番外編④ 川添純恋
うちの名前は川添純恋や。大阪、堺にある小学校からこっちに来たんよ。
転校初日は散々なもんやった。大阪から来たって理由で仕切ってそうな輩に目をつけられた。体格には恵まれとるやつで、攻撃も力任せやった。んなもんにはすぐに勝てた。やけど勝ったらそいつ。学校来んくなった。
売られた喧嘩を買ったからや。って1ヶ月くらい自己疑念に陥ってた。
でも、見るからに女子の中でのトップ。奥埜琉奈に目をつけてもらえた。
「純恋ちゃん?やったけぇ?」
「そう」
「私ねぇ瑠奈って言うんよぉ。仲良くしよぉ〜?」
「うれしいわ。よろしくな、琉奈。」
それが始まりやった。
琉奈は陰の人間、つまり「陰キャ」とも仲良くしてた。表面上は。
気に食わないことがあるとそいつらを蹴る。日常茶飯事。でも上手くやっていかないといけない。琉奈に嫌われたら此処でやっていけない。そう思ったのはいつだろう。そして、その考えをやめたのはいつだろう。
1つ目の転機は浅野心愛。あいつや。琉奈が真っ先に眼の敵にしたのもアイツや。誰にも媚びることなく、自分の力で世界を作った。琉奈の好きな人とも仲良くなった。琉奈の
うちらと分かれた後、琉奈は末次に渡しに行った。その時に、浅野から貰ってニコニコの末次を目撃したらしい。結果、琉奈は受け取ってもらえなかった。否「渡さなかった」のだ。浅野を尾行したんやって。そうしたら月島の家に入っていった。
琉奈の家は月島の近く。浅野はあろうことか2時間近く滞在したらしい。琉奈のことだから本当は1時間くらいだと思う。で、ムカついた琉奈はお得意の加工技術を全力で駆使して浅野を陥れた。
クラスの中では皆が琉奈の手駒。かくいううちもそうや。最後には浅野にボロカスに言われた。
「昨日は皆と同じように笑って。蔑んで。弄んで。馬鹿にたくせに。
_____何様だよ。おめでたい頭してるね。そんなの友達って言えるの?
_____私にはわからない。____なんで噂を信じるの?話を聞かないの?
付き合いが短いからこそ話を聞くんだよ。」
殺気。そう呼ぶのが一番近く____。でもなんか違う。そんな空気が充満してた。
でも、自分を守る言葉しか頭に浮かんでこなくて。
違う。私は_____うちは___________。
怖いんや。嫌われるのが。捨てられるのが。やからうちは琉奈についてた。自分が捨てるのは厭わなかった。琉奈が居たから。うちの中心は琉奈やった綺華やった。あの言葉だって、あの行動だって、琉奈が言ったから。
その時、どこからか声が聞こえた。一瞬だけ、少しだけ、殺気が優しくなった。心愛が誰かと会話をしている。どこか安心したように、それでいて、自身に満ち溢れていて、羨ましかった。
負けた。軽く。あしらわれた。5,6限目は気分が悪いからと保健室に行った。
自分が負けるとは思っていなかった。あれは、浅野が悪い。うちは悪くない。
結局自分には自己保身しかできなくて。
「あ、琉奈_______。」
「あ、純恋ーーー!心配しとったんよ?」
「うん。ごめん。」
「なにがぁ?」
「負けた。」
「知ってるよ。負ける前提だったのも。」
「___え____?」
「あの子、浅野心愛。立ち方が普通と違ったもん____。」
じゃあなんで戦わせたん_?うちの空手はちょっと齧ってただけって知ってたやん。
「あのね、なんで戦わせたか、それは中学生になったらわかるよ。」
「うん。でもごめん。」
「そんな事いいよぉ。ね、これからも仲良くしよう?心愛とも、_______。」
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