第31話
そんな不満に耐えかねていた頃、唯一の文通相手だった弟のトライセラからとんでもない手紙が届いた。領地ぐらしの不満を募らせた手紙を送り続けられる相手は弟しかいなかったが、こんな手紙が来た時は驚かされた。
『兄上、私が新たな王太子になったのですが仕事が多すぎて私には荷が重すぎます。今度のパーティーに招待いたしますので、その時にその場で私が婚約破棄を宣言し王太子でいられなくなるので、兄上が王太子に戻ることを宣言してください』
要約すればそういう計画の内容だった。俺は喜んで弟のトライセラの計画に乗った! これで俺は貧しい暮らしから脱することができて、王太子としてやり直せるのだ! アノマも大喜びで賛成してくれたから
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しかし、結果は狂った弟の計画に乗ったことを激しく後悔するほどの大失敗に終わった。あんな手紙を信じて行動に移した俺が、俺達が馬鹿だった!
俺がパーティーに出てきて王太子に戻ると宣言すればリリィとジェシカが現れて『不可能だ』と言われた挙げ句、トライセラの計画を白状させられて軟禁。抜け出してアノマと一緒に下の弟のトップスを利用して手柄を得ようとしたところで……またリリィとジェシカだ! 揃えた傭兵とかも全部叩きのめされてしまった!
『必殺カラミティ・ストライク!』
忌々しくも初恋の女だったジェシカ、あの女の恐ろしい剣技によって俺は人目に出れない状態にされてしまったのだ。全身傷だらけでハゲ頭の眉なし……最悪だ。
そして、気がつけば牢屋の中……今度こそ人生終わったと思ったが、裁判の結果は俺が男爵に降格処分になっただけで済んだ。死刑を覚悟していたのだが、両親の温情と弟の助命の声で軽い処分で済まされたわけだ。
……命拾いしたが、俺は死にたくなるほどの辱めを受けた。裁判所に出廷させられた時の俺は惨めな姿になっていたのだ。その姿を大勢の人目に見せることほどの屈辱はない……。大臣たちにかつての同級生たち、誰もかもが俺を嘲り蔑む。こんなことなら死刑のほうがマシ、そう思えてしまった。
◇
男爵として領地に戻った俺は屋敷の自室にこもった。精神的にも肉体的にも今の状態では当分人目に出れないからだ。幸い、アノマが気を利かせて、俺を全身包帯で覆ってくれたことで、俺がどんな状態かは領民はおろか屋敷の使用人にすら気づかれずに済んだ。これ以上恥をかきたくなかったから助かった。
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