第2話 ライオンゴロシ
物語は、新たな展開を迎える。時尭が宇宙ミッションに向かう準備を整える中、イラクサの生活にも暗雲が立ち込め始める。地元の漁師仲間や知人が次々と奇妙な病気にかかり、漁業の状況も悪化していた。イラクサはその原因を探るうちに、ある謎の毒薬「ライオンゴロシ」に辿り着く。
「ライオンゴロシ」とは、非常に強力な神経毒を含んだ薬品で、かつて古代の軍事用に使われていたものが密かに流通しているという噂があった。その薬は、数滴で命を奪うほどの危険なものだったが、近年、闇の市場で流通し始め、地元の漁師たちにも密かに出回っていた。毒薬が水産物や薬品として誤って流通することで、地元の漁業や生活環境が脅かされていたのだ。
イラクサの決断
イラクサは、漁師として地元に生きることを決めたものの、このような問題が次第に彼の中で重くのしかかってきた。ある晩、彼は自分の家の前で奇妙な男に遭遇する。男は「ライオンゴロシ」について知っていると言い、イラクサにその解決策を求めるように言ってきた。
男の名前は高浜。彼は過去に違法な取引に関わっていた元密売人で、今はその罪を償おうとする人物だった。高浜は、ライオンゴロシが宇宙関連の企業や研究機関にも出回っていることを告げる。これが明るみに出ると、宇宙開発の過程で使用される化学物質の管理や、密輸が発覚し、大きなスキャンダルになる可能性があった。
イラクサは、この問題を解決するために時尭に協力を仰ぐことを決意する。だが、宇宙の世界と地元の問題が交錯し、彼の心はさらに複雑になっていく。
イラクサは時尭にこの問題を話し、二人はライオンゴロシを追跡することを決める。しかし、時尭は宇宙飛行のために出発する予定があり、その準備が進んでいた。彼の心には、使命感と友情の間で葛藤が生じる。
時尭は、イラクサに「俺たちの道は別々かもしれない。でも、今ここで手を貸すべきだ」と言い、二人はついにライオンゴロシの流通ルートを追い始める。イラクサは、高浜から得た情報を元に、密売人たちと接触し、ついに毒薬がどこで製造され、どのように流通しているのかを掴む。
ライオンゴロシを追っている最中、イラクサと時尭は、密売人たちが行っている違法な取り引き現場を発見する。その場所で、二人は思いもよらない事実に直面する。それは、宇宙関連の企業が密かにライオンゴロシを利用していたということだった。この薬は、宇宙空間での無重力状態において神経を安定させるために使われることがあるというが、技術的な問題を抱えており、実験段階でしか使用されていなかった。
だが、地元で使われているライオンゴロシが本来の目的とは異なり、違法な取引や犯罪組織に流れていたのだ。時尭は、信じていた宇宙の世界に対する疑念を抱きながらも、イラクサと共に問題を解決しようと決心する。
一方で、イラクサは過去の自分に向き合わざるを得なくなる。家族の死や、地元に残った責任感、そして時尭との間に感じる距離感——。彼は、昔からの仲間である時尭とどのように向き合っていけばよいのかを悩む。
時尭とイラクサは、最終的にライオンゴロシの製造拠点を突き止め、その薬が不正に流通している経路を断ち切ることに成功する。しかし、この過程で二人は多くの犠牲を払うことになる。密売人や背後にいる勢力との対立が激化し、命を狙われる場面もあった。
その中で、イラクサは自分の選んだ道に対する覚悟を決め、地元の漁師たちと共に新たな漁業組合を立ち上げ、地域の再建を目指すことを決める。そして、時尭は宇宙に向かうことを決めるが、地元と宇宙の間で揺れる心情を抱えながらも、最終的には「どちらの世界にも誠実に生きる」という覚悟を決める。
時尭が宇宙に出発する日、イラクサは再び彼と出会い、言葉を交わす。「お前が選んだ道を、俺も誇りに思う」とイラクサは言い、時尭は「お前がいるから、俺はいつでも帰ってこれる」と答える。
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