第19話 みんなは派閥を作るのが好きだよね。

 いつぶりかなってか、入学式ぶりに学園の敷地内に入りました。


「学園だね」

「学園です!」


 学校に行くと約束したので、エリザベートに起こされて巻き髪ロールの見た目が完璧な悪役令嬢風なエリザベートと共に学園にやってきた。


「ふふふ、エリザちゃん張り切っていますわね」

「アイリーン様はいいの?」

「今日は、譲ってあげますの。エリザベートちゃんは、一番フライ様を学園に連れてきたかったと思うから」

「そうなの? ハァ〜ボクは自分のことでいっぱいいっぱいだよ」

「ふふ、そうね。ジュリアちゃんも頑張らないといわけないわね」

「うん。フライ様に、ご主人様に偉いって言ってもらうんだ」


 後には、アイリーンさんとジュリアが、学園の制服を着てついてくる。ジュリアは私の従者として、学園に通うことになり、私を取り囲む女性が二人から、三人に増えてしまいました。


「でも、僕って教室の場所も、なんの授業も受けるのかわからないんだけど?」

「もちろん、全てわたくしが把握しておりますわ!」

「うん。そうだと思ったよ。それで? 私はどこにいけばいいの? エリザベート」


 どこから出したのか、エリザベートは三角形のメガネをつけて、手帳を取り出して説明を開始してくれる。


「はい! まずは、午前中ですが、これは学園に入学した者が全員受ける基本授業の中から選ぶのですが、貴族であり、成績上位であるフライ様には必要ありません」

「えっ? そうなの?」

「はい。基本的な教育は我々貴族は終えていますので。マナー講座や基礎学などは必要ありません。もっと専門的なことを学ぶことに力を注いだ方が有意義です。エリック様などは全ての時間を魔法研究に費やしたそうです」


 うん。真面目で魔法バカになってしまった兄上ならありえるよね。あの人って、ブラコンで、魔法以外に興味ないほどに魔法バカだからね。


 本当に公爵家を継げるのか不安に思う時があるよ。まぁ責任だけ負ってくれて、手伝いをしてもいいかな。


「選択制でしたので、フライ様には帝王学、経済学、戦略戦術学の三つを習得する授業を選択しておきました」

「ええええ!! なんか、領主っぽい人が学ぶ授業ばかりじゃない? 僕って次男で気楽な身なんだよ?」

「ふふふ、もちろんわかっております。フライ様は全てをすでに網羅されておられて必要ないということですよね!?」


 いやいや、耳がバカになっているのかな? 僕は帝王学も戦略戦術学も全くわからないよ。経済学だって、平凡なサラリーマンだったから詳しくないよ。


 だって、会社にいって仕事をしていればお金がもらえるんだ。しっかりと仕事を覚えて、人間関係を上手くやることの方が大切なんだよ。


 経済学を学んで、自分で独立とか考えたことないからね。


「ふふふ、凄いですわ。フライ様」

「うん。やっぱりご主人様は凄い」


 アイリーンさんやジュリアまで誤解しているよ。私は平凡だからね。


「あ〜ちょっと頭が痛くなってきたや」

「大丈夫ですか? フライ様、私のお膝で少しお昼寝をされますか?」

「あっ! いや、頭は大丈夫なんだけど、話を変えるけど、そろそろ派閥とかできた?」

「派閥ですか?」

「うん。学園って色々な人間がいるじゃない。この学園都市は様々な人種がいるわけだしね」

「なるほど」


 私が、ただ遊んでいたわけではありません。どこかの派閥への入学早々に行われるのは、格付けや派閥への取り込み。そしてカーストの形成という。


 どこでもありえる序列制度。まぁ人間関係ではつきものだよね。


「そうですね。一番大きな派閥で言えばアイス王子の王国派閥名『銀のシルバーフラッグ』ではないでしょうか?」

「シルバーフラッグ??? 何それ?」

「派閥名ですわ! 学園都市ではよくあることです」


 そうなの? なんだか二つ名的な派閥名があるんだね。


「でも、意外だね。てっきりブライド様のところかと思った」

「ブライド皇子派閥は帝国英傑会インペリアル・ヴィルトゥースは、能力がある者を取り立てておりますが、それ以外の平凡な者たち見向きをされませんので、そういう者たちも受け入れるアイス様の派閥が大きくなっています」


 なるほどね。少数精鋭を好むブライド様と、誰にでも分け隔てなく優しく接するアイス様の二大巨頭というわけだ。


「他にもあるの?」

「それでは僭越ながら、解説をさせていただきます!」


 なぜかエリザベートのメガネがキラリと光った。



「まずは、獣人王子派閥の黄金爪ゴールデンクローですね」



 リーダー:獣人王子・ロガン・ゴルドフェング(獅子族の王子)


 特徴:獣人種の学生を中心に構成された派閥で、力と名誉を重視。獣人特有の優れた身体能力を生かし、戦闘訓練やスポーツ大会では無類の強さを発揮する。獣人以外にも「力こそ正義」と考える者や、彼らの勇敢さに憧れる学生が加入している。


 グループの雰囲気は、活気があり、勝者を称賛する文化があり。リーダーのロガンは豪快で頼りがいがあるが、直情的な一面もあり強さで好かれている。


 派閥内では順位や序列を明確にしており、特に実力主義が色濃い。


 影響力では、主に戦闘訓練や体育系の授業で圧倒的な存在感を放っている。騎士候補や兵士を目指す者にとっては憧れの派閥となりつつあるようだ。



「二つ目の派閥は、公国の王女派閥、薔薇月ローズムーンですね」



 リーダー:公国の王女・セシリア・ローズ・アーリントン


 特徴:小国や公国出身の貴族や富裕層を中心に構成された派閥が集まって「上品さ」と「知性」を大切にしており、学問や芸術、外交に強い影響を持つ。

 公国は芸術の都と言われるほどに、美しい都市を形成していて、学問、芸術に重きを置いて、小国家や商人たちと手を結んでいるので、形成できている。


 リーダーのセシリアは穏やかで控えめだが、その内に秘めた知略と芸術への情熱は高く、またそういう人物を尊敬して扱ってくれている。


 グループの雰囲気は、派閥内では派手さよりも各々の趣味に没頭することが多く。公開の場では控えめだが、裏での駆け引きや情報操作に優れている。組織でもある。


 自分たちの趣味に没頭しながらも、他人に邪魔をされないように情報を掴んでいるという感じだ。


 影響力では、政治や外交に関心のある学生たちが集まり、学園内の人脈形成に長けている商人も組み込まれているので、平民や貴族に分けずに芸術や学問の分野でも存在感が示している。


 文化系のイベントでは必ず主導的な役割を果たす。



「三つ目は魚人族の王女派閥、蒼海歌ブルーシーですね」



 リーダー:魚人族の王女・アクアリス・ネプティーナ(鯨族の人魚姫)


 特徴:海洋国家出身の魚人族の学生を中心に構成されていて、学園に用意されている水辺を支配している。海洋系商業や魔術に強みを持つ。


 王女アクアリスは音楽と水魔法の達人であり、その優雅さと親しみやすさで人気を博している。他にも船を作る技術や、船を操作する技術を所有しており、海洋国家以外の「自由」を求める学生や、音楽、魔術、漁師を志す者たちも多く加入している。


 雰囲気は、開放的で陽気な様子である。他の派閥に比べて上下関係が緩やかで、フォーマルさよりも「共感」や「調和」を重視し、多様性を受け入れる文化でもあり、派閥内では頻繁に音楽祭や交流会が開かれており、学園内でも人気が高い。


 影響力は、美しい見た目の芸能関係も多く、商業的影響力を通じて学園全体に根を張っている。人脈の幅広さからパーティーなどをする際には、様々な貴族たちが呼び寄せたいグループになっていた。



「最後は、代表のいない平民学生が集まった学生会ですね。派閥名は自由の灯火(リバティフレイム)です」



 リーダー:平民出身の学生会長、マーカス(学園都市の最上級生)


 特徴:平民の学生を中心とした派閥。貴族社会への対抗意識を持ちながらも、共存を目指す勢力。学生会が主導する派閥で、学園内の公平な運営や平民学生の権利を守るための活動が中心。貴族社会に馴染めない者や、身分差を越えた理想を追求する者が多い。


 雰囲気は、学生運動など、貴族への反発する活動が活発で、自由と開放的な集団意識は強い。派閥内ではリーダーのカリスマ性よりも「協力」と「民主性」が重視される。一方で、過激な思想を持つ者が一部におり、内部での対立も少なくない。


 影響力はそれほど高くはないが、他の派閥と違う点は、上級生が代表であり、平民学生にとって頼りになる存在というわけだ。数では他派閥を圧倒しているが、戦闘力や魔術的影響力では劣るため、他派閥との関係性が鍵となる。


「以上ですわ」


 エリザベートが、俺のために色々と調べてくれたので、拍手を送る。


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