第9話 ウチの学校の風紀委員がこんなに可愛いはずがない
「風紀委員の桜島です。まもなく朝礼が始まるので速やかに教室に移動してください!」
徐々に生徒が押し寄せ収集がつかなくなる中、凛とした女性の声が響きざわつきが静まる。
「もしも何らかの理由で留まる場合は私の責任のもと一人一人に事情を聞きに伺いますのでその覚悟でお願いします」
たくさんの視線が集まるがまる中そんなものもお構いなしといった様子で、腕を組みながら堂々と生徒を見渡す。
するとそれぞれが顔を見合わせ徐々に会話が戻り賑やかな状況に戻ったが、ゆっくりと教室に人が流れ始める。
「さすがだよね、俺にはあんなこと出来ないよ」
「そんな事言って見つかったらまた怒られるぞわれるぞ?こんな騒ぎが起こっているのに生徒会長がなに呑気に眺めてるんだって」
「そのときはまた彼女に謝り倒すよ。それに適材適所さ、俺が同じことをした所で一人騒いでる変なのが生まれるだけさ」
「それでいいのか生徒会長?」
「そんなのを選んでしまった君らの責任だよ生徒諸君?」
「あの、甘木さんってそもそもなんで生徒会長をやってるんですか?少しお話を聞いてただけなんだけど、イメージと違うってゆうか・・・」
まだ距離感が掴みずらいようでおずおずと質問する。
さわやかな笑みを浮かべながら彼は答える。
「同級生なんだし呼び捨てでいいよ。いい質問だね、俺も生徒会長なんて実はあんまりやりたく無いんだよ。先生たちからは面倒くさい事を押し付けられるし、詰らない事務手続きもやらなきゃいけない、それに同級生や後輩に嫌なことを言わなきゃいけないこともあるしね」
「じゃあなんでまた?」
「それはね・・・」
「会長?生徒を誘導しないだけならまだしも、なんでこんな所で呑気におしゃべりなんかしてるんですか」
もはや怒りを通り越し呆れてため息をつきながらいつの間にか桜島が来ていた。
軽口をたたき合っているうちに徐々に生徒が教室の方に流れて行き周りがだいぶ開けてきていて、それで見つかったのだろう。
「やあ京ちゃんおはよう。今日も仕事熱心でいいねぇ」
「私の仕事に関心する前に会長も手伝ってよ!なんでこんな騒ぎの場所にいて何にもしないでただつっ立てるの」
「それはほら適材適所さ」
「会長なんて役職どこでも適職よ、まったくどうしてこんなのが生徒会長なんかに」
「ホントだよね」
「ならさっさと自覚をもって行動しなさい!」
キー!と声を荒げながら甘木に説教しているが、当の本人はどこ吹く風といった様子でまるで真面目にとりあっている様子が無い。
「それよりほらそろそろ教室に戻ろう。もうすぐ朝礼がはじまるし」
スマートホンで時刻を見せると「はぁ」とため息をつきいた。
「そうね、私たちも急いで教室に戻りましょう。おはよう林也君そこの子は?」
「転校生だよ僕の幼馴染の」
「なら急いで職員室まで行った方がいいわね、通り道だし案内するわ」
「ありがとうございます」
ぺこりと桜島に頭をさげる。
「いや~きょうは朝からいろんなことがあって楽しいね」
「この生徒会長、明日の燃えるゴミにだしていいかしら?」
「いいんじゃない?たぶんそれも喜ぶと思うけど」
「おいおい二人とも、俺をなんだとおもってるんだよ」
「あのーそれよりみんさん、早く学校行きませんか?私初日から遅刻とか嫌なんですけど!」
もう生徒も少なくなった学校の玄関に健気な叫びが響いた。
○○○
学生や主婦の人達がにぎわう店内で僕ら4人は頼んだ商品を待っていた。
お店はスイーツが売りのチェーン店で洋風の外観に手ごろな値段で食べられるので人気だ。
窓側のテーブル4人席に僕の隣に甘木、赤星の隣に桜島がいて向かい会う形で座っている。
「ごめんなさいね、転校初日でただでさえ疲れてるのに」
「いえいえ、私も二人とは早く仲良くなりたいと思ってたので」
彼女の転校初日は学校の歴史に刻まれてもおかしくは無い位の大騒動となった。
休み時間のたびに彼女の周りには人が集まり質問攻めの連続で、更には違う学年にクラスの生徒まで押し寄せる始末で流石に桜島だけでは対処ができ案くなり、先生が出てきて鎮めるまでになってしまった。
つい最近までテレビに出てた芸能人がいきなり同じ学校の生徒になるとかそうなるよね。
僕だって同じ状況になれば野次馬に言って、外堀とゆう外堀を掘りまくってあわよくば仲良くなって恋愛漫画、顔負けのあんなことやこんなことを夢見るものだ。
もちろん今日の放課後もたくさんのお誘いが来ていたが、このまま行かせたら何が起こるかも想像がつかないので、昼休みや放課後は生徒会からの学校案内と称して落ち着くまで甘木と桜島が様子をみてくれるらしい。
「今日はこのまま家に帰してあげたかったんだけど、どうしても伝えておかなくちゃいけないことがあって」
「友達と帰りに食べて帰るのとかしたかったので私は全然おっけーですよ。むしろありがとうございますみたいな感じです」
実際その通りで学校からここに来るまでニコニコで、入ってからもメニュー表を広げてからあれにしようかこれにしようかと悩みに悩み、うきうきで商品を待っていた。
「それならよかったわ」
その様子につられるように柔らかな笑みを浮かべ見つめる。
「俺もこんなにカワイイ女の子と放課後デート出来るなんて嬉しいよ」
「奇遇ですね、私も会長さえいなきゃとても楽しいんですけどね」
彼女を見つめるやさしい笑みがいつもの凛とした、いや不快そうな顔に変わり甘木を睨む。
「そうはいかないよ、この二人には僕が直接説明しなきゃいけないからね」
甘木は僕らを軽く見渡し姿勢を正て一呼吸置くと言葉を続けた。
「2人にここに来てもらったのにはこれが理由なんだ」
スマートフォンを取り出すと僕らにとある写真を見せる。
見ると例の朝の学校の落書きのようだが、言葉を追い頭がそれを理解するにつれ背筋が凍った。
「心当たりは?」
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