第33話
だいたい愚痴と不平は吐けば吐くほど顔が歪んで見ていられない。
彼女を突き動かしている感情が私への嫉妬と対抗心ならばこのままつらつら喋らせるだけでその品位も美しいビジュアルも崩れて失ってしまうだろう。
以前の私なら彼女を貶めてさっさと勝鬨を上げていただろう。
でも私はそんなことで自分の価値が上がらないことは分かっているし品位が下がることも知っている。
『私の方が…』
貴女も可愛い、私も可愛い、皆可愛い、それで良いじゃない…所長が私を嗜めた時にそんな事を言っていた。
なんなら『可愛い』なんて価値観さえ持たなくたって良い、私は闘おうと構えた両手を下ろして
「体格と性格は関係無いとは思います。私はチビですけど勝ち気だし大人しくありませんし、気まで小さい訳じゃありません。背が高くたってヒラヒラの服着て良いんですよ、他者評価なんてどうだって…まぁモデルだから必要なのか……とにかく、あの、そんなに私が気になるんならカメラの前で闘いましょうよ、モデルとして、」
と和解を提案する。
『はぁ?』
「デザインに関してはすみません、雑談から咲也さんが
『な…え…』
少しの失礼とたっぷりの本音、他者を攻撃するのは良くないけれど自分に自信を持つことは悪いことじゃない。
持て余して元カレに固執するなら華々しい世界に戻ってしまった方が承認欲求も満たされることだろう。
「それとも漠然とイライラする感じですか?だとしたら周りを巻き込まないでカウンセリングとか受診をお勧めします…婦人科とか」
『ふじんか…』
咲也さんは浴衣の帯を締めて私の言葉をキョトンとして聞いていて、エミルダさんの反応が気になるのかスマートフォンの背に耳を付ける。
この動揺っぷりはやはり図星だったのか、彼女はすっかり覇気を失い静かになってしまい…咲也さんに電話を代わった。
「もしもしエミ、ライムさんは確かに小柄だからスカウトの目に引っかかったけど、きちんと自分の仕事をしてくれてるよ。小柄ってだけで重用してる訳じゃない…あと別れない」
エミルダさんの返事は聞こえなかったけれど、ちょうど内線が鳴ったので私はそちらの対応に入る。
それはホテルスタッフからのモーニングコールで、朝食を始めて良いかという確認でもあった。
咲也さんの通話がいつまで続くかは分からないから定刻通り開始してもらうよう伝えると、本当に時間通りに玄関の呼び出しベルが鳴らされてワゴンを押す女性が2名入室して来る。
半熟のオムレツ、弾力のありそうなソーセージ、種々のパン。簡易的とは言えども充分豪華なそれらは大きなダイニングテーブルに所狭しと並べられていった。
そして咲也さんを遠目に見つつ「始めてもよろしいでしょうか」と聞かれたので、
「お願いします」
と答えて彼の分のパンも適当にオーブンへ入れてもらう。
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