第五章 3-1 マギ=カタ
* 3 *
アニメに出てくるパワードスーツに近い形状の鎧人形たちは、ぱっと見ただけで五〇体ほどまで増え、輝美はげっそりとした表情を浮かべていた。
ちらりと後ろを見ると、一時戦線を離脱していたアルドレッド・ソフィアが復帰し、ヤマタノオロチとの戦いは第二ラウンドが開始されたところのようだった。
「いったい、どんだけつくったのよ、この木偶人形」
「もちろん、貴女を圧倒して勝てるだけの数に決まってるでしょう? ずっと貴女を倒す方法を、あの世界で考えてたんだから。一体だって貴女の力と能力じゃ手こずるはずよ」
「あーそー」
投げやりに言いながら、おもむろに一番近い鎧人形に左手の杖の先端を向けた輝美は、予備動作も詠唱もなしにワインレッドの太い光を発射する。
人の胴体ほどの太さがある光は、しかし鎧人形の数センチ手前で青で描かれた魔法陣に激突し、拡散して散ってしまった。人形には焼け焦げひとつ着いていない。
「うへー。っと」
音もなく近づいてきた別の人形の斬撃を軽やかに躱し、右手に持った大振りのナイフをすれ違い様に押しつけ、斬りつける。
振り返ってみると、ヘリポートを照らすスポットライトのような照明の下で、斬られたはずの鎧人形は、わずかに横腹にナイフの傷跡を残すだけで、動きに支障を来した様子もない。
「魔法攻撃も物理攻撃も効くわけがないでしょ? 貴女の攻撃に適した魔法防御も施してあるんだし、魔法で強化した素材は、射撃魔法使いのクセに接近戦好きの貴女の斬撃にも堪えられるくらい強くしてあるんだから! 貴女は手も足も出ずに、こいつらに蹂躙されるしかないのよ!」
ひしめく鎧人形の向こう側で下品な高笑いを上げているサクヤにちらりと視線を飛ばし、輝美は大きく息を吐く。
ニヤリと笑みを浮かべた輝美は、言った。
「さて、それはどうかしらね?」
腰を落とした輝美は近づいてきていた三体の鎧人形のうち一体に接近し、胸元に魔法の杖をあてがう。
杖の先端から発射されたのは、先ほどと同じ太さのワインレッドの魔法光。
しかし魔法陣による防御が発動することはなく、胸から上を失った鎧人形は動きを止め、後ろに倒れていった。
次の人形が振り下ろしてくる剣をナイフで逸らし、体勢を崩させた瞬間、頭頂部に押し当ててからナイフを一気に振り下ろした。
縦に真っ二つにされた人形は、がらんどうの身体を曝しバラバラのパーツとなって崩れ落ちた。
「な……、んで?」
サクヤが驚きの声を漏らしている間にも、輝美は次々に鎧人形に躍りかかり、ナイフで両断し、杖からの射撃魔法で撃ち抜く。
さらに回し蹴りで切り裂き、膝蹴りを食らわせると同時に発動させた「膝からビーム」で貫き、どんどんサクヤへと近づいて行っていた。
対する鎧人形たちは、人間以上の素早い動きで剣を振るうものの、輝美はそれ以上の動きで斬撃を避け、紙一重で躱し、すれ違う間の反撃で倒されていった。
「何なのよいったい! どうして貴女がこの子たちを倒せるのよ! それにその動きは!!」
「何って、まぁ……。貴女が施した魔法干渉障壁は、本体のだいたい六センチのところで発動するものでしょ? それより内側からの魔法には反応しない。だから杖を当ててから射撃魔法を使えば問題にもならないし、斬れ味強化の魔法だって有効なのよ」
周囲の鎧人形をすべてガラクタに変えた輝美は、ためらうように接近してこない敵を油断なく見渡しながら言う。
「それに、中学入るときには魔法少女は引退したけど、別に魔法を失ったわけじゃないし、その後も蔵雄と一緒に鍛えてたからね。んで、アクションものの映画を見ててふと思いついたのよ。その映画は拳銃と格闘術を組み合わせたものだったんだけど、似たようなことを魔法と格闘術でできないかな、って。それで編み出したのが、これ」
後ろから接近してきた二体をナイフと射撃魔法で瞬時に屠り、ガラクタへと変える。
「結局、格闘でも武器戦闘でも銃撃戦でも魔法戦でも、同じなのよ。他と違って魔法の場合、対抗魔法とか防御魔法が充実してて防ぐ手段が多いけど、要は敵の本体にダメージを与えて倒すってことには変わりない。その手段が拳か剣か銃弾か、魔法かの違いだけ。防ぐ手段が多い魔法はたいてい力押しの戦いになるけど、格闘術は相手の力を利用したり、攻撃を回避したり、動く相手に有効打を当てる技の勝負。組み会わせたらどうなるかな、って思ってやってみたら、できたのよ。魔法と格闘術を組み合わせたワタシの戦法は、映画の技に習って、マギ=カタと名付けてみたわ。ただ無駄に年老いてたわけじゃないのよ、サクヤ。ワタシはワタシで、いまでも成長中なのよ?」
言い終えた輝美は、顔の前でナイフと杖を交差するように構え、サクヤへと走る。
彼女をガードするように走り寄る鎧人形の斬撃を避け、すり抜け、切り刻み、撃ち抜き、囲いを突破した輝美。
恐怖に表情を強張らせたサクヤの頬に、右手に持ったナイフのナックルガードを食い込ませた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます