第8話

「………ハァー………ハァー」


病室のドアを開けると、医者や看護師が数人いた。






「……………」


僕は力無くドアにもたれて病室の様子を見ていた。


処置が終わったのか、次から次に病室から人が出ていった。






「…稿辺さんの息子さんですよね?」


最後に出てきた看護師が話しかけてきた。


「………ハイ」


「病室にどうぞ」


「……………」


僕は無言で頷いた後、病室に入った。








「…り…龍登」




「………お………母さん」




「………ゴメンね」




「………何で謝るんだよ」




「………龍登」


「………何?」


「………本当に死んだ父さんに似てきたね」


「………お母さん」


僕の顔を見ながら、母は笑って話す。






「……………」


「ーーーーーーーーーー…龍登?」


「何?」


「ーーーーーーーー母さんね………ずっと龍登に謝りたいコトがあったの」


「………別に良いよ」


僕は改まって言われるのを何だか恥ずかしくて笑って返す。











「………龍登には苦労ばっかりかけてゴメンね」


母は僕の手を握って、またゴメンと謝った。


母は目から涙をポロポロと溢している。


「…な、何言ってんだよ」


僕はずっと堪えていた笑顔が崩れかけていた。


「………龍登は………本当に優しい子ね………こんな母親をーーーーーーーー…」


母は言葉を詰まらせる。




「………お母さん、僕も言いたい事があるんだ」

(きっとコレが最後だから)


僕は泣かないように出来るだけ明るく努めた。






言わないとダメなのは分かっている………


でも、言ってしまえば認めなければいけないーーーーーーーー


そんな気持ちを押し殺して母の方を向いた。











でもーーーーーーーー…


徐々に視界はボヤける。


「………お父さんが死んでから大好きなソフトボール辞めて僕を今まで育ててくれたコトーーーーーーーーーーーーーーーー…ずっと、お母さんにありがとうって言いたかった」











「…りゅ…龍登ーーーーーー…」


僕の言葉を聞くと、母は安心した様に微笑んで永遠の眠りについたーーーーーーーーーーーー











ひとすじの涙を溢して

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