第8話
それから数日後にまた撮影があって、その帰りに私は古湊さんに連れられて喫茶店へと入った。
「これ、さっきの採寸メモね」
「…前より縮んでる」
「ん?身長?」
「はい…1ミリ…」
「そんなの誤差だよ。気にしない気にしない…」
彼はそう励ましてアイスコーヒーにポーションを垂らす。
きっと古湊さんは体格のせいで苦渋を舐めた回数は女の私より多いんじゃないかな、勝手ながらそんな想像をした。
「SNSの方も評判良いんだよ、ほら」
「わぁ…」
彼が見せてくれたタブレットには写真投稿アプリの画面、親指姫モチーフのあの写真やブランド名・洋服名のハッシュタグが並ぶ。
「この画像を見てURLをタップしてブランドサイトに飛んでくれる、立派なPRになってる…サイトの方も閲覧数はぐんぐん上がってるよ」
「へぇ…」
「…あんまり嬉しくない?」
「いえ、その…嬉しい、です…」
「良かった」
成果が見えるとモチベーションも上がる。これは本業の方でも言われたことだけど、達成感があればやはり次へのやる気に繋がるし役に立てているという実感があり励みになる。
もうひとつのSNSも見せてもらったがそちらも反応は上々、しかしスクロールで写真を見ていると私はあることに気付いた。
「……これ…は、私じゃないですね?」
顔が写ってない首から下の全身写真、私が着た服だけどそのサイズ感というかモデルの体格は明らかに私ではない。
「うん、いつもたくさん同じ服が掛かってるでしょ?いろんな体型のモデルさんに着てもらってる。長身だったり小柄だったり、ぽっちゃり、あと標準体型」
「標準…」
私って規格外なんだ、そう突き付けられた気がして画面から指を離し…タブレットをテーブルへ置いた。
「…なるべくたくさんの人に着てもらう商品だから、サイズ違いのサンプルとしてライムさん以外にも撮ってるよ。160センチ、170センチの人にも…なに、気になることがある?」
「いえ…やっぱ、150無いとか…需要少ないですよね」
「万人向けではないね、数値だと少数派だよ、成人女性なら……あ、ごめん、気に障ったなら謝るよ」
「…いえ」
ちょっと認められて良い気になってたのか。
あんまり悲劇のヒロイン面することは無いのだけれど私と同じデザインのワンピースからすらりと長い脚が伸びているのを見ると小さな親指姫が急に惨めったらしく感じてしょうがない。
「メインモデルはライムさん、イメージそのまんまだから……ライムさん、身長はコンプレックス?」
「…少し、」
「そう…だよねぇ、いや僕もさ、155センチしか無いんだ。大丈夫だよ、女の子の低身長は可愛いからさ」
「わざとらしく卑下しないで下さい」
「…うん…」
アイスコーヒーをぐびぐび飲んで息をついて、古湊さんは
「ま、どうにもならないことは世の中いっぱいあるからね、僕も長身に生まれてたら人に舐められずに済んだだろうって悔しい気持ちは何度も感じてる」
と口の端を手の甲で拭う。
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