見つけた長い棒を差し出す。
「これで押しましょう。」
パネルを見た感じ、3桁の数字を入力するようだ。
あと、右下に小さく3と表示されてした。
棒を手に取って、適当に数字を押してみる。
ポチ、ポチ、ポチ。
……
とくに何も起こらず、入力された数字がクリアされた。
しかし、パネルが静電式じゃなくてよかった。もしそうなら指などでしか反応しない。
ポチ、ポチ、ポチ。
……
やはり何も起こらず、また入力された数字がクリアされた。
「あ~!」
屈子が叫んだ。
「右下の数字が、3から1になっている!」
確かに数字が変わっている。
「ひょっとして、あと1回間違えたら、ロックされて入力できない気がするわ。」
「私としたことがそれに気がつかないなんて。」
未来の屈子が頭を抱えた。
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