第13話 学生ギャンブルはボートが一番

 入学してから、フラフラとしすぎて学校に行ってませんね。いや、学園都市って楽しすぎないですか? お金があればなんでもできちゃうんですよ。


 食事も、お酒も、遊びもやりたい放題です。


 この世界のしがらみを忘れて、もうあれです。ダメな大学生時代を思い出してしまうんですよね。


 学園都市全体が、学生達が訪れられることを前提に作られているので、大勢で集まれる飲み屋がたくさん有ります。魔法を使った遊び場所もあるんです。


 しかも異世界独自の遊びがたくさんあるので、私は目移りしてしまいます。


 魔力を使ったボードゲームや、最近のお気に入りは、ボートレースですね。


 室内に巨大な水槽が用意されていて、木で作られた六艇の船を、六人の魔導士たちが操作をして、魔力で浮かせて競争させるのです。


 酒場で開かれていて、お金を賭けるギャンブルなのですが、これが本当に面白い。


 人が魔力を使って行っているので、八百長は当たり前。


 選手達の中には本気でやっている者もいるので、八百長をしている者と、してない者を見極めるのが本当に面白い。


 人を見る目も養えるというわけです。人を見て賭けるというシンプルながらも奥深い面白さがあるのです。


 いや〜学生都市は遊ぶところが少ないと残念に思って来ましたが、エルドール領よりもヤバい場所ですね。


 エルトール領にはカジノがありますが、まだ行った事がありません。お金がたくさんあるので、そっちにハマるのもありかもしれませんね。


 前世では、節制するためにギャンブルはやったことがなかったのですが、これは実に面白い。


 これらは本来、魔力コントロールを訓練するためのものだったようですが、まさかこのように使われることになるとは開発者も思っていなかったでしょうね。


 学生の発想とは自由そのものです。


「いた!!」

「うん? ジュリアじゃないですか、どうしました?」


 あの助けた日から、なんだか懐かれてしまって私が街をふらついていると、声をかけてくるようになりました。


 私の名前を出して食事をとっているようで、何度か店から請求を受けました。もちろん全てお支払いしています。


 彼女の名前はジュリアで、秋田犬を思わせるモフモフな毛並みと髪質をしているので、ペットのような気分で可愛がっています。


「フライ様! あの怖いお姉さん達が探してたよ」

「おや、それはいけませんね。流石にサボって賭け事に興じているのがバレては、学校に強制連行されてしまいます」

「全く、普通に学校に行きなよ」


 一度、私がジュリアと食事をしている際に、二人に見つかったことがあり。


「フライ様! ここにおられたのですね?!」

「どうしたの?」

「なかなか家にお戻りになられないので、お顔を拝見しにきたのです!」

「はは、ちゃんと毎日帰っているよ」

「夜遅くに帰ってこられて、私たちが登校する時間に寝られているではありませんか?!」


 二人は頬を膨らませて、私の生活を叱られてしまいました。


 しかも、一緒に食事をしていたジュリアを見て。


「それになんです。この汚い子は?」

「あ〜ジュリアは、学園都市で出会った子で」

「フライ様にお側にいるなら、身なりは整えなければなりません!」


 相変わらずのエリザベートの強引さに、ジュリアは連行されて、美少女二人にお風呂に入れられた。


 そのときの洗われた経験を持っている。


 まぁ、そのおかげで現在はモフモフな秋田犬に似ていることも分かったわけだけどね。ジュリアにとってはトラウマで、二人に対してかなりビビっているようだ。


 私はボートレース賭博場を後にして、路地裏に入ってジュリアと身を隠します。


「む〜ボクは隠れる必要はないのに」

「はは、乗りかかった船だよ。それに、ジュリアも追われている身でしょ」

「むっ!」


 彼女がどうして食い逃げをしたのか? それは奴隷としてこの学園都市に連れてこられたからです。そして、彼女は奴隷商人から逃げているところなのです。


 獣人も通うこの学校で、見せしめのように獣人の奴隷を連れ歩く人族。


 私としては神経を疑いたくなりますが、奴隷制度はどこの国でも認可が降りており、平和な前世とは違うのだとつくづく思い知らされますね。


「それにそろそろあなたも自由の身になれますよ」

「えっ?」


 学園都市は中立であり、奴隷の売り買いは他の都市よりも小規模なものです。


 ですから、そこの大元締めからすれば、余所者の奴隷商人などお呼びではありません。


「まぁ数日もすればわかります。さて、ほとぼりも冷めたので、行きましょうか?」

「ほとぼり?」


 私は驚くジュリアのモフモフな頭を撫でてやり、手を繋いで大通りに出ました。すると、エリザベートとアイリーンさんに出会います。


「こんなところにおられたのですね。フライ様」

「はは、ちょっと飲みすぎて、路地裏で休んでいたんだ。ジュリアが看病してくれてね」

「そうでしたか、それよりも決着がつきました」

「そうか。エリザベート、ありがとう」

「いえ、フライ様の言われた通りでした」

「たまたまだよ。僕は適当に当たりをつけただけだからね」


 私が適当に言ったことが当たったようですね。まぁ、これでフラフラする理由も完全になくなったので、そろそろ学園に通うしかないです。


「これで、約束通りに学園に行ってくれますね?」


 アイリーンさんが大きな胸で私の左腕をホールドする。


「約束ですよ。わたくし達と学園に行くと」

 

 エリザベートに右腕をホールドされて、完全に捕まってしまった。


「ジュリア、君もおいで」

「えっ?」

「今後は、君は僕のものだ」

「フライ様のもの?」

「ああ、君の所有権は僕に移ったからね。よろしく、僕が君のご主人様だ」


 ジュリアは呆然としていたけど、まぁ何が何かわからないよね。まぁ、説明も面倒なのでしないけどね。

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