姉孝行

 俺が箸を忘れてしまったことで、また愛羅と俺の箸を一緒に使ったりすることになったりもしながら、無事に学校が終わり、俺と愛羅はもう家に帰ってきていた。

 愛羅の夕食とかがあるし、本当はどこか適当な店に寄って愛羅に食べさせてから帰ろうと思っていたんだが、俺は学校から寄り道することなく、真っ直ぐに帰ってきていた。


 理由としては単純で、姉孝行の意味も込めて、今日の夕食は俺が作ろうと思って。

 愛羅に聞いてみたところ、目を輝かせて「食べたい」と言ってきたっていう理由もある。

 まぁ、5対5ってところだな。

 姉さんも愛羅も俺にとっては死ぬほど大事な家族だからな。


 手洗いうがいを愛羅と共にしてから、キッチンに立った俺は思った。

 ……今更なんだけど、食材とか、勝手に使っていいのかな、と。

 姉さんが怒る姿なんて想像もつかないけど、変にサプライズ? とか考えずに、一応一言言っておいた方が良かったかな。

 ……今連絡をしても、その連絡を見れるのは仕事が終わった後だろうし、どうしような。

 自分で食材を買ってきた方が良かったかなぁ。


 まぁ今更か。

 そもそも、変にマイナスな思考になる必要なんて無いはずだ。

 姉さんは仕事で疲れてるし、その上で帰ってきていつも夕飯を作ってくれてるんだ。

 顔には出さないけど、当然言うまでもなく大変だろうし、たまには俺が変わって作るのを迷惑になんて思わない……はずだ。

 ……とはいえ、少し、作り出すには早い気がしなくもないが……愛羅がいるんだし、そこは上手く調整したらいいや。

 上手く調整出来る料理……米と味噌汁とハンバーグとかでいいかな。後適当な野菜。

 ハンバーグなら、形だけ整えて冷蔵庫に入れておくことができるし、姉さんがそろそろ帰ってくるなった時に焼き始めればちょうどいい感じになるはずだ。

 悪くないかもな。愛羅も好きだったはずだし。

 ……味噌汁は味噌があっちの世界には無くて食べさせたことがないから分からないけど、もしも苦手なら、俺が食えばいいだけだ。


 ……一応、味噌汁の作り方を調べておくか。

 大丈夫だとは思うけど、味噌汁はあっちの世界でも作ったことがないしな。

 米は炊飯器で炊くだけだから簡単でいいけど。


「私も、手伝う」


「ん、なら、形を整えるのを任せるな。俺はその間に米と味噌汁の準備をするから」


 早炊きにして……よし、これでいいな。

 いくらこっちの世界では料理をしたことが無かった俺でも、これくらいは出来る。

 

 そして、仲良く愛羅と夕食を作り終えた俺は、先に愛羅に食べさせるために食器を用意していた。

 そう、愛羅の夕飯を早く作らなくちゃならなかった理由の一つでもある食器だ。

 ……愛羅が食べ終わったら直ぐに食器を洗って拭くところまでしなくちゃだからな。

 使った覚えのない食器があったら不自然だしな。


「愛羅、食べていいぞ」


「うん。いただきます」


 愛羅が夕飯を食べ始めた。

 箸は俺のを使っている。……もちろん、洗ってあるやつだけど、愛羅がそれがいいと言ったから。

 ……思うところが無いわけじゃないけど、姉さんのを使わせるのも絶対におかしいと思うし、割り箸っていうのも、もしも姉さんに見られたら言い訳をしなくちゃならないかもしれないし、仕方ないこと……だと思う。

 

「どうだ?」


「美味しい。ありがとう、ヒロト」


「愛羅の口にあったようで良かったよ」


 そんなやり取りをして、愛羅が食べている間、俺はスマホを弄っておこうとして、やめた。

 やめた理由は何となくだ。深い理由は無い。

 ……まぁ、娘がこうやって食べている姿を何となく眺めておくのも悪くは無いと思うしな。……もちろん、愛羅が嫌がったらやめるけど、今のところはそんな様子は無いし。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る