人助け……?
愛羅と恋人繋ぎをしながら、適当な店に入り、朝食を済ませた。
……そこまではいいのだが、俺と愛羅はまた恋人繋ぎをしながら、歩いていた。……親子のはずなのに。
……いや、まぁ、仲のいい親子……うん。それでいいはずだ。
「愛羅、一応聞いておくんだが、どこか行きたい場所とか、やりたいこととか、あるか?」
「ヒロトと一緒なら、どこでもいい」
その言葉は嬉しいけど……まぁ、そうか。
愛羅はこっちの世界のことなんて俺があっちで多少話したことくらいしか知らないし、行きたい場所なんて言えるわけないよな。
「なら、適当に──」
そこまで言ったところで、このご時世には珍しい……のかは正直あんまり知らないけど、少なくとも俺にとっては珍しい事が少し先の道で起きていた。
……女の子がチャラい男に絡まれてる。……こんなこと、物語の中だけだと思ってたけど、リアルでも本当にあるんだな。
助けるか。
異世界に行く前の俺だったら、正直見て見ぬふりをした可能性が高いけど、あっちで色々と体験してきたしな。
仮に今更あんなチャラい男程度が逆上して俺に殴りかかってきたとしても、絶対に無傷で穏便に済ませられる自信があるし、助けないなんて選択肢はもう無いよな。女の子の方は明らかに迷惑そうにしてるし。
そう思い、その二人に近づいていこうとした瞬間、その二人のうちの一人……男の方が突然姿を消した。……いや、消したというか、あの女の子からは見えないところに倒れている。
あまりの出来事に俺は女の子を助けに行こうと足を一歩踏み出していた間抜けな姿勢のまま固まりつつ、隣を見た。
すると、そこに愛羅はいなかった。
もう一度さっきの二人がいた方向に視線を向ける。
チャラい男に絡まれていた女の子は突然男が消えたことに恐怖したのか、そのままどこかへ走り去っていってしまった。
その瞬間、愛羅がまるでずっとそこに居たかのように俺の隣に帰ってきていた。
「……えっと、愛羅がやったん、だよな?」
それ以外に考えられなかったから、俺はそう聞いた。
別に責めている訳では無い。
女の子を怯えさせてしまったことはともかくとして、人助けの結果だと思うし。
「……うん」
「怒ってる訳じゃないんだが、なんでだ? 愛羅が何もしなくても、俺も助けようとしてたぞ?」
「だから、やった」
?
どういうことだ?
「……ヒロトは私の。……惚れられたら、困る」
愛羅の言葉を疑問に思っていると、愛羅は小さくそう言ってきた。
……どうしよう。ツッコミどころが多すぎるぞ。
まず最初に、俺は愛羅のものじゃない。
いや、愛羅の親という意味では、そうなんだけど、多分、愛羅はそういう意味で言ってるわけじゃないだろ。
後もう一つ。
そんなに簡単に惚れられることなんて無いと思うぞ?
……いや、まぁ、いいんだけどさ。
どんな思いで行動していたんだとしても、結果的には人助けをしてるんだからさ。
あの男だって、別に死んでるわけじゃないし、そもそも、怪我をしてる様子は見えないしな。
「よしよし、偉いぞ」
そこまで考えた俺は、愛羅の頭を撫でてあげながら、そう言った。
「ほんと? 偉い? ヒロトも、嬉しかった?」
「ん? あぁ、嬉しかったよ」
娘が人助けをして嬉しくない親がいない訳ないだろう。
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