【2】「足の裏が痛い」
森へ入って、一時間くらいが経った。
意気込んで、逃げて来たのはいいけど、
体力が全然もたない。
「少し……休憩ぃ…はぁ…はぁ…」
ドスンと地べたに、尻もちを着いて座り込む。
視界の下では、丸々と肥えた俺の腹が、
大きく上下に動いている。
こんなに走ったのは、小学校の運動会以来だ。
何でこんなに、しんどい思いをしているんだ?
なんだか、腹が立って来たぞ。
「とは言え、こちとら命かかってんだ、
プンスカしても仕方がない」
命が掛かってると言えば……
この状況。これは、これで、よく無い気がするぞ、
いつまで逃げるか、全く計画性が無いのもそうだけど、
飯とか寝床とかどうしようか……
俺は取り敢えず、リュックをひっくり返して、
使えるものが無いものかと、考え始めた。
筆記用具、充電の切れたスマホ、タオル、
制汗スプレー、ラノベ一冊、空の水筒、ロープ。
このラインナップは、微妙だな。
あんまり、上手い活用法が思い浮かばない。
こんな事なら、サバイバル系の漫画とか読んでおくんだった。
あとは、勇者の短剣か……
この短剣は切った物を、
正確に半分にするって、そういうアイテムみたいだけど、
使い所が難しいんだよな。
その時、ザザっと、何かが、草むらで動く音を聞こえた。
恐怖心を煽られた俺は、そそくさとその場を離れた。
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もう何時間歩いたかわからない。
足の裏が、潰れそうな程痛い。
なんで、どこよりも先に足の裏が痛くなるんだ?
めっちゃデブじゃないか。
デブが痛む場所、ナンバーワンじゃないか。
誰だよ!!俺をこんなデブにしたのは!!
「そりゃ……俺か」
そんな時。
視界の端に、黒い何かが見えた。
無視できない、異様な何かだ。
それは、細い木々を薙ぎ倒して、
べったりと横たわっている。
なぜか、その周りの草木は、茶色く
植物の
黒豹のような生き物かもしれない。
それか、モンスターの類か。
そう思った俺は、短剣を手に取った。
心拍数が上がり、口がえらく乾く。
ゆっくり、それに近付くと…それが人であると分かった。
黒い服を着ているだけの人間だ。
「……うっわ!グロいな……死んでるのか?」
黒い服の人は、うつ伏せのまま、ぐったりと倒れている。
その体は傷だらけで、
足の関節も、あらぬ方向へ折れ曲がっている。
だが……おやおや?
よく見れば…なかなか、グラマラスなレディじゃないか?
「……少しだけ…これは確認だからね」
俺は、プリンと上向きになっている
形の良いお尻に指を立てて、
ツンツンと、その弾力を確かめてみる。
うん、しっかりと柔らかい、そして温かい。
「驚いた。この人まだ生きてるぞ」
行き倒れ……というよりも、
何かに襲われた。と考えるのが正しいか。
取り敢えず…そうだな…仰向け……うん。
仰向けにする必要があるな!!
体の状態を見ないと、いけないからな!!
……いや、別に他意はないんだ。
うん。
「ご
そうして拝んだ、その人の顔は…
ビックリするくらい整っていた。
いや……整っている。なんてもんじゃないぞ、
めっちゃ美人じゃないか!!!
ただ…その綺麗な顔には、
大きくて深い切り傷が走っている。
元は、その顔を隠していたと思われる、
黒い布ごとバッサリだ。
この傷が、人に付けられたものなら、
相当な恨みを買っているとしか思えない。
さて……どうしようかな、これ。
この人が、誰かに狙われているなら、
強いシンパシーを感じるけど、
それは、あまり相性が良い事とは言えない。
しかし、見捨てるのは気が引ける……そして何よりも。
「良い女を見捨てるのは、
俺は、女性を抱きかかえて、
なんとか、かんとか背負う格好にして移動を再開した。
黒い服の女は、なんだか良い匂いがした。
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そこから、
更に森の奥へ進むと、俺に奇跡が訪れた。
それは、岩壁に面して建てられた、
古い煉瓦造りの家だった。
人の手が加えられなくなって、
相当、長い時間が経ったと見える。
その周囲には、背の高い草木が茂っていて、
近づく事も難しい状態だけど、
今の俺には、高級ホテルみたいに思えた。
俺は、ここぞとばかりに、勇者の短剣を使って、
草木をかき分けて中に入る。
薄暗くて、中の様子はわからない。
奥を見ると、白い生地が被せられたベットがある。
俺は、俺の汗でビショビショになった美女を、
背中から降ろして、その朽ちかけたベッドに寝かせた。
「あぁ〜まじで…足の裏がいてぇ……」
情けないその言葉を最後に、
俺は気を失うように床に倒れ込み、
そのまま眠りについた。
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