第3話

絵里香は腰までのロングヘアーがトレードマークである。

メイク担当の女性に綺麗にメイクされ、髪はツヤツヤで最先端の流行のワンピースを着ているのに、絵里香の機嫌は悪かった。

今日の仕事は、雨ラックスというお笑いクイズ番組である。絵里香が番組に出て、回答した所その馬鹿ぶりがお茶の間に受けて、レギュラー出演になったのである。

雨ラックスはゴールデン枠の時間に放送されているので、絵里香の人気は飛躍的に上がった。

「まともな解答はしないで下さいね。あなたの馬鹿ぶりが人気なんですから」

絵里香はスタンバイ待ちの為、控室に座っていた。

「南青山のミコ・ブルーのラズベリーチーズケーキが食べたい。今すぐに買ってきて」

既に夜の7時前である。そのチーズケーキは大人気で午前中で品切れになってしまうものである。

「じゃあなきゃ、私、帰るから。私が帰ったら困るんじゃない?」

絵里香は挑むような目で、伊庭を見ている。

だが、伊庭は平然としてソファーに座ってい

た。

「聞こえないの?」

「ケーキは明日用意します。今日はもうすぐ出番ですから」

絵里香は伊庭を睨みつけた。

「私は今すぐって言ったの!」

絵里香は苛々して声を上げた。

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