第3話
それから一月余りが過ぎ、1918年1月12日、革命の同志たちは再び片山潜の同志宅に集結せり。各々がそれぞれの使命を果たし、農村と都市にて組織を拡大しつつあった。今宵はその成果を報告し、次なる段階の行動を協議する重要なる会合にして、一同の顔には気迫と緊張とが漂う。
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【会合の始まり】
幸徳秋水、集う同志を見渡し、会合の開始を宣言す。
幸徳秋水
「諸君、いよいよ革命の鼓動が民衆の中に浸透し始めたり。各地にて得られし報告を述べ、次なる行動を検討せん。」
【山川均の農村活動報告】
幸徳の指示に従い、まず山川均が農村部の報告を始めぬ。
山川均
「先ずは東北および近畿の農村にて、民衆に土地解放の思想を広める活動を進めたり。貧困と重税に喘ぐ農民らは我らの言に強く共鳴せり。『土地と平和』の旗の下、秘密裏に会合を重ね、十余りの村にて自衛組織を結成せり。小規模ながら、農機具を用いた武装訓練も実施し、官憲の監視を避けつつ、徐々に力を蓄えつつあり。」
幸徳秋水、満足げに頷き、続けて尋ねる。
幸徳秋水
「よろしき成果なり。だが、これらの組織は如何なる支援を必要とせりや。更なる拡大を目指すに如何なる困難を抱えおるか。」
山川均
「一つには、資金と物資の不足なり。自衛の道具も未だ数限られ、周辺の村々と結束しつつも、一たび官憲が動かば容易に鎮圧されるやも知れず。」
アレクセイ・イヴァノフ、慎重に考慮し、助言を与う。
アレクセイ・イヴァノフ
「山川殿、農村にて革命を成すには、いよいよ都市からの支援が不可欠なり。武装の拠点を持ち、農村に物資を密輸する手立てを整えるべし。都市にて同志を増やし、物流の管理を掌握する必要あり。」
【片山潜の都市部活動報告】
続いて、片山潜が都市における組織化の進捗を報告す。
片山潜
「東京並びに大阪の工場にて、数多くの労働者を我が組織に引き入ることに成功せり。賃上げ要求を掲げた労働争議も敢行し、我らの声は日を追うごとに強まりぬ。組合の結成も進み、労働者の自覚を促す機運は高まりつつあり。また、数名の巡査や駅員とも接触し、通信と物流の抑え所を探りつつある。」
幸徳、片山の報告に興を覚え、更なる指示を与う。
幸徳秋水
「労働者組織の結束は実に頼もしく、次なるは官憲に動きを悟られぬよう地下活動の隠密性を高めることに努めよ。また、巡査を通じた情報網の確立が急務にして、軍関係者への接触も模索するが良し。兵士らに共感を抱かせ、可能な限り我らの側に引き寄せん。」
【軍部との接触と武器調達】
イヴァノフ、軍部の下層兵士に接触した成果を報告す。
アレクセイ・イヴァノフ
「我がロシアの同志を通じ、帝国軍の中に社会主義に理解を示す者あり。特に一部の若き下士官、彼等は貧しき農村出身にして、我が思想に共鳴する者多かり。彼等を通じ、小火器数丁を密かに手に入れ、幾つかの自衛組織に配備せり。また、軍内にて士気の低下も著しきを見れば、兵士らの一部は我らの旗印の下に転向し得るものと考えられたり。」
幸徳、イヴァノフの報告に希望を見出し、次なる計画を示唆す。
幸徳秋水
「思惑以上の進展なり。兵士の中に同志を増やし、軍からの協力を一層確固たるものとせん。次なるは兵站を如何に制御するかが鍵にて、武器と物資の供給路を確立せねばならぬ。」
【結語と次なる行動方針】
幸徳、再び一同を見渡し、次の行動を指示す。
幸徳秋水
「諸君、我らの動きは次第に具現しつつあるも、官憲に感付かれるは死活問題なり。ゆえに、当面は慎重にして急速なる拡大を図り、春に向けて民衆の決起を準備せん。農村と都市にて同時に立ち上がる機を作り、目標とする日には一斉に行動を開始せよ。『二月蜂起』の符牒のもと、赤旗を掲げて人民に希望を示すべし。」
片山潜、意気盛んに応え、総括を述ぶ。
片山潜
「二月蜂起、まさに民衆の待ち望みし春を迎えん。我らは未だ慎重を旨とすれど、革命の精神を胸に秘め、いよいよ大義の時を迎えることとなりぬ。」
山川均も力強く応じ、決意を新たに語る。
山川均
「此度の蜂起、我らの命運を賭けたるものなり。民衆と共に生き、共に闘い、共に新しき時代を築かん。」
アレクセイ・イヴァノフ、重々しく頷き、同志たちに激励を贈る。
アレクセイ・イヴァノフ
「諸君、我らの道は険しけれど、信ずべき道なり。いずれ時が来れば、労働者、農民、軍兵士、悉くが我らの旗の下に集い、帝国の枷を打ち破らん。我が祖国ロシアに続き、君たちの大義も成就するものと信ず。」
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斯くして、彼らの会合は終わりを告げ、各々が胸に誓いを新たにして持ち場へと戻りぬ。以後、農村と都市にて活動は加速し、いよいよ日本の地に二月蜂起を控えた民衆革命の潮流が押し寄せることとなりぬ。この会合は後に「一月の決意会議」と称され、革命運動の歴史的転換点として後世に伝えらるることとなりき。
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