第7話

菊池真凜は既に夜中だと言うのに、台所でアーモンドクッキーを焼いていた。生地を型で抜きながら、渡す時の事を想像するともうドキドキしてしまう。

貰ってくれるかな……

貰ってくれるよね。明日は誕生日だし。

プレゼントは迷わずにスポーツタオルに決めていた。

毎日遅くまで劇団の演技稽古してるし

手紙も添えて……

オーブンからアーモンドの香ばしい香りが漂って来た。

真凜はオーブンを開けた。


翌日の放課後、矢野は真凜に楡の木の下に呼び出された。

森越学園には大きな楡の木がある。

生徒達はその下で愛を語り、夢を語り、待ち合わせをして来た。

「矢野君、誕生日おめでとう。これ受け取って欲しいの」

真凜は胸が倍速で動くのを感じていた。

「ありがとう」

矢野はペールブルーの紙袋を受け取った。

中を開けると、スポーツタオルに、クッキーの透明なセロファンの袋、手紙が入っていた。

「食べてもいい?」

真凜は赤くなって頷いた。

矢野は早速アーモンドクッキーを食べた。

「ありがとう。一番好きなクッキーなんだ。美味しいよ」

「嬉しい……!」

真凜は頰を紅潮させている。

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