第3話


後の祭りとはこのことを言うのだろう。



言ったことを取り消すことをしたかったが、今更言ってしまったことを消すことなんてできない。



それに―――






取り消したくなんてない。






もう一人の俺が心の中で呟く。



俺は、例えぶちまける相手が誰であろうと、この事実を隠したくなんかない。



胸を張って堂々と居たいんだ。



だって恥ずかしいことなんかじゃない。後ろ指刺されるような後ろめたい関係でもない。



愛し合ってる(……と思いたい)んだ。



「はぁ」



村木は分かるように大きなため息を吐き、額に手を置く。



「私は神流部長の……一方的な感情だと思ってました。それもいつものようにほんの気まぐれかと……」



なぬ!?



一方的?それもほんの気まぐれだとぉ!



俺をどんなオトコだと思ってるんだよ!



まぁ……?最初はそうだったかもしれないけど…



「それなら娘を入り込ませることができる、と。我が娘ながら顔かたちは家内に似てまして。



なかなかの器量だと思っておりましたので、あなたもお気に召すかと」



まぁ確かに……陰険村木の娘にしちゃ勿体ないぐらいの美人だったな。



「お言葉ですが、部長……神流部長がお嬢様を気に入られても、お嬢様に気持ちが無かったら意味がないのでは?



それに何故、村木さんは部長をお嬢様に?出世がお望みじゃないのなら、どうして」



と瑠華の淡々とした質問に



「それは親として当然のことでしょう。



娘には幸せになってもらいたい。



何不自由なく。苦労を掛けたくないんですよ」



村木が間を置かず答える。気付いたら村木のグラスも空だった。ただ空虚なグラスの中を見つめて小さく吐息を吐き、お代わりを頼み、ついでに瑠華の分も注文してくれた。「神流部長、あなたは?」と村木に聞かれて「じゃ……焼酎。黒霧ロックで」と何とか答えた。


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