11 お弁当



「浅野さん」


昼休み、お弁当持って教室出たとき、名前呼ばれた。


今日川島休みだから野球部の昼練で食べようと思ったのにな。



声のする左側を見ると、同じ学年の男子が立ってた。


__________背たっかぁい__________。


月島くらいかな__________。



それで、多分6組の子。



顔は見たことあるけど、話すのは初めて。



同じクラスか同じ部活じゃないと接点ないし。



「ちょっと時間いい_____ですか_____?」


「うん、いいよ」


緊張してる。

すぐにわかった。


__________久しぶりだな。


告白されるのかな。


私のどこがいいのか全くわかんないけど。


断るけど。


ちゃんと聞こうって思ってついていった。


屋上までの道は静か。


ちょっと強い風が吹いてて、制服の裾が揺れる。


耳の後ろで二つに結んだ髪の毛が揺れる。




二人きり。


彼、Aくんは一度深呼吸してから言った。



「浅野さんのこと前から気になってました。

……よかったら付き合ってほしいです_____。」



ストレートで、真剣だった。


何回告白されても、一向に慣れない。


私もちゃんと返さなきゃって思うけど


「えっと__________ありがとう__________」


まずそう言った。


彼の顔が、少しだけ明るくなる。


――あ


__________期待、させちゃったかも。



まだ、ちゃんと、何も言ってないのに。


「びっくりしたけど、私なんかのことそう思ってくれてたの嬉しいよ」


できるだけ、まっすぐに。


相手を傷つけない言葉を選びながら、続けた。


「でも、ごめんなさい__________」


Aくんの表情が揺れた。


「今私は好きなことでいっぱいなの」


月島に、野球部のマネ。


「あなたの気持ちには答えられない。でも、ありがとう。嬉しかった。ごめんね」


傷つけたくないって思う。

でもやっぱりごめんは、苦しい。


ちゃんと伝えないといけない。


相手も勇気を出して伝えてくれたんだから


「……そっか」


ぽつんとそう言って、Aくんは目を伏せた。


でもすぐに少し笑った。


「……困らせてごめんね。ありがとう。」


あぁ。強いな。


「こちらこそごめんなさい。ありがとう」


ぺこっと頭を下げる。


Aくんも同じようにぺこっとして、


扉の方へ歩いていった。


ひとりになった屋上。


風の音だけが響いてる。


スマホを取り出すと、RINEの通知が来てた。


『心愛ー!お弁当食べちゃうよー!』

『心愛どこーーーーーーー?』

『はやくきてーーー!!!』


……ふふっ。


なんか元気出た。


ちゃんとがんばろうって思った。



「浅野、さん。」



落ち着く声。


声の方をみる。


やっぱり月島だ。


少し高めの台?からお弁当持って飛び降りてきた。



久しぶりに2人だけになったことが嬉しくて、お弁当箱をもって、月島の方へ小走りする。



「月島__________っ」



横に座って話しかける。


「_____お弁当屋上で食べよ__________」


「うん。一緒に食べよう。」


そう言って笑うと月島も優しく笑ってくれる。


あたたかい月島の笑顔を見た瞬間、胸の奥がじんわりして、鼻の奥がつんとする。


……なんで、こんなに泣きそーなんだろ。



ちゃんと断ったのに。


ちゃんと伝えたのに。



傷つけたくなくて選んだ言葉がどこか私自身にも、刺さってたのかもしれない。


でも、それに気づいたのは月島の顔を見て、安心した今。


「……月島」


お弁当箱を床に置いた。


そのまま月島の胸にぽすんって顔をうずめる。


制服越しに聞こえる月島の心音が、やさしくて。ちょっと早い。


「……ど、したの」


戸惑った声。


でも、拒まない。それが月島の優しさだから。


優しさに甘えるようなことになっちゃう。


でも今日だけは許して欲しい。



そっと手が背中にまわされた。



「なんか_____月島の顔見たらホッってした」



言い訳みたいに呟いた。


それに気づいたのか、月島はふっと笑った。


「そっか___少しこのままでいていいよ?」


少しおどけたように言う月島よ声に、何も言わずにこくんとうなずく。


月島があったかくて安心する。


もう、誰にどう思われてもよくて、


ただこの人に、月島に、大丈夫って思ってもらえたらそれでいい。



「月島、」


「んー?」


頭を撫でてくる手が優しくて眠くなってくる。


「好きだよ__________」


そっと呟く。



「なっ__________っ!」



月島の胸から顔を上げると真っ赤になった月島がいる。



それがちょっと嬉しくて、恥ずかしい。


「た、食べよっか__________!」

「うん。」


今日のお弁当は味がしなかった。

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