第14話 冒険者ギルドの説明①

 

 

 冒険者ギルドとは国を超えてこの大陸にまたがる大きな組織であるらしい。それ故に中立性が求められ、国家や地域等特定グループ間で行われる紛争にかかわるような依頼は受けていないそうだ。

 

 冒険者ギルドで受ける仕事のことをクエストや依頼と呼ぶ。

 

 冒険者ギルドには様々なタイプのクエストがあり、基本的にはクエストボードの依頼票を取って受付で手続きすることでクエストを受注する。そして受注後に仕事をするという流れだ。

 

 一方支部によって常設依頼が設定してあり、クエストの受注なしに常に納品や討伐証明部位の提出を受け付けているものもある。ゴブリンとか。

 

 納品系のクエストも事前に受注していなくともよいが、納品時にクエストが残っていればその場で受注して、完了させることになる。

 

 ギルドはそれらのクエストが完了したとき、手数料と税を差し引いて報酬を冒険者へ渡す。

 

 

 その他指名依頼、緊急依頼、強制依頼等が大分類として存在する。

 

 この中で特に気を付けなくてはいけないものは強制依頼だ。その支部が存在する街や近隣の村に魔物による直接的な危機が訪れたときのみそれは出される。クエストを受けるか自由に選択できる冒険者の仕事の中で、唯一その支部に在籍する全冒険者を対象に強制力を持つ。

 

 基本的には後の説明で出てくるランクの高い冒険者から参加することになるのだが、手が足りなければ下位のランクの冒険者まで範囲が広がることになる。

 

 

 冒険者ギルドではランク制を採用しており、登録された冒険者はH~Sの九ランクに分類される。初めは誰でもHランクからスタートだ。

 

 それぞれのランクの詳しい説明は割愛するが、一般的にS・Aは超級冒険者、B・Cランクは上級冒険者、D・Eランクは中級冒険者、F・Gランクは下級冒険者、Hは新人冒険者と言われているらしい。

 

 街中でやる特定技能の必要ない日雇い仕事などはランク外のクエスト、その他はクエストごとにランクが設定されており、自身の冒険者ランクを超えるような依頼を受けることは非推奨となっている。

 

 また冒険者ランクによって免税措置が受けられ、Hランクは在籍登録している支部のある街のみ通行税免除。Gランクはその領にある街、Fランクはその国にある街で通行税免除。Eランク以上はこの大陸のどの国でも通行税免除となる。

 

 これは旅人を受け付けている多くの場所で、各々の範囲の通行許可証の役割を兼ねている。

 

 最後に重要なこととして説明を受けたのが、クエストを受けない期間が続く場合、冒険者ランクの低い冒険者ほど早くギルド資格が停止されるということだ。Hランクは五日、そこからランクごとに倍に伸びていき、Cランク以上は停止されない。

 

 停止された資格は、手続きすることで事情を考慮され再開できる場合もあるが、手数料を取られる。

 

「以上で冒険者ギルドの概要は終わりです。何か質問はありますか?」

 

「魔物や採取する薬草について、どこかで資料を見ることは可能?」

 

「ええ、あまり使われることはないけど、近隣の情報でよかったら二階の資料室に置いてあります。冒険者なら自由に閲覧可能ですよ。さらに広い範囲の情報が見たかったら、王都みたいに図書館のある場所へ行くしかないですね。多くの冒険者は先輩冒険者に教えて貰っているようですよ」

 

「分かった。小さな魔石をたくさん持っているんだけど、ここで換金できる?」

 

「ええ、できますよ。換金したい魔石を渡してください。あと、他に何か質問はありますか?」

 

「ない」

 

 首を振って、革袋ごと魔石を渡す。

 

「また分からないことがあったら適宜質問してね。これでギルド登録は終了です。私はメルと言います。これからよろしくね、アリシアさん」

 

「メル、よろしく」

 

「じゃあ、少し待っていてね」

 

 

 受付嬢改めメルが革袋を持って席を立ち、カウンターの奥からつながる後ろの事務所に入っていった。待っている間に、説明を受けて気になった点をまとめよう。

 

 まず気になったのは、冒険者ランクについて。

 

 H~Sでランク付けされるそうだが、これを聞いてまず思ったのが、ステータスを参考にこの制度が作られたのではないかということ。

 

 ステータス補正はH-~S+で表現されるため、これを簡略化して+-を省いたものではないかと思ったのだ。超級・上級・中級・下級・新人という分類も、ジョブランクの数と一致している。

 

 この推論が正しかった場合、今の私の純粋な実力は下級冒険者Fランクの上澄み位に該当するのだろうか。まぁ、ステータスは参考程度の情報なのでこの話はこれでやめておこう。

 

 

 次に気になったのは冒険者ランクによって決まる免税措置とギルド資格の停止について。

 

 通行税が免除されるという話で私のやる気が急上昇したということは置いておくとして。これらはおそらくセットになっている制度だと思うのだ。

 

 クエストをずっと受けないということは冒険者ギルドに貢献する気がないということ。ギルド資格の停止がない場合、冒険者活動をする気はないが取りあえず簡単に登録できる冒険者ギルドの身分証を手に入れることで、永遠に脱税できることになってしまう。

 

 貧民救済や治安の安定のために間口は広くし、その上でちゃんとギルドに貢献する信用できる人かどうかふるいにかけているのだと思う。低ランクほど恩恵が少なく、制限が多いのも同様の理由だろう。

 

 ちょっと考えただけでも、冒険者資格を利用して無税で街の中と外を往復し、通行税を払いたくない旅人向けに街の外で食料を売ったりとか思いつく。

 

 私が覚えておかないといけない点は、ランクが低い間にクエストを受けずに遠くの街へ移動しようとすると、資格が停止されかねないこと。また大怪我をしてしまい長期の療養が必要となった時に困ることかな。その時は素直に資格が停止される前に事情を伝えるしかないね。

 

 またこれらの制度の存在は、強い冒険者に大きな恩恵を与える。強い冒険者はそれだけ税として納める額も多くなることもあるだろう。だが主眼はそれだけ強い冒険者が求められており、街や国境の税や手続きにその行動が遮られては困るということなのだと思う。

 

 冒険者は戦争に参加せず、対人戦は存在するものの、対魔物を主に想定しているはずだ。上位ランクの冒険者だと雑用仕事はしないだろうし、なおさらだ。このあたりだとあまり実感がわかないが、魔物との争いがかなり厳しいということを示唆している気がする。

 

 

 最後にこれらを受けた、今後の方針について。

 

 ギルド資格の停止条件が定められたことで、サザンからあまり離れられなくなってしまった。まずは冒険者ランクをG、可能なら他領でも通行税が免除されるFまで上げたい。

 

 その後すぐに移動するかは未定だが、今のところ図書館という施設があることが確定し、隣国の情報等多くの知見が得られそうな王都が有力候補だ。しかし、それなりに先の話になるかもしれない。

 

 まずはクエストの消化と自身の成長に焦点を向けよう。

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る