実の奪い合い2

 神様の寵愛がなくても生き延びて戦っている人は大勢いた。

 人類のためにと戦い抜いた人はみんな強かった。


 神様の注目は得られないかもしれないがこれからの大きな戦力になってくれることが期待できる。

 別に共に戦わなくてもマサキが顔を知っている人なら大なり小なりその人の性格などの資質も分かっている。


 敵味方入り混じる大人数でのゲート攻略においては味方になってくれそうな人を見極めることも大事である。

 けれどもマサキの記憶にあるような人はいなかった。


 途中でやられてしまったような人でたまたま覚えている人がいたぐらいだった。

 意外と覚えてるもんだなと自分で驚いてしまう。


「それでは攻略を開始します!」


 軽い説明が終わってゲートに挑むことになった。

 先にゲート前にいたギルドからゲートの中に入る。


 安全確保的な役割もあるので先に入ってズルイという人はいない。

 入ってすぐに襲われることはほとんどあり得ないことであるがないことではない。


 そうしたリスクを負ってくれているのだから先に入っても文句を言わないのは当然なのである。

 ギルド所属の覚醒者たちが入ると次はフリーの覚醒者たちとなる。


 他の人たちは我先にとゲートに入っていくがマサキとレイはのんびりと他の人が入った後に入っていく。


「……森? 遠くには山も見えますね」


 ゲートを抜けた先に待ち受けている光景は森であった。

 緑の葉っぱを繁らせた木々が立ち並び、青空広がり、山も見えている。


 少し郊外にでも足を伸ばしたかのような自然豊かな空間であった。

 ゲートダンジョンなどというがダンジョンというよりもフィールドと表現した方が正しいぐらいである。


「うわっ、なにこれ?」


 急にマサキやレイの目の前に表示が現れる。

 ゲームの中の表示のように半透明の四角いものでレイが触れようとしても手は通り抜けてしまう。


「100/100? モンスターを1000体倒せ? これってなんですか?」


 マサキたちだけではなく他の人の前にも同様の表示が現れている。

 みんな不思議な現象に大なり小なり困惑しているがマサキは冷静に表示を眺めていた。


「このゲートダンジョンは条件付きゲートダンジョンなんだよ」


「条件付き……ですか?」


「そうだ。攻略を始めるため、あるいは攻略するための条件が最初から決まっているゲートダンジョンのことだ。今回ならこの100/100っていうのは今ゲートダンジョンに入った人数だ。これが必要人数でこの人数がいなきゃ攻略は始まらないんだ」


「へぇ……」


 マサキのさらりとしたわかりやすい説明にレイは感心する。

 密かに聞き耳を立てている覚醒者もいる。


「そしてモンスターを1000体倒せ、これが言うなればこのゲートダンジョンの攻略方法ってことになるな。1000体倒さなきゃゲートダンジョンは攻略出来ないんだ。

 ただ1000体倒せばいいのか、1000体倒したらボスが出てくるのか、そうしたところは分からないけどな」


「なるほど……説明ありがとうございます」


「なかなかお目にかかれるタイプのゲートダンジョンじゃないからな。知らなくても無理はないさ」


「マサキさんはなんでも知ってますね!」


「なんでもじゃないさ」


 ただ経験があるから知っているだけ。

 真っ直ぐに褒められてマサキは照れ臭そうに頭をかいた。


「あとは条件付きゲートダンジョンには貢献度があるんだ」


「貢献度……たくさんモンスターを倒したらいいってことですか?」


「基本的にはそれで間違ってないよ。そして貢献度が高い人には攻略成功時に特別な報酬がもらえたりするんだ」


 マサキの話を盗み聞きしていた覚醒者たちがピクリと反応する。


「良い報酬が欲しいなら……早めに動いた方がいいかもな」


 周りに聞かせるように声を気持ち大きめにした。

 すると周りにいた覚醒者たちも慌てたように動き出した。


「さて、俺たちも動こうか」


 ほとんどの覚醒者がさっさとあちこちに出発してしまい、残るのはマサキたちを含めて数人となった。

 マサキとレイもあまりのんびりとはしていられないので行動を開始する。


 あちこちからモンスターを追いかけ回す声が聞こえてくる。

 この分ならかけずり回らずともモンスター1000体ぐらいなら倒してくれるだろうと思う。


「モンスター探さなくていいんですか?」


 少しレイが焦ったような顔をする。

 せっかく特殊なゲートダンジョンに挑めることになったのにマサキが倒すのは目の前に現れてきて襲いかかってくるモンスターだけである。


 自分からモンスターを探そうとはしていないのでこれでいいのかと思っていた。

 ギルドとして参加している人たちもいるので貢献度で勝てるはずはないが、モンスターを倒して貢献度を稼いで損なことはない。


「ああ、俺の目的は別に貢献度稼ぐことじゃないからな」


「そうなんですか?」


 マサキの説明を聞いている限りではこのゲートダンジョンの目的はモンスターを多く倒して貢献度を稼ぎ良い報酬を貰うこと。

 なのにマサキは貢献度を稼ぐつもりはないというのでレイは首を傾げた。


「もちろんゲートダンジョンはクリアするつもりはあるぞ。けどここら辺のモンスター追いかけ回しても貢献度はそんなに稼げないんだ」


 もちろん狙える報酬なら狙いたい。

 しかしゲート近くにいるモンスターは数が多いが弱くて貢献度に換算するとかなり低くなる。

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