第27話 化け物かっ!?いいえ兵器です

「拳秀さん!…秀世ちゃんが心配だ。先に行きます!」


八王子の渋滞は酷く、俺は車を飛び出した。


拳秀「ああ、秀世を頼む。念の為君の携帯に秀世のGPS信号を転送しておく」

「はい!」


バタバタ飛び出していく俺を見ながら、拳秀さんは思ったそうだ。


「(まあ…優くんを目の前にすれば、いくら秀世の頭に血が登っていてもいきなりハルマゲドンをぶっ放したりはしないだろうからな。…優くん、君はいい奴だな。母様の思惑もあながち間違ってはいないのかもな)」



「秀世ちゃん、無事か…あ…あれ」


西東京仁○○館の道場では、秀世ちゃんと仁野と思われる男が対峙している。

相変わらず涼し気なくせにやたらと扇情的な秀世ちゃんに対していきり立っている大男。


ただ…道場の四方の壁沿いにピクリとも動かない屍の山があちこち。


秀世「あとは…あなただけみたいですね」

仁野「てめ…てめえ!」


…こいつらまさか…秀世ちゃんの達人級の八卦掌に…全員無策で飛び込んでいったのか?

…バカじゃないのか!?


仁野「聞いてないぞ!桂木の女がこんなに化け物だなんて」

秀世「…化け物だなんて酷いですわ」


…うん、この子は変身機能付き人型最終兵器。

今のうちに引いたほうが…


仁野「だいたい桂木の女は、八木さんが薬で墜としたはずじゃ…」

「…なんだって!?」


仁野「!」

秀世「…ゆ…優さま」


「…その話…詳しく教えて貰おうか」


秀世ちゃんが息を飲む気配が伝わってきたけど…もう気にする余裕はなかった。


仁野「桂木!!…ここで会ったが百年目だ!てめえを殺して今までの鬱憤を晴らす!」

「へ〜え」


今の俺に…そんなこと言っちゃうんだ…


仁野「…うっ!」

秀世「ゆ…優さまっ、さ…殺人は駄目です!」


いい度胸だ…殺して…


仁野「ま…まずはこの女を人質にして…」

秀世「…!!」


…あ…それは下策だと…


一瞬、虚を突かれたような秀世ちゃんと仁野が重なるように見えた直後


秀世「…返天地天地返し!」


ドカン!!


突き破るんじゃないかという勢いで天井に激突した仁野の体が、ゆっくりと落ちてきた。



「だ…大丈夫か!?秀世ちゃん!」

秀世「…は…はい、なんとも…き、きゃあああっ!」

「ど…どうし…うわあああっ!」


仁野のバカ、投げを打たれる瞬間に秀世ちゃんの制服を掴んだみたいで…無惨に制服の破れた秀世ちゃんの上半身…いや、ブラまでズレて可愛い乳首が…


秀世「…見ないで見ないで見ないで〜」

「見ないから見ないから絶対見ないからあ〜」


拳秀「…ほ〜う?必死に飛び出していったと思ったら…こういうことか。鬼畜だな優くん」


いつの間にか後ろに出現した拳秀さんがジト目を向けてくる…あんた絶対、最初から見てるでしょうが!!


「違います!違いますから!!拳秀さん〜」



美幸の彼氏だと聞いていた八木やぎ 陽斗はるとと仁野は繋がっていた。

仁野が秀世ちゃんに使用した薬品は八木が用意したものだった。


美幸の身に何かが起こっている…そんな不安が頭をよぎるのだった。


―おまけ…優のアパートにて


さて…明美ちゃんです。


明美「優さん、ご…ごめんなさい」

「…」


明後日の方向に走っていた明美ちゃん…結局山の中に迷い込んだ彼女に付き合った我がCB400SBは…敢え無く崖底へ…


「…(涙)」


拳秀「…ゆ…優くん、大丈夫だ。バイクは劉家で責任持って新車で返す」


「い…いや…明美ちゃん…無事で良かった…それだけが不幸中幸いだよ…」


秀世「…」

拳秀「…」


明美「な…な…何よ〜。怒ってんなら怒ってるってそう言いなさいよ!男のくせに…泣きそうな顔してるんじゃないわよ!!言いたいことがあるなら…いくらでも聞くわよ…」


三里亜「へえ〜、そうなんだ〜」

明美「…んなぁっ!?」


いつの間にか…後ろで聞き耳を立てていた我が三里亜が…悪魔の微笑みを携えながら参戦してきた。


三里亜「それは是非、明美お姉さんには身体で償って貰わないとね〜」

明美「…」


「…み…三里亜…前々から思ってたんだけど…お前、ヨーロッパで一体何を…」

三里亜「シャラップ、うるさいです。童貞には美少女と会話する権利はありません!」

「…」


そ…そんなこと言われたら…世の若い男性大半が…


三里亜「そもそもお兄の好みって、あたしや幸姉じゃないよね。秀世姉さんや明美姉さんだよね」

「な…何を根拠に…」


三里亜「だってお兄…重度のマザコンじゃん。隠しているつもりかもしれないけどバレバレだよ…この貧乳フェチ! 沙織か〜さんも苦笑いしてるから」

「ぐふああああ〜」


あまりのクリティカルヒットに俺はその後の記憶がない。


三里亜「…この際だから、明美姉さんにお兄の童貞を託すわ。明美姉さんどうせ男と付き合う気ないんでしょ?こだわりは無いわよね?」

明美「…くっ…し…仕方がっ!」


秀世「ま…待ちなさい!…従者の失責は主人の責任…そういうことならば私が優さまの初めてをっ…」

明美「秀世さまっ!?いけません!!」


三里亜「さ〜て、明美姉さん。ど〜するのかなあ」


気絶している主人公を尻目に実妹三里亜の悪魔の扇動は続くのだった…


さあ、明美ちゃんの処女の行方はっ!?








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